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目を覚ますと(2)

 「リルード、もう大丈夫なのか?」

 「ユウ君お疲れー、凄かったね」

 セト先輩とマー先輩は、僕の方へと近づいてきて、そんな言葉をかけてくる。

 マー先輩の言葉にやっぱりマー先輩はいい人だとそう思った。学園に入学する前のルークのハーレムの中にも良心的な人は居た。やっぱり、この学園のハーレムが少しアレなのだろう。

 「はい、まだ少しだるいですけど、大丈夫です」

 「それはよかった」

 セト先輩がそういって笑う。

 「次、セト先輩とだったらしいですね、戦ってみたかったです」

 「そうか。我も貴君と戦いたいとは思った」

 「そうそう、ユウ君。イリアちゃん、五回戦も勝ったんだよ。だから次決勝なんだよ」

 僕との後の五回戦も勝利していたらしい。流石生徒会長である。次は決勝戦。それに勝てばセト先輩は学園最強の称号を手にすることとなる。

 「ルークさんが優勝するはずでしたのに!!」

 「リルードが、道具なんて使わなきゃわたくしのルークが勝っていたはずですのに。リルードが卑怯な手を使うからですわ!」

 ”決勝”という言葉に反応して、そんな言葉を言い放つメキシムとアイワード。ルークが優勝するって言い張ってるけど、ルークより強い人だってこの学園には居ると思う。いや、少なくともルークより努力している人はかなり居ると思う。

 「ふ、二人とも落ち着いて! ユウは卑怯なんかじゃないから……」

 ルークはメキシムとアイワードの言葉に、そういって困った顔をする。

 「ふむ、メキシムにアイワードよ、リルードが卑怯というわけではないである。この大会においては道具の持ちこみは可能であった。ヴェーセトンも魔法具である剣を持ちこんであったであろう? リルードの持ちこんだ魔法具に武器ではないものや、工夫が施されている様々なものがあったというだけの事。我も武器として魔法具を持ちこんでおる。他のものであっても、魔法具を使っているものはおる」

 「そうだよねー。この大会何でもありだもんねぇ。それにしてもユウ君あれだけの魔法具どうしたのぉ? あんなに持ってるなんて凄いねぇ」

 セト先輩が諌めるようにメキシムとアイワードに鋭い目を向け、マー先輩が僕に向かってニコニコと笑う。

 平民はともかく、貴族に関していえば魔法具は持ちこもうと思えば持ちこめるものだ。ルークもそれは同様だ。でも魔法具を使うためには魔法具の性能を計算して使わなければいけないものである。あと、使ってかどのくらい時間が経過して魔法具が発動されるかとかも。そういうのを計算しておかなければ魔法具というのは少し使うのが難しい。

 僕は魔法とつくものが大好きだからこそ、いっぱい覚えているけれど。というより、魔法具の本とかを昔から読むのが好きだった。

 「自分で作ったのと、かったのとです」

 「へぇ、ユウ君って魔法具作れるんだぁ。でもあんなに手に入れるの大変でしょう?」

 「そうですねぇ…。バイトしまくって手に入れたり、試作品を譲ってもらったり、長い時間かけて術式を刻んだりですから、今回のルーク戦で結構消費しちゃって困ってます」

 あと、もう少しすれば夏休みに突入するわけだし、夏休みは魔法具を手に入れるためにバイトとか、色々しなければ…。色々使ってしまったから、《亜空間》の中の魔法具も減っているわけだし。休みの日にでも買い物にも行きたいし。

 「そっかぁ…。そういえば、あの魔法使えなくする魔法具凄かったね! あんな魔法具あるって知らなかったなぁ。あれ、どうしたの?」

 「試作品です。知り合いの魔法具店で売られる予定の。作るの手伝ったから試作品もらったんですよ。でもアレは長期戦には向きませんからね。僕は魔力がそれで足らなかったわけですし」

 本当、魔力がもっと欲しい。魔力は成長に伴って増えていくものだ。それ以外にも体力と一緒に増えていったりとかもするわけだが、魔力は中々増えないものである。少しずつ、少しずつ、魔力は増えていく。

 ルークの場合、子供の時点で大人並の魔力量を持っていたわけで、現在の魔力量は測り知れない。

 「でも、ルークさんが優勝するはずでしたのに!!」

 「メキシム、貴君はこの学園を甘く見すぎである。確かにヴェーセトンは一学年首席であり、膨大な魔力量と才能を持っている。しかしだ、ヴェーセトンはそれだけである。リルードとの戦いを観戦させてもらったが、ヴェーセトンは過信しすぎである。ヴェーセトンの実力があるならば、リルードが魔法具を発動する前にどうにかできたと我は思う。発動させないように動くことも可能だったはずだ。それに加えて、魔法具を発動させてしまった後の行動が悪い。警戒心を怠っていては、魔法具使いには勝てないであろう? リルードのように魔法具を使った戦い方をするものは、傭兵などでもおる。大会だからいいであろうが、戦であったならばヴェーセトンは死んでいたであろう」

 セト先輩はそう告げて、目を細める。

 そう、僕のように魔法具を使って戦うものだって、居る。魔法具は高価であるが、作れるものだっているし、安く仕入れて使っているものもいる。魔法具は便利なものだ。ひとつの魔法具で、戦況が変わってしまったりする。だからこそ、魔法具使いと戦うときは気をつけなければいけない。そういう相手と戦うときは魔法具を発動させないようにすることが第一だ。もしそれが無理なら発動した後に警戒を怠らないことがいい。

 その魔法具がどういう効能を持っていて、どういう風に発動しているのか。その情報があるだけでも、大分違うものである。魔法具を使われたら状況を冷静に分析するべきなのだ。

 でも、ルークはそんな事をしていなかった。それが、ルークの過信であり、油断だ。

 「でも大会で使うなんて――」

 「アイワード、この学園の卒業生はギルドや軍に行くものも多い。我も、卒業したらそっち方面に行く予定である。貴君らが、そういう場に行く予定がないならいいが、もし戦場に立ちたいという思いがあるというならば、油断は禁物である」

 そういえば、セト先輩の家は、結構戦場で活躍している人も出している家だ。元々何代か前の先祖が戦争で活躍して貴族の地位をもらった家なのだ。戦いもそうだが、政治関係でも色々活躍してなりあがっていった家――、それがセト先輩の家である。

 「でも――」

 「終わった事を愚痴愚痴いっても仕方がないという事が貴君たちには理解できないのであろうか? とりあえず、リルードはお疲れなのだ。魔力切れで倒れたのであるから、体がだるいはずである。騒ぎ立てない方がいいかと思われる。アイワードとメキシムは此処から去ったほうがいいかと我は思う」

 「な――、でも、ルークさんがいるなら――」

 「そうよ! ルークがいるのに――」

 「ふむ、ヴェーセトンがいるから此処に居ると言うならばヴェーセトンも帰るがよい。煩いのが二人もいては、リルードが休めないだろう?」

 「え、でも――」

 「リルードに嫌がらせをしたいならともかく、速く元気になってほしいというならヴェーセトンは去るべきである」

 文句を言おうとしたアイワードとメキシムを言いくるめ、何かを言いかけたルークにばっさりと言い放つセト先輩。

 本当、セト先輩ってはっきりしている人だよなぁと思う。

 「うん、セト先輩の言う通り、ルークも帰っていいよ。僕、もう少し休んでから寮に戻るから」

 「……わかった」

 僕の言葉に、ルークは頷く。

 そして、アイワードとメキシムと共にそのまま出ていったのだった。



 その後は、セト先輩とマー先輩としばらく話して、セト先輩達が帰った後、少し休んでから寮に帰った。

 明日はセト先輩の決勝戦だ。見るのが楽しみだ。




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