準備をしましょう。
「えーっと、此処はこうして……」
僕は今、寮の自室に居る。部活はあんまりいけないかもしれないと部長に既に報告している。コロシアムのための準備するので、といえば納得してくれた。
ルークは僕と一緒に準備するって言い張ってたけど、仮にも敵になるルークに手の内を見せる気には僕は到底なれなかった。
まぁ、ルークが僕と一緒に準備する発言して、ハーレム陣達に滅茶苦茶睨まれたけど。結局ルークは僕に断られると、ハーレム陣達と遊びに出掛けてしまった。
まったくもって、呆れる。ルークはただたんに幼なじみの僕と準備を一緒にしたかっただけなのだろう。決してコロシアムのために、勝つために、という真剣さはない。自分が負けるはずないとでも思ってるのか、それとも負けてもいいと思ってるのか…。
そんな事を考えながらも、僕は術式を靴に組み込んでいく。魔法を発動する際に重要なのは、術式を理解する事。魔法、というモノを理解する。それが出来なければ魔法は発動されない。
そして僕は、物に術式を組み込む作業をしていた。これは簡単な事ではないけれど、僕は幸いにも魔法に関する事は得意な方だ。その腕を見込まれて魔法具職人の知り合いに術式の組み込み方を仕込まれた。
本当は物に術式を組み込むという簡単な魔法具じゃなくて、一から作る魔法具を作りたいのだが、30日という短い期間じゃ本格的な魔法具なんて出来やしない。簡単な魔法具でもいいから実用性がある、戦いやすい物をとりあえず、組み立てたいのだ。
ルークはあんなんでも、天才だ。幼いころから神童と呼ばれていた男だ。現にルークは僕よりも強い魔法を放つ事が出来る。剣さばきもルークの方が上だ。
とはいっても、ルークの場合、それだけとも言えるけれども。
勝てるかは正直微妙。念入りに準備をしたとしても、ルークは今は怠惰してるけど、今までは結構真面目に剣術や魔法に取り組んでいたのは事実だ。
できれば勝ちたい、とは思ってる。もし僕がルークに勝って、うまく立ちまわったなら、ルークはきっと強さを求めるようになるだろう、と僕は思ってる。まぁ、僕が勝てなくても、他の上級生達がルークの強さの自信をへし折ってくれるかもしれないけれど。実際、僕とルークがどのくらいの強さの位置に居るかわからないから、このコロシアムで確認しなければと思う。
そんな事を考えながら黙々と作業に没頭していれば、ピコーンッ、ピコーンッと突然奇怪な音がなる。僕は音の原因を知っているので、それに近づく。
それの上にかかっている布を上からはずせば、鏡がそこにあった。そして、鏡の淵は赤く点滅している。これは、魔法具、『通信鏡』。
遠く離れた相手でも、鏡の術式ナンバーを覚えていれば、互いに通信する事が出来るというもの。そして僕は、鏡の上の部分を軽く押して、通信に出た。
『よう、ユウ久しぶりだな!』
そして、鏡に映ったのは、黒髪、黒目の男――――。僕はその人の声と顔を見た瞬間歓喜に声をあげた。
「アース!」
『元気そうだな』
「うん。アースも元気そうだね。で、どうしたんだ?」
『週末暇か?』
「別に開いてるけど、僕に用事? それともルークに用事?」
僕と今通信を交わしている人物―――、アースはルークの実の兄だ。六歳上で僕の幼なじみでもある。
公爵家当主の座はさっさとルークに受け渡して自由に生きている人である。
『両方だ。パティラ山に登ろうと思ってな、ユウ達も行きたいなら連れていこうと思って』
アースは昔から魔物が出る危険な場所に探検に行くのが好きだった。ルークは公爵家時期当主として勉強とか忙しくてたまにしかついてこなかったけど、僕は結構アースの行く探検についていっていた。
「もちろん、行く。ルークには僕から聞いておくよ。ところで、アース。アースは学園でのコロシアム見に来る?」
『んー、微妙だな。いけるかはわからないが、ユウは出るのか?』
「僕もルークも出るよ。勝てるかは分かんないけど、目標打倒ルーク」
『そうか。俺はいけるかわかんねぇけど、頑張れよ』
「うん、頑張る。とりあえずルークに週末の事聞いておくよ。返事聞き次第、連絡する」
『ああ』
そうして、会話を交わして、通信を切った。
……アースに久しぶりに会えるのは楽しみだ。それに、山とかに登ったり、森に入ったり色々するの僕結構好きだし。丁度良い気分転換になるかもしれない。ルークにも聞かなければ、一緒に来るかどうか。