《マジックアンチルーム》を試してみよう。
バイトをはじめて数日が経ち、ギルが《マジックアンチルーム》の試作品が出来たといったのでそれをためしに使用してみることになった。
どういう効果が出るかとか、きっちり効果が出てるかとか試すのもバイトの一貫だし、前に使った事がある僕が試す事で前と比べて魔力の減り方はどうかとかも確認してほしいとギルにいわれたのだ。
試作品を試すためにやってきたのは、僕が剣などの練習で使わせてもらっている場所だ。広々とした空間に僕とギルとナタリーは足を踏み入れる。
まずは《マジックアンチルーム》のリングを八方向に散らばめる。ルーク戦の時はクナイに付けて散らばめたが今回は別に大戦中でもないし、地面に直に置いた。
そんな風に動いている僕をナタリーとギルは端の方で仲良く座りこんで見ていた。
「発動せよ―――《マジックアンチルーム》」
地面に手をついて、それを発動させる。
言葉と共に魔力が広がっていき、リングに僕の魔力が伝染する。そして、ルーク戦の時同様、光り輝きながら、その魔法が使えない八角形の空間が出来た。
でもやはりというべきか、魔力消費量は大きい。やっぱり数人で行使する形にした方が断然いいだろと思われる。
どのくらいの魔力量を使うかしらべるために倒れるギリギリまで解除しないようにして、しばらく《マジックアンチルーム》の中で立ちつくす。
しばらく経ち限界がやってきて僕はふぅと息を吐いて、一気に、それを解除する。
どっと疲れが喪失感が僕を襲ってきて、思わず立ちくらみをするのをナタリーが慌てて近寄ってきて支えてくれる。
「ユウ、大丈夫?」
「…うん。とりあえず、これやっぱ一人で使うの無理があるよ」
ナタリーに支えられた体をどうにか起こしながら僕は答える。
それにしてもやっぱり魔力消費量が多すぎると、頭がクラクラしてくる。
魔法具を試す作業では、失敗する場合も考えなければならないし、時々危険な目に合う。滅多にないことだが、大手の魔法具店で試作品の魔法具が暴走して死傷者が出たって話もあるぐらいだ。炎とかそういうのを発現させる魔法具だと術式が間違っていたら大変な事になる。
だから試作品は試す必要があるのだ。きちんと、発動するかどうか。
「そうねぇ、何人ぐらいで使うべきだと思う?」
ナタリーがそういって、僕を見た。
「…3~5人ぐらい? それでもきつい人はきついと思うけど。一人で使うなら魔力量が僕の何倍も持っているってぐらいじゃなきゃ倒れるよ」
ルークなら倒れないだろうと思うと何だか悔しくなってくる。生まれながらに僕の何倍もの魔力を所持しているだなんて、羨ましいしずるいと思う。僕ももっと魔力量があったらって、何度も思ったことがある。
そんな風に思った所で、どうしようもないから僕はただ「才能がないから負けた」なんて言いたくにから強くなろうといつも思う。
ナタリーとギルは僕の言葉にそうかとただ返事を返す。
「はー。魔力どっと持っていかれて頭クラクラする」
「魔力回復薬飲む?」
「いや、もったいないから寝るかして回復させる」
ナタリーの言葉に、僕はそんな風に答えて寝泊まりしている部屋へと向かう事にした。
だって魔力回復薬は買うのも作るのも大変なのだ。それをこんなことで使うのはもったいないと思ったのだ。
そうしてその後はしばらく休んで、魔力が大分回復してから僕は接客や魔法具づくりなど色々とバイトをし始めるのであった。
ルークがハーレム達を連れてやってきたのは、その次の日の事だった。