ルーク戦(3)
突如現れた魔力によって形成された空間に、ルークが戸惑ったようにこちらを見ているのがわかる。
―――さて、さっさとやんなきゃ。
こうしている間にも、僕の魔力は、魔法具・《マジックアンチルーム》に吸い取られていっているのがわかる。この魔法具を形成するのにはかなりの魔力を消費するのだ。正直、僕はルークみたいなバカげた魔力は持っていないので、かなりきつい。
長期戦になったら、僕が魔力切れで倒れてしまう。ルークが戸惑ってる隙に《亜空間》から取り出した魔力回復薬を一気に口に流し込んで、僕は気合を入れる。
そうして、《亜空間》の中から大きなハンマーを取り出す。これも一種の魔法具である。
さてっと、行くか。舞台を強く蹴って、僕はそのまま駆けだした。
『イーサ』を構えて、この空間に警戒しているような、ルークに向かっていく。
まぁ、警戒しているっていっても《マジックアンチルーム》が発動していてもなんとかなるとでも思っているような態度だけど。そんなルークに内心呆れてしまう。相手のペースに持ってこられて、相手の目的通りに魔法具を発動させてしまうだなんて、その時点で色々と甘いというか、駄目だと思う。
やろうと思えば、強力な魔法だって放てたはずなのに、それを躊躇したルークは本当、そんなんでいいのかと言いたくなる。学園の成績と戦いの実力は違うって、僕は思ってる。だって、授業と実戦じゃ全然違う。
それなのに、こんな風に甘くて、才能があるのに無駄にしているなんて…、本当もったいないと思う。
身体能力強化のかかっている靴で、一気にルークへと向かっていく。そうして、そのまま、僕は勢いよく跳躍して、ルークに向かってそのまま、ハンマーを振り下ろす。
ルークは、巨大なハンマーを『イーサ』でなぎ払う事は無理だと感じたのか、口を開く。
「《アイスシールド》level10」
そんな言葉を無詠唱で言い放つルーク。
それでも、僕は止まらない。そのまま、僕が勢いよくハンマーを振り下ろす中で、ルークは、ようやく魔法が発動されてない事を知覚する。その表情は魔法が発動すると安心していたせいか、驚いたように歪んでいた。
そんなルークに僕はためらいもぜずに、勢いよくハンマーを振り下ろした。
ルークが、とっさに体を横にずらして、『イーサ』をハンマーに向ける。そうして、ガキィイインという大きな音が鳴って、僕のハンマーとルークの『イーサ』がぶつかり合う。
「―――離れ、ない!?」
そうして、次の行動に出ようとしたルークの驚愕に満ちた声がその場に響き渡った。
そう、ハンマーとぶつかりあった『イーサ』はハンマーの表面にぴったりとくっついており、ルークが『イーサ』をハンマーから離そうとしても離れないのだ。驚いた顔をして固まっているルークに向かって、僕は思いっきり蹴ってやろうと足を振り上げた。そんな僕に気付いたルークはとっさに僕の攻撃を避ける。
もちろん、『イーサ』は僕のハンマーにぺたりと張り付いたままの状況でだ。それにしてもあんな状況で避けるってどんな瞬発力と運動神経してるんだ、ルークと、知ってはいたがルークの才能に驚いてしまう。
僕は、一旦ルークから距離を置くとハンマーに張り付いている『イーサ』をハンマーと一緒に《亜空間》の中へと放り込むのだった、。
――よし、これで、ルークは魔法も使えない状況で丸腰になった。
それを実感して、僕は細く笑うのだった。
説明をすれば、魔法具・《マジックアンチルーム》とは、体内の魔力が魔法として変換されるのを防ぐという効果を持つ魔法具だ。正確に言えば、その空間内で魔法として変換された魔力をもう一度変換して魔法を形成できなくするというものである。
八角形の巨大な空間は、魔力を流し込めば術式のこまれたクナイにつけられているリングから縦に十メートルのび、互いの隣接し合うリングが認識しあう。そうして、魔力で隣接されたリング同士が繋がり、繋がり生み出されるのがこの空間だ。
ちなみに、この魔法具は本当に使用者の魔力を大量に食う。だから長期戦には向かない魔法具である。
この魔法具は、僕と、そして魔法具職人見習いの二人の友人と一緒に作ったものである。考えたのは三年も前の事だ。魔法具作りに必要なのは技術もそうだけど、発想もそうなのだ。一番大事なのは発想力。役に立つような使える魔法具じゃなきゃやっぱり売れないわけだし、魔法具を購入するのなんて大抵貴族ばかりだから外面にも気を使わなければならない。
それで、この《マジックアンチルーム》は三年前に考えて、そうして作ろうと試みたものの、術式をきちんと組み込んだり、ちゃんと発動する術式を考えながらやらなきゃいけなわけで、できたのは本当に大会直前のギリギリだった。これは試作品である。どうにか成功したから、ルーク戦に使えるだろうと持ってきていたのだ。
で、ハンマーの方は僕が遊び心で思いついて、そのへんの武器屋で安く売ってあるハンマーに術式を込んで出来上がったものである。名前はちゃんと決めてはいないのだけれども、簡単な術式を刻み込んだものだけど、結構役に立つと思う。
このハンマーは表面に、”強力な磁石に変換する”という術式を編み込んだものだ。まぁ、要するに、武器って剣でも、オノでも、あと矢でもそうだけど、金属が使われている。だから、もし磁石を使った魔法具があったら武器と使用人を引き離せるのでは? と思ったのがこの魔法具の始まりである。
ようするにこのハンマーは表面が強力な磁石となり果てているわけで、接触すればべたりっとくっついて武器を離さないのだ。
アースにこの魔法具の事を昔いったら、武器ホイホイって名前でよくね? とか言われたけど、もっとかっこいいのがいいから今は思案中である。
まぁ、この二つの魔法具を使ったわけで、今ルークは丸腰で魔法も使えない状況になり果てているのだ。
というわけで、ルーク戦の続きです。
戦闘描写…もっとうまくかけたらいいのですけどね。
そして本当にユウは魔法具作りに時間とお金を使います(笑)
二月中にルーク戦終わらせたいので頑張って書きます。
そういえば、お気に入りが2000超えました。何だか嬉しいです。読んでくれている読者様ありがとうございます。