久しぶりにお話をしよう。
今、僕は魔法具専門店のすぐ隣にある、二階建てのリアーナさんの家で、紅茶を飲んでいる。
リアーナさんが話ましょうといったから、ギルが継いだ紅茶を飲みながら三人で雑談を交わしているのだった。ナタリーも来たがったが、生憎今は接客の人はナタリー以外居ないらしく、渋々諦めてた。”夜にでも話しましょう、ユウ!”なんていってたから、後でマシンガントークでも聞かされそうな気がする。
「そういえば、ユウ。《マジックアンチルーム》の試作品はどうだった?」
「効能はきっちり出てるけど、魔力を食いすぎてるから一般的な魔力の人じゃこれ使って戦うって難しいよ。数人で発動するならもっと効率よく使えそうだけど。実際僕も大会で使ってみたけど、終わった後魔力が足らなくて倒れちゃったし」
《マジックアンチルーム》を一緒に作った見習い二人というのが、ナタリーとギルなのだ。効能もきっちり現れていたし、売りだすために新しく作る予定らしいので、とりあえずギルの問いかけに感想を述べる。
実際、あの魔法具は使用者の魔力を持っていかれる。長期戦だったら、あんな魔法具一人では使えない。時間制限があるようなものとかだったらまだ使えるだろうけど。
「あー、やっぱり効果がある分魔力持っていかれるか。つか、倒れたって大丈夫か?」
「うん、平気。そうそう、聞いて。リアーナさん、ギル! 魔法具とか使ってルークに勝てたんだよ! それで《マジックアンチルーム》使ったんだけどさ」
倒れた、という言葉に、心配そうな表情を浮かべるギルに、僕は笑顔でルークに勝てたことを報告する。
「お、アイツに勝てたのか。よくやった」
「へぇ、勝てたんだ? よかったわね」
ギルとリアーナさんは、そういって笑う。
「使ったのは、《変質の瓶》に、《マジックアンチルーム》に、《巻き巻きクン》に、あのブラックワームの異臭の奴に、ハンマーに磁石の術式刻み込んだ奴に、魔法陣刻んだ奴なんだけど。勝てたのは嬉しいけど、ルーク戦で結構使っちゃってさ。しかも珍しく成功した魔力回復薬まで使っちゃったんだよね」
勝つためとはいえ、魔力回復薬を使ったのはちょっともったいなかったからなぁ…。材料が手に入れにくい上に、あまり成功しないものだし…。勝てたのは嬉しいけど、消費しちゃったから、補充しなきゃだしなぁ。
「《巻き巻きクン》ってミリオネ・オーシャンの所の魔法具か。ユウ持ってたんだ」
「学園に入る前に奮発して買ったんだよ。何か興味惹かれちゃって。魔法使えなくした後に、《巻き巻きクン》でルークの行動ふさいだんだ。結構便利だよね、アレ。使い勝手いっぱいあるし」
「ま、ミリオネ・オーシャンのお店の魔法具は便利だからなぁ…。つか、ブラックワーム使ったって、じゃあアイツあの強烈なにおい嗅いだのか、いい気味だ」
「ギルって本当、ルーク嫌いだよね…」
「ああ。だってナタリーの奴、アイツが美形だからって見たらしばらく今でもぽーっとしてるんだぞ?」
ああ、ナタリーって恋人はギルだけど、美形見るとぽーっとしちゃうもんね。恋愛感情は一切ないらしいけど、ルークの笑顔って結構女がぽーっとなるものだし。僕には昔から見なれているし、その感覚全然わからないけれど。
「そういえば、ユウ。ルークも一緒に帰ってきたのかしら」
「ああ、そうだよ、リアーナさん。僕はここで泊りこみでバイトするからって降ろしてもらったんだ」
「相変わらずのモテっぷりなの?」
そういって、面白そうに笑って、紅茶の入ったカップに口をつけているリアーナさんは愉快犯である。面白い事が大好きな性格をしていて、ルークとその取り巻きを見ているのが何だか楽しいらしいのだ。
「相変わらず女侍らしてます。というか、今回の帰省にも女が4人もついて来てますしね」
「うわ、相変わらずむかつくモテっぷり。まぁ、俺はナタリーが居ればいいけど」
「四人もって、それは何て言うか、相変わらずね」
ギルは彼女が居ようと女の子にモテるルークが何だか気に食わないらしい。まぁ、ギルは美形って感じじゃないしね。ルークは顔立ちとか整ってるし、自分の大好きなナタリーがルークに惚れてたのももちろんの事だろうけど。
リアーナさんは何だか楽しそうに笑って、僕に詳細を促す。
「ハーレムの二人はクラスメイトで、アイワードとメキシムって家名の奴で、何だかルークに夢中。あとは、担任の女教師。この三人は何だか色々めんどくさくて、もう一人は先輩でいい人だよ」
「教師までいんのか。てか、いいのか、それ。教師と生徒の禁断の恋みたいな…」
「いやー、あの先生、所構わずルークにひっついてて権力乱用してくるからわけわかんないんだよね」
「…てか、何歳だ? 大人が年下に盛ってんの?」
「さぁ? というか、ルークが此処に見に来るっていってたから、そのうち来ると思うよ、全員連れて」
って、言ったらギルは顔をしかめた。ナタリーとルークを会わせたくないんだろう、多分。
ちなみにナタリーは、ギルが嫉妬してるのが嬉しいからルークに必要以上に話しかけたりしてるけど。うん、ナタリーとギルってラブラブだよな…。
「ほぉ、あたしの店に来るのか」
「うん。そうだよ。リアーナさん。邪魔だったら追い出していいよ。先にいってあるし」
「面白そうだからとりあえず、来るのはいいけど、邪魔なら本気で追い出す」
そういって、リアーナさんはニヤリッと笑った。
その後はしばらく僕とギルとリアーナさんで会話を交わすのだった。