ルークは何をしていたかというと。
決勝戦を見終わった僕は、一人で寮の中を歩いていた。
セルフィードはお友達の所に行くとかいって去っていってしまい、ルネアスの部屋は二階で、さっさと既に別れてしまっている。
それにしても決勝戦は見ごたえがあったなぁと何だか未だに興奮している。大会も終わったことだし、もう少ししたら夏休みが突入する。
夏休みの間は魔法具を仕入れにいかなきゃいけないからどうしようかなと少し考えながら歩く。
そうしている中で、
「あ、ユウ」
寮の廊下を歩いていたら前からルーク、アイワード、メキシム、アフライ先生が歩いてきていた。
アフライ先生は、セト先輩に怒られてから少しルークのそばに寄ってきてなかったように感じられていたけど、結局ハーレムメンバーなのか…なんてただ思う。
それにしても、決勝戦も見ずに、ルークは何をしていたんだろうか。
「もう、決勝戦終わったのか!?」
「うん、さっき終わったけど」
「……見たかったのになぁ」
「だったらさっさと開始時間に来ればよかったじゃん」
見たかったなら開始時間にきっちりくればよかったものを、何て思って呆れながらがっくりと肩を落としているルークを見る。
「ルークはわたくしたちと夏休みの予定について話してたんですわ!」
「そうよ、つい盛り上がっちゃっただけじゃない」
何だかアイワードとメキシムがそんな事を言っているのを聞いて、こいつ断れなかったのかとただ思う。
僕に負けてから悔しがってたみたいだし、これから剣術とかにも力をいれるんじゃないかなーと思ってはいたのだが、断るのは何だかなかなかできないらしい。
でもまぁ、新たなハーレム陣を作るというイベントでも起こしてなくてよかったとは思う。だってまたアイワード達みたいな奴が増えたらうんざりするし。
そういえば、セルフィードってルークへの恋愛感情すっかり無くしたっていってたけど、ルークからこれからはなれるのだろうか。セルフィードが離れていくことにルークはきっと寂しいとは思うかもしれない。でもまぁ、ルークは寂しいと思うだけだろうけれども。そもそもこいつは仲良い連中はよく作るけれど基本的に周りから寄ってくる人が多いのだ。あんまり自分から求めないというか、執着しないというか…。
基本的に受け身なのだ。対人関係が。だから、多分セルフィードの事も悲しいだの寂しいだのは思うかもしれないが、別にセルフィードが悲しそうな顔とかしてたりしなければなんだかんだで気にしないで、友達として接して当たり障りない関係を築いていく気がする。悲しそうな顔とかセルフィードがしてたらそれを取り払うために何か行動起こしそうだけど。
「あ、そういえばユウは夏休みどうするんだ?」
「『魔法研究部』は自由に夏休みは登校して研究してもいいらしいし、夏休み30日の間に何回かは来る予定だけど…、あとはリアーナさん所でバイトしようかなとは思ってるけど」
夏休みは半月と少しの30日間だ。その間の『魔法研究部』の活動は自由らしいので、僕はバイトに励む予定なのだ。
リアーナさんとは知り合いの魔法具職人で、魔法具専門店を開いているアル様の知り合いで、僕に魔法具の術式の事を教えてくれた人だ。《マジックアンチルーム》もそこの試作品なのだ。魔法具職人はそんなに数が多いわけでもない。というか、作るのに時間がかなりかかる面倒な作業であるし、細かい作業が好きとかそういう感情がなければ作る技術があっても、途中で集中力が途切れたりしてあんまりよいものが作れないのだ。それで半人前だけど一応魔法具を作成できる僕は、リアーナさんの所で時々バイトをしている。
バイトをすればお金ももらえるし、魔法具の作り方についてももっと学ぶことが出来る。だから僕はリアーナさんの所で働くのが好きだ。ちなみにまだバイトに入っていいかは連絡はいれてないけれど、前に会った時、いつでも歓迎すると言われてたので多分問題はないと思われる。
「え、バイトするのか?」
「うん。魔法具調達しなきゃだし」
最後にリアーナさんの店にいったのは、9の月。要するに、入学する前。今は2の月の後半だから、結構経っているのだ。新作の魔法具でもおいてあるかもしれない。父さんからの仕送りも、節約しまくって少しずつためているわけだし、掘り出しものを見つけたいと思っている。
「リアーナさん所っていったら家から近いよな」
「そうだね」
「じゃあ遊びに行く! どうせ泊りこみでバイトだろ?」
何だかルークは嬉しそうにそんな言葉をいい放つ。爽やかな笑顔である。アイワード達が何だか見惚れている。それは別にいいのだが、さっき計画してるっていってたけど実家に呼ぶのか、ハーレムを。いや、別にいいけどさ。教師が生徒の私生活にそんなに入りこんでいいのか激しく謎だ。まぁ、ルークはこいつらを友達としか思ってないんだろうけど。
「……邪魔しないでリアーナさんに迷惑をかけないならな」
そういってちらりとアイワード達を見てしまったのは仕方ない事だと思う。だって、『魔法研究部』の活動さえ、こいつら邪魔になってるわけだし、魔法具制作中にこのように騒ぐとかしてたら僕切れる自信ある。魔法具の研究もそうだけど、魔法具作成って滅茶苦茶集中力居るわけだし。
「ああ、邪魔なんてしない」
「ルーク、そいつらも来るなら、本気で邪魔させないでくれよ」
「ああ」
「…邪魔したら追い出すからな」
一応、そういっておいた。とはいっても僕が追い出す前にリアーナさんに追い出されると思うけど。リアーナさん、魔法具作ってる最中に騒がれるの大嫌いだし。
夏休みは、3の月のはじめから始まる。
―――新しい魔法具があるかなと僕は楽しみで仕方がない。
ちなみに、ちょうど春から数えます。
入学した時が、1の月になるわけです。