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ルーク戦(4)

 武器を奪い取り、魔法も使えなくしてあるとはいっても、まだ油断はできない。

 ルークが天才なのは僕が一番知っている。あと運が結構いいのも知ってるし、何か起こるかもしれないと注意しておくべきだろう。

 ルークは魔法が使えない事と、武器を奪われた事に茫然としていたが、僕がルークに向かって、長剣を片手に向かっているのを見ると、瞬時に身構えた。

 ルークは、僕の攻撃を冷静に見極めて避けていく。

 やはり、ルークの能力は凄いと実感する。身体能力の魔法具を使っている僕に劣らない、そんな動きをするルークに思う。

 短期戦で終わらせなきゃ、こっちがくたばってしまう。

 ルークは、僕の攻撃をよけながら、僕の横を駆け抜け、クナイへと走り出す。クナイの周りには空間を展開すると同時に展開された結界のようなものがあるが、ルークなら時間さえあれば解除できるものである。

 それを思って、僕は《亜空間》に手をいれる。

 《亜空間》から取り出したのは、小さな黒い玉状の物体。それを、クナイへと走るルークに向かって投げつける。もちろん、ルークはそれを避ける。軽いステップで避けたルークはまた走り出す。が、その物体は舞台にぶつかると同時に黒い煙を発生させた。

 もくもくと充満する煙を吸い込まないように、僕自身はガスマスクを装備する。

 さてと、魔力回復薬もそんなに持ってないし、とっととやんなきゃ。

 煙に何かあるとでも思ったルークが、さっと体を移動させる。煙の充満していない方へと駆けだしているが、少しは吸ったようだ。

 ブラックワームという人間の片足程度の大きさの芋虫の形をした魔物がいる。いうなればこの煙は、ブラックワームの吐きだす異臭を閉じ込めたものだ。生物の動きを鈍らせる効果があり、ブラックワームは煙を吐き出し弱り切った獲物に襲い掛かる習性がある。

 武器と魔法を使えなくしたとはいってもルークは体術面においても僕より上だ。勝ちたい、と思うからこそ念には念をいれて行動しようと思った。

 長剣を片手に僕は煙から抜けだしたルークへと向かっていく。

 動きを少し鈍くしているルークに向かって、長剣を振り下ろす。横に体をずらしてそれを避けるルーク。避ける際に少し態勢を崩したルークに再度を攻撃をくらわせようとする。だが、ルークは態勢を崩した状態から、僕に向かって蹴りをいれてきた。

 ――ああ、もう、何であんな態勢から攻撃できるんだ!!

 本当に、こいつは…、と思いながらも、その蹴りを回避する。だけれども、回避したとは別に、今度は拳が僕の頬をめがけて飛んでくる。

 「―――――っ」

 頬を掠める拳に息をのむ。

 本当に、こいつは天才だ。それを思うとはがゆい気持ちになるのは、僕が強さにどうしようもない憧れを抱いているからなのだと思う。

 正直、羨ましい、妬ましいと感じた事だってある。工夫もしないで、強大な魔法を簡単に扱え、ちょっと練習をするだけで、武術や剣術を習得してしまう。ルークだって強くなろうと訓練していた事は知っているけど、ルークと同じだけできるようになるためには僕ならもっと時間がかかるだろう。

 飛んでくる拳や蹴りに焦りがわいてくる中で、息を整える。手ぶらだったとしても、ルークは強い。油断してはいけない。《マジックアンチルーム》のせいで、徐々に体の中の魔力が奪われていっているのだって感覚で理解している。速く速く――…。

 《亜空間》の中に手をいれる僕を見て、魔法具を出させまいと追撃をしかけてくる。そんな中で、僕の長剣がルークの腕を掠り、ルークの拳や蹴りが僕の脇腹や足へとぶち当たる。

 クナイをはずしに向かう事が無理だと悟ったルークは、僕への追撃をやめない。

 ぶち当たった衝撃にに、体が態勢を崩す。そんな僕を見て、とどめをさそうとばかりに向かってくるルーク。

 そんなルークに向かって、態勢を崩しながらも僕は《亜空間》から取り出した植物の色をしたロープを使用する。そのロープの先端がルークの足に接触すると同時にロープはルークの足へと巻きついていく。

 「なっ――」

 攻撃をしかけようと動き出していたルークは、ロープに足をとられて動きを止めるのである。

 このロープは接触したものにまきつくという、植物のツルの習性を持っているロープだ。名前は……、《巻き巻きクン》というしょうもない名前である。製作者はある魔法具専門店の社長であるミリオネ・オーシャンだ。あの人の作る魔法具は名前が、なんかアレである。

 ちなみにこの《巻き巻きクン》は高い所に上る時などに、便利である。接触すれば勝手に強く巻きつくので、安心して登れるのだ。

 《巻き巻きクン》に足をとられて倒れ込んだルークに向かって、先ほどの攻撃での体の痛みを感じながらも態勢を整えた僕は剣を振りかざした。

 容赦している余裕はない。減っていく体内の魔力に、魔力回復薬を飲む暇があったらこのチャンスにぶちのめす方がいい、と判断し僕は動く。

 ズサッ、と長剣が舞台に突き刺さる。

 間一髪で避けたルーク。ルークの体のすぐ隣に突き刺さる僕の長剣。

 魔力が減ってきて、クラクラしてきているのにっ、何て思いながらも僕は倒れ込んだままのルークに追撃の手をやめない。

 そして、次の瞬間倒れ込んでいるルークの顎に、僕の拳が思いっきり繰り出された。

 「うっ――」

 うめき声をあげながらも、まだ意識を保っているルークに向かって、再度僕は攻撃を繰り出す。だってこいつは、ルークなのだ。僕がずっと見てきた天才なのだ。気を抜いたらなんだかんだでルークの都合がいいように色々とハプニングが起こる可能性だってある。

 今まで、ルークがピンチの時にそれが起こったりしていたのを見てきた身なのだから油断はできない。

 舞台から引っこ抜いた剣を思いっきりルークに向かって振りかざす。ルークの体を裂いた、僕の長剣。

 溢れだした血液に、ルークが朦朧としながらも青ざめているのがわかる。

 「さっさと気絶して!」

 ギリギリ意識を保っているルークに向かって、そういって思いっきり蹴りあげる。

 そうして、ようやくルークの体が動きを止めた。ぴくりとも動かないルークを、痛みと体内から減っていく魔力を感じる体で僕は見つめた。

 「…か、勝った?」

 そんな僕の声と同時に、

 『勝者、ユウ・リルード!!』

 聞こえてきた司会者の声。

 《マジックアンチルーム》が声と同時に解除される。意識して解除したわけではない。ただ僕の魔力が、既に《マジックアンチルーム》を発動できないほどに消耗していたってだけ。

 ああ、魔力が足らない―――。魔力回復薬は、試合の後で使うのはもったいないよな……、何て考えながらも歪む視界。倒れ込んだままのルークや、周りで歓声を上げる観客達が視界の中でブレていく。



 そして、僕はそのまま意識を失った。

 

回復薬については、ユウがどうやって入手してるかは後に書きます。試合の後に。

入手手段が難しい、って事にしとこうかなと…。

ちなみに回復薬は魔力回復薬はありますが、外傷を一瞬にして治すとかそういう薬はない予定です。ですから回復させるのは魔力だけです。


ルーク戦終わりです。

…戦闘シーンがうまくかけないです。難しいですよね、戦闘って。

魔法が使えない空間を生み出す魔法具ですから、魔力消費激しいって設定なので、最後こうなりました。


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