試合の後。
フォークス・ルネアスに勝利した僕は、控室に戻る。何だか、周りが注目してきているのにうんざりしてしまう。
そんなに僕が勝ったのが、意外か。そんなに僕が弱く見えるのか。とそんな風に言いたくなってしまう。というか、僕は強くなる事を目標に色々とやってるのに弱いとか思われるのは何だか心外だし、凄く嫌だ。
はぁ、もう、ルークのそばにハーレム陣達と一緒に居たいからいるだなんて、誰か言い始めたんだか。僕がどうしてあのハーレム達と一緒に居たいと思うだろうか? 本当に、心底うんざりする。この学園のハーレム陣達は、幾ら顔と家柄がよくても、性格悪いと正直思うし、なるべく近づきたくない。
ルーク戦は明日だ。さっさと寮に戻って準備をしようと思う。だって、僕は準備をしなければルークにはきっと勝てない。ケタ外れた魔力量も、魔法センスも、剣術も僕は持ち合わせていないから。
ルークの天才ぶりを知っている面々は、ルークにまけると必ずといっていいほど、「ルークは天才だから」、「天才に勝てるわけない」、「魔力量も圧倒的だし普通に勝てない」って諦めたように言う。
勝てるわけない、そう勝手に思いこんで、そうして強くなる努力もしない連中の事、僕はあんまり好きではない。
だって、そいつらに同意するって事は僕がルークに勝てないって事になる。僕は強くなりたい。目標がある、軍人になりたいっていう目標が。
アースは、僕の目標だ。ルークより魔力量は低いし、抜群のセンスを持っているわけでもない。だけど、アースはルークより強い。
結局、そういう軍人とか、ギルドで働くとか、戦う仕事をやるなら強くなくちゃいけない。
―――ルークに勝てるように頑張ろう。
そう、僕は気合を入れて、控室を後にする。
そうして、寮室へと向かっていれば、
「ユウ!」
なんか後ろからルークの声が聞こえた。
振り向けば、アフライ先生を除くハーレム陣と、ルークが居た。アフライ先生はセト先輩が他の教師にその行動について言った所、今では大分大人しくしている。たまに睨んでくるが、単位の事は言わなくなったからよしとしよう。
「おめでとう! 次は俺とだな」
そういって、笑いかけてくるルークは何だか僕に負ける気はありませんっていう笑顔で何だかイラッと来た。
「棄権するなら今のうちですわよ? ルークは強いんですもの」
アイワードがそういって、蔑むようにこちらを見てくる。
「ルークさん、頑張ってくださいねぇ」
メキシムはそういって、ぽわわーんとした目でルークを見据えている。
「ふふ、ルーク、手加減してあげたら?」
明らかにバカにしたようにそういうセルファード。
「ユー君も、ルー君も頑張ってね」
にこにこと笑ってそういうマー先輩の言葉に本気で感激した。
「なぁ、ユウ。他にどんな魔法具持ってるんだ?」
そういって、僕にルークが笑いかけるものだから、アイワード達三人の目が鋭く細められる。
それは、いつもの事だし別に構わない。だけど、思わずは? って思ってしまったのは仕方がないと思う。
「……今何て?」
「え、だから、他にどんな魔法具持ってんの? 色々準備してんだろ?」
こ・い・つ・は……、と思わず呆れてしまう。僕の次の対戦相手が自分だと理解しておいての台詞か、それは。幼なじみだし、僕が魔法具や魔法を使った戦い方すると知っているだろうに。
魔法具の知識を敵に教えるわけないだろ。そもそも教えたら対策法を考えられる可能性があるのに、誰が教えるか! 絶対、ルークはただの好奇心で聞いてるよ、これ。
「…あのね、ルーク。次の対戦相手で敵であるルークに教えるわけないだろ? そもそも魔法具は相手が性能を知ってないほど利きやすいんだ」
それに、昔魔法具の性能を教えた所、それをベラベラと悪気もなしに他人にルークは喋っていたという前例があるからな。折角自分で術式刻んで作った魔法具の性能ベラベラ喋られるなんて、本当困った。
「…敵って」
「あと、手加減無用だから。手加減されて勝っても全然嬉しくないし」
ルークは、甘いから、僕が幼なじみだからって手加減しようとするかもしれない。だけど、それは僕は嬉しくない。本気のルークに勝たなきゃ意味はない。
「なんですって? ルークに勝つ気なのかしら? 身の程を知りなさい」
「えー、ルーク君に勝てるわけないじゃん」
「ルークは強いもの」
そんなアイワード達の声はもう総無視だ。
「じゃ、そういう事だから。僕もう寮に戻る」
僕はそれだけ言うと、速足でその場を後にする。後ろでルークがなにか言っているが、ハーレム陣達にとどめられてるようだし、追ってはこないだろう。
―――それにしても、勝っても負けてもハーレム陣はなんともまぁ、煩そうである。
次回はルーク戦におそらく入ります。
二月中は1~3話更新出来るようになるべく頑張りますね。一ヶ月更新なしはないようにしたいので。