喧嘩を売られました。
本選の対戦表が発表された。僕は一番最初は、ロッシュ・バウナーとかいう、一年生とやり合うようだ。
ちなみにルークと戦えるのは、三回戦だ。まぁ、僕とルークがそこまで残ればの話だが。でも、ルークは残ると思う。というか、残ってもらって、僕は勝ちたいから、残ってほしいと思う。
ルークに勝つ事。それが、目標だから。
今は、丁度本選が始まる一時間前。
ああ、少し緊張する。大勢の前で一対一で戦いあう。それに興奮を覚えるけれども、やっぱり、緊張するのは当たり前だと思う。
それにしても、本選って言う事は、予選を勝ち抜いたメンバーしか居ないわけで、僕はそんな中で、勝ちたいと願ってて、ああ、と思う。
「ルークさん、頑張ってください!」
「ルーク、わたくしのために頑張りなさい」
とりあえず、僕は自分の事に専念したいから、ハーレム陣はスルーする事にする。
というか、ルークはあれだけもてるのに、何故誰とも付き合おうとしないんだろうか、謎だ。まぁ、ルークは鈍感なんだけれども、根強く告白して、気持ちが伝わった人もいるのだ。
でも、そういう人間もルークは断った。
ルークは基本的に相手からの告白を根強くされてからじゃないと気付かないというか、恋愛感情を信じないっていうか、そういう感じが結構あるし。とはいっても見ている限りルークはメキシム達に恋愛感情なんて欠片もないみたいだけれども。
さて、とりあえず明日はどうやって戦おうか。
一学年で予選を勝ち抜いたって事は、相手が強者であるという事だ。それなら、僕は頑張らなければいけない。
次の試合に勝たなければ、ルークと戦う事もままならない。
そんな事を考えながら、思考を巡らせていれば、
「――お前が、ユウ・リルードか」
声が響いた。
そうして、そちらを振り向けば、黒髪の活発そうな少年が居た。僕は思わず、誰だ? と首をかしげてしまう。
「俺は、お前に勝つ――」
「……もしかして、次の対戦相手?」
突然、勝つ、なんていわれたものだから、僕は驚いて、そうして問い掛けた。
「そうだ! 俺はお前に勝つ!」
「はぁ…そう」
何で、こんな初対面でいきなり敵対感情を向けられているのか、正直謎である。いや、僕の評判悪いだろうけどさ、何でこんな睨まれてんだろうか。
「俺が勝ったら、会長の傍から離れろ!!」
……理解した。この男、セト先輩が好きなのか。それで僕に敵対感情持ってて、離れろと言ってるわけか。
んー、別に僕はセト先輩にそういう感情ないし、てかあるわけないし。セト先輩は良き先輩なだけなんだけど…。
「…僕は」
「お前なんて、ヴェーセトンの金魚の糞のくせに!」
「は…?」
「ヴェーセトンが強いからってその権力を振り回してるような男が、会長の傍に居るなんて許されないんだ!!」
いやいやいや、ちょっと待て。
権力って何。金魚の糞って何。え、何僕周りにそんな風に認識されてんの…?
「挙句の果て、メキシムさん達ともヴェーセトンの友人としていやがって!! メキシムさん達にはお前なんて似合わないんだ! 釣り合わないんだ!」
「いや、だから何でそう認識されてんの!?」
「事実だろうが! とりあえず、お前が予選を勝てたのはヴェーセトンの権力を振りかざしでもしたんだろう! 俺が倒してやる!!」
「…いや、だから何で―――」
反論する前に、彼は背を向けて、ズカズカと去っていった。
………とりあえず、僕が強くなりたいって色々やってるのに、それを全部権力で片づけたわけだよね、あの男。
ルークの権力、僕が使ってるって。メキシム達といっそに居るのは釣り合わないって。
なんていう、認識…?
いいや、うん、ちょっとムカッと来たから、絶対勝とう。いや、もう絶対ぶちのめす。そもそも会長さんとは仲良い先輩後輩のままで居たいし、離れろって言われても困るし。
やっぱり、勝たなきゃな、と僕は思った。