魔法の授業(1)
もうひとつの小説、一話が長いので、少し公開に時間かかります。
今から行われるのは魔法の授業だ。
教師が女じゃないだけ、幸いだと僕は思う。何故だか知らないけど、教師の中にもルークを気にしている女教師はちらほら居るのだ。
「ユウ! 何で先に行くんだよ!」
ルーク達ハーレム陣を置いて、さっさと魔法の授業が行われる演習場の中へと入れば、後ろからそんな声が響いた。
後ろを振り向けば、案の定、ハーレム陣達が僕を睨みつけていた。ルークはハーレム陣が居るせいもあって、男友達も居ないし、親友なのは多分僕だけだから、それで睨みつけてるんだろうけど、本当、面倒の一言に尽きる。
「ルークさんっ、ユウ君なんて放っておきましょうよ。私たちが居るじゃないですか」
メキシムはそんな事を言いながら、ルークの腕に絡みついている。
うわ、メキシム今、僕の事なんかって、言ったよね。なんかって。何て言うか、扱いのひどさに驚き通り越してあきれるよ。
ルークはメキシムの言葉に困ったように、言葉を零す。
「俺、ユウも一緒がいい……」
そんなルークの言葉が響くと同時に、メキシム、セルフィード、アイワードの三人は僕をきつく睨みつけた。アフライ先生が居ないだけましかもしれない。先生は横暴な所があるから、僕がルークと仲良いって理由だけで単位やらないとか言い出しそうだし。
僕はふぅ、とため息を吐いて、ハーレム陣の態度は無視して、ルークに話しかけた。
「まぁ、先にいった事は謝るけど、僕が面倒な事嫌いなの知ってるだろ?」
面倒の部分でちらりと、ルークに惚れてる三人を見れば、三人とも今にも噛みつきそうな何だか恐ろしい形相をして、僕を睨んでいた。ルークの前では可愛い女の子を演じるくせに、ルークが視線を彼女達に向けていないからって、何だか色々凄まじいと思う、僕である。
「……うん、知ってる」
「なら、そういう面倒をどうにかしてほしいんだが」
「どうにか、って言っても……。俺何で皆がユウにひどい態度するのか、わからないし…」
……ルーク。あからさまな恋愛感情に何でお前はとことん気付かないんだ。ハーレム陣達は好きではないが、あんだけアピールしてて気付かれないのは、正直同情する。ルークが鈍感なのは、今に始まった事ではないけれども。
何だか色々と理解していないルークに相変わらずだなと本当に呆れてしまう。
「はぁ…、まぁいいや。ルークはとことん気付かないからな…」
半ば僕は諦めている気がする。幼少の頃からルークと一緒に育ってきて、ルークと一緒に居たからルークの性格は熟知している。ルークの鈍感ぶりは変わらないし、よく考えれば昔から変わらない状況だ。
ただたんに学園でのハーレム陣がいつものハーレム達より少し面倒だというだけだ。
まぁ、いい。ハーレム陣は僕を気に食わないだろうから、何かしてくるかもしれないが、その時はいつも通りに対応するとしよう。
そんな事を考えていたら、
「全員そろってるか? 授業を始める」
魔法の担当の教師が演習場に入ってきた。その教師の名はジルアス・ルネセンド。銀髪の髪が特徴的な、30代半ばぐらいの教師である。
入学してきて、そんなに時間はたってないが、魔法の授業の態度を見る限り、ジルアス先生は結構な実力者だと思う。実力者から魔法などを習えるのは嬉しいから、その事はこの学園に入ってよかったと思う。
「ルークさんっ、今日私がうまく魔法使えたら頭なでてくれますかぁ?」
「ルーク…、がんばりましょうね」
「あなたたち、わたくしのルークに近づきすぎですわ!」
教師が入ってきたというのに、何だかルークを囲んで騒ぎだすのは、メキシム達三人である。教師が入ってきたというのに騒いでいるものだから、周りに注目されてるじゃないか。
というか、授業が始まったんだから静かにすればいいのに。本当、悪影響というか…。アイワードとルークが大貴族の子供だからって、教師たちの中にはきつく注意できない人間もいるみたいだし。
それで下手に注意しない人間が多いもんだから、ハーレム陣は調子に乗って騒いでるんだろうな、と思う。
「そこ、静かにしろ」
ジルアス先生はその点、いい教師である。ハーレム陣達に向かって容赦しないのだ。何だかハーレム陣達が注意されると、すっきりした気分になってしまうのは、きっと日頃からハーレム陣に迷惑をかけられているからだろう。
「なっ、わたくしを誰だと思ってるのですの!」
アイワードが、そのつりあがったつり目を普段以上につり上げて、ジルアス先生を見た。
本当、偉そう。というより、威張ってるよね、本当。偉いのはアイワードじゃなくて、アイワードの両親だろ、とつっこみたいのは僕だけだろうか。
「アイワード。お前が誰だろうと関係ない。此処に居る以上お前は生徒だ。そして俺は教師だ。教師のいう事をちゃんと聞け」
「なっ…。一介の教師如きがこのわたくしに――――」
「ルミ! やめろ」
「…ルークが止めるならやめますわ」
ジルアス先生と口論しようとしてたくせに、ルークが止めればすぐやめるという単純ぶり。
本当にアイワードって優秀なのだろうか。ルークを見てぽーっとして、顔を赤らめている姿は正直たるんでるとしか思えない。
ジルアス先生はそんなアイワードを見て、ため息をついたかと思うと、言った。
「じゃあ、授業を始めるぞ。
それぞれ魔法の練習を始めてくれ。それでわからない所は俺に聞け」
そうして、魔法の授業は始まった。