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コロシアム前日

 とうとうやってくる、明日、コロシアムが…。

 準備は色々やったつもりだ。モノに術式を組み込んで魔法具を作成して頑張ったつもりだ。

 バハムート退治の後(今思えばよく一匹でも倒せたものだ)、僕は学園内に精霊がいるかを確認した。食堂の料理場の近くに、火の精霊が居るのが確認できたから、もしかしたら力を貸してもらえるかもしれない。

 自室で、明日の準備をしっかりと行っていたら、部屋の扉がノックされた。

 誰だろう、ルークか誰かか?

 僕はそんな事を思いながらも、ドアを開ける。

 そこに居たのは、ルークと、セト先輩とマー先輩だった。

 「あれ、ルークに、セト先輩に、マー先輩…、何か用ですか?」

 僕がそう問いかければ、話があるから入れてくれ、そう言われて僕は三人を部屋の中に入れる。そうして、紅茶を三人へと差し出した。

 「突然押し掛けてすまない」

 「いえ、それは全然いいんですが、どうかしたのですか?」

 「ヴェーセントには話したのだが、明日からコロシアムがあるだろう? 何でも有りが故に問題が起こる可能性があるのだ。一応生徒会役員と風紀員が見回りをする予定なのだが……、何分この学園には生徒数が多い分、対処しきれない所があるのだ」

 そんな話に、生徒会も大変なんだな、と僕はただ思う。

 この学園の生徒数は、中等部だけで2000人近くいる。生徒会役員が、6人に、風紀員が確か18人だったか…。それだけで、全員を見るのは難しいのも仕方がないとも言える。

 「ユウ! 会長さんは、俺に見回りを頼んだんだ。暇な時でいいから見回りをしてくれって!」

 「……僕にも見回りをしてほしいって事ですか?」

 僕が問いかければセト先輩は頷いて言う。

 「そうだ。ヴェーセントと一緒に少しでいいから周りを気を配っていてほしい。そして問題が起きたなら、最善を尽くしてほしい。頼めないだろうか?」

 正直な感想を言うと、僕はそんな面倒な事したくないと思った。

 誰が面倒事を起こそうが、僕やルークとかに被害がかからないならどうでもないい、そう思ってしまう。ルークは、上級生からも強い奴として知られてるし、ルークに突っかかる奴いないだろうし、だからルークに頼んでるんだろうな…。僕がどのくらいの強さだろうと、ルークが居るなら対処できるとでも思ってるんだろうか?

 「……我は生徒には怪我をしてほしくないのだ。そんな我が、ヴェーセントやリルードに危険かもしれない対処を頼むのは間違っているかもしれない。しかしだ、ヴェーセントは神童と評判が高く、リルードは信頼に値する人物だと我は評価している。

 メキシム、セルファード、アイワードも確かに実力はあるにはあるだろうが、あの三人は私情に走る可能性があり、どうも信用が出来なくてな…。ヴェーセントはリルードの親友だと言うし、どうにか対処してくれると思うのだ」

 ……何か嬉しい事言ってくれてる。

 誰かに信頼されるって、何だか嬉しくなって、心が温かくなる。

 見回りとか、そういう事は面倒だとは思う。だけどセト先輩は生徒思いだからこそ、被害を出したくないからと僕たちに自分たちが対処できない時の保険として頼んでくれているのだ。

 …そんな信頼とか、そんな強い頼みとか、何だか、うん、拒否できないなって思う。これがむかつく奴の頼みだったら僕きっと、断ってたけど。セト先輩の頼みなら、聞いてもいいかなってそんな思いになる。

 「わかりました。セト先輩の頼みならやります。ところで、マー先輩ももしかして見回りを頼まれたんですか?」

 「うん、そうだよぉー。ルー君と一緒にのんびりしてたらねぇ。イリちゃんがね、私たちに頼んできたのぉ。私、イリちゃんの事大好きだから、喜んで承諾したんだぁ」

 マー先輩って、本当、何か素直な人だなとただ思う。

 うん、やっぱりハーレム陣の中で一番マー先輩がいい人だよね。

 「…で、ルークは何で黙り込んでんの?」

 僕が問いかければ、ルークは何とも言えない表情で口を開く。

 「…いや、会長さんが、ノアや、ミクやルミの事信用できないって言ってるのが、悲しくて」

 ああ、もう、こいつは! と僕は思ってしまう。

 何て言うか、基本的にルークって、こういう奴なのだ。自分に優しくしてくれる人が、悪い風に言われると悲しそうな顔をして…。なんていうか、人を信じすぎているとでも言うべきなのか…、皆仲良くが理想的な奴なのだ。

 何て言うか、馬鹿で、人の本質を見分けられなくて、それで信じてしまって、近くに居るこっちがハラハラしてしまうほどに不用心なのだ。そこがルークのいいところとも言えるかもしれないけど、どうかその不用心さをなくして欲しいと僕は思う。

 「まぁ、奴らはルークにはいい顔してるからね。だからルークは奴らが好きだって思うんでしょ? 友達として」

 「うん…」

 「でもさ、ルークは人を疑って、人間の中には悪い奴だっているって、ちゃんと知っていかなきゃだめだぞ?」

 言い聞かせるように、ルークに言ってやる。

 本当に、もう少しちゃんとしっかりして、当主として自力で立っていけるってぐらいの人間になってもらわなきゃ、こいつの将来が不安でたまらない。

 第一次期当主になるには申し分ない強さとカリスマならこいつは一応持っている。ただたんに、性格が少し当主になるには問題があるのだ。ルークは基本的に人を誰でも嫌いにはならないのだ。それは時としていい事であって、時として悪い事だ。

 ……ルークが誰かに憎しみでも持ってくれれば、手っ取り早く敵に対する容赦なさをこいつが身につけてくれるのではないか、とか僕は思う。

 「メキシムやセルファードやアイワードはな? 僕からすれば性悪女だぞ? お前がどう信じていようがな。まぁ、人それぞれ人に対する意見は違うだろうし…、セト先輩が奴らを信用できないっていうのはだな。周りから見ていて奴らは信用できない、自己中に見えるわけだ。

 当事者である、ルークは優しくされるから善人に奴らが見えるかもしれないけどな」

 「性悪女って……、俺ユウも皆も大切だから皆で仲良くしてほしいって思うのに…」

 悲しそうな顔をするが、そんなルークに僕はばっさりという。

 「無理だね。というか、あっちは僕の事完璧嫌ってるし、そして僕もあいつら好きじゃない。ほら、嫌い同士で仲良くできるわけないだろ? まぁ、ルークは奴らと居たいのかもしれないけどな?」

 僕がそれだけ言えばルークは黙り込んだ。

 僕はそんなルークは放置することにして、マー先輩とセト先輩に向かい合う。

 「あとどれくらいの人間に頼んだんですか、見回り」

 「我や生徒会メンバーの信用できるものにそれぞれ頼んではおる。ところで、ヴェーセントは放っておいていいのか?」

 「いいんです。こいつは、人を信用しすぎてますから、その事について色々考えてもらわないといけないので」

 「…そうか」

 「はい」

 それからそのまま、黙って色々考えているルークの隣で、僕と、ルークを心配そうに見つめるマー先輩、そしてセト先輩での会話を続けた。


 しばらくして、三人は帰っていき、僕は明日のために眠りにつくのであった。

少しずつ編集作業もしていこうと思います。

ああ、それにしても何で作者には毎月憂鬱期みたいなのがあるのでしょう、と微妙にうんざりしますが、小説書いて気晴らしです。

お気に入り数が増えてたり、感想もらえると元気出るので、応援してくださる読者様に感謝です。

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