お店にやってきたルーク達(1)
僕は丁度その時、接客のバイトをしていた。少し前まで魔法具づくりに励んでいたのだが、少し疲れたので接客業をすることにしたのだ。いくつか完成させたために僕は大変機嫌がよかった。
昨日試作品を僕が試した《マジックアンチルーム》ももう少し改良を重ねた後に売りだされる予定であるらしい。そこらへんはギルがずっと色々試行錯誤してやっていてくれている。朝から「ギルは頑張り屋さんなんだよ」と惚けたようにナタリーが惚気だしたのには思わず苦笑したけど。
折角の夏休みだ。時間を無駄になんてしたくもないし、思いっきりお金を稼ぐと僕は思っているから、あまり休まないようにしている。
接客は一人で十分なため、他の面々は魔法具作りや試作品を試していたりと色々やっている。今日は副店長の一人であるアイザックさんも出勤している。試作品を試すのは募集して集めたバイトにやらせているようである。
店内の魔法具をずらりっと見渡すだけでなんとも言えない興奮を僕は感じてしまう。
僕は魔法具が好きだ。魔法と付くもの全体が大好きだから、沢山の魔法具を見ているだけで僕は楽しくて仕方がない。
お客さんが来ていない間は、僕はずっと魔法具についてのカタログをパラパラと捲っていた。
夏休み中にたまったお金で、学園に帰る前に色々と買う予定なのだ。何を買うかを事前で決めて置こうと思ったのだ。
これは『夏の魔法具特集』と書かれているカタログだ。リアーナさんがもっていて貸してもらったのだ。大手の魔法具店の魔法具ものっているし、このお店の新作も小さくのっている。流石に大手に比べてカタログのスペースも少なくなるのだ。
そうしてカタログをパラパラとめくりながら時折くる客の接客をしている中で、
「ユウ!」
聞きなれた声と共に、お店の扉が開かれた。
視線を入口の方へと向ければ、ルークに加え、学園ハーレム、そして地元ハーレムまでつれだっていた。
学園ハーレムが4人。地元ハーレムが4人。ルークを含め計9人も一斉に入ってこられて、そこまで広いとは言えない『スペルドリーム』の店内は少し狭いように感じられた。
「……ルーク」
何で8人も連れてきてるんだと思って頭を抱えたくなってくる。思わずため息が漏れたのは仕方ないことだと思う。
まあ、学園ハーレムはきっとルークが何て言おうと無理いってついて来ようとするんだろうけど。それにしても地元ハーレムの4人は久しぶりに見るけど相変わらずルークにべったりらしい。
学園ハーレムと火花を散らしている子もいるし、女って怖いと思う。そしてルークは後ろで睨みあってるのに気付け。
「接客してるんだな!」
「…ああ。来たなら何か買ってけよ。買わないならさっさと出て行けよな? 営業妨害になるから」
笑顔で話しかけて来たルークに、僕はそう言いながらもルークの連れてきた8人の事を見る。
メキシムは地元ハーレムの一人―――花屋のカトリーナと火花を散らしている。
ちなみにカトリーナは黒髪に、黄色の瞳を持つ美人って言うより可愛いって言える子だ。馬車の中でカトリーナの名前が出たこともあって、特に警戒しているようである。
アイワードはつり目をこちらに向けて睨みつけている。きっと『ルークが折角きてさしあげてるのにそんな言い草をするなんて――!!』とでも思ってるんだろう。
アフライ先生はルークにべったりとくっつこうとして地元ハーレムの一人――この国で大きな勢力のなっているランドレア商会の娘であるユキノに引き離されている。
ユキノは気の強い女の子で、ルークの事は何だろう完璧なのに抜けてる所が可愛いなどといって駄目な所も好きだと思っているような赤茶の髪の女だ。
それにしてもアフライ先生は教師って自覚あるのだろうか、本当に。学園内ではセト先輩が色々いったおかげでそこまで酷くなくなったが学外では別なものらしい。
マー先輩は他の地元ハーレム二人―――ミサ姉とシル姉と一緒に仲良く会話を交わしている。ああ、ちなみに実の姉ではないけど、仲良くしてもらっていて、僕にとって姉みたいな人達だ。昔はルークも二人も僕と同じように呼んでいたけれども、二人が名前呼びを強制してからはルークは呼び捨てにしている。ちなみに二人は貴族だ。ミサ姉は金髪で、シル姉は茶髪。どちらも綺麗な人だ。
マー先輩はともかく、他はめんどくさい。学園ハーレムって地元の見知った人達より断然めんどくさい。8人+ルークの相手を一人でしなきゃいけないのが本当に、何ともいい難い気持ちになる。地元ハーレムだけなら昔馴染みだからいいけどさ。普通に仲良くしてるし。
でも学園ハーレムが居られると、地元ハーレムも敵対心むき出しにして色々とありそう。地元ハーレムは何だろう。抜け駆け禁止で、アピールは自由で、誰が付き合っても文句を言わないって協定結んでるし、卑怯な手に行く奴らは協定結んでる連中に潰されてたし、既成事実を無理やり結ぶ子とかいないからいいんだけどさ。ああ、潰すっていっても戦意を無くさせるために色々やったらしい。怖いから何をやったか聞いた事は一切ないけど。
ルークに性的な意味で襲いかかりそうな危険人物はアル様達や地元ハーレムが対処してたしね。うーん、自分でこういうの対処出来ないからルークってちょっと駄目なんだろうなって思うけど、自分でやれって放りだしたらだしたで、きっと勝手に既成事実でも作られて騙されたりしそうだから結局周りが対処してしまうんだよなぁ…。
「え、じゃあ見ていく」
「……はやめに買い物終わらせてくれよ」
買わないなら出ていけといった言葉に、ルークがそういったから僕は諦めたようにそういった。早く買い物を終わらせて、さっさと帰ってくれないかなとか思いながらも僕は接客員として対応するのであった。