生徒会長さんとサボりです。
「さて、リルードよ。そこに座れ」
僕と生徒会長さんが居るのは、生徒会室。当たり前だが、授業中という事もあって他に人は居ない。
生徒会室は広かった。沢山の資料がおかれた、部屋。確か生徒会は生徒会長、生徒会副会長、生徒会書記、生徒会会計、生徒会補佐2名の、計6名で形成されているはずだ。
「はい」
僕は生徒会長さんの言葉に頷いて、赤いソファへと腰掛けた。
そして、話を切り出す。
「それでお話とは?」
「……ヴェーセトンの事だが、いつもあんな感じなのか」
「あんな感じとは? そして生徒会長さん、できればお名前を教えていただけないでしょうか?」
「…貴君は我の名前を知らないのか?」
「正確に言えば忘れました。前にどっかで聞いたと思うんですが」
そう口にすれば、生徒会長さんは面白そうに笑った。
「そうか。我はイリス・セトモレアだ。好きに呼ぶといい」
「なら、セトモレア先輩…長いからセト先輩でいいですか?」
僕の言葉に、セト先輩は笑顔で頷いてくれた。
美女の笑みって、なんか、本当綺麗だなぁ、なんてただそんな感想を心に浮かべてしまう。
「それで、リルード。あの、ヴェーセトンを囲っている女たちは貴君を睨んでおったが…」
セト先輩は真剣な表情で問いかけた。いつもの事だと、入学してから僕は結構なれてきたつもりだが、やっぱり周りから見るとあのハーレム達ってきっと何か変なんだろうなと思う。
「いつもの事ですね。ルークって昔からハーレム作るんですよ、本当びっくりするぐらい女が寄ってきますね。まぁこの学園でできたルークに惚れた女は、マー先輩も含めて今のところ五人ですが、マー先輩以外の4人は正直自己中ですから、少し面倒です」
「……貴君は随分はっきり言うな。ところでマー先輩とはネアラの事か?」
「そうです。というか正直ルークと幼なじみじゃなきゃ関わりたくないですね。ああいう面倒なのは」
というか、本当に何でルークってハーレム作ってんだろう、毎回。
確かにルークは美形だし、勉強もできるし、魔法も得意だけど、それだけとしか僕には思えない。ルークは優しくて甘い人間だから、もてるのかもしれないけど。
あんな風に美少女を次々と落としていくほどの魅力がルークにあるかといえば、正直な感想を言うと謎だ。
「貴君とヴェーセトンは幼なじみなのか?」
「そうです。10年の付き合いですね。だからルークがハーレムを作るのにはなれてるんですが、今回のハーレムは本当いつも以上に面倒です。特にアフライ先生ときたらすぐに単位をやらない、単位をやらないって、呆れて仕方ないですね」
「…それは大変だな。一応こちらから教師達にシュンドイル先生について話しておく。それでよくなるかは分からないが」
そんな発言に、セト先輩はいい人だなぁ、とただ思う。
一人の生徒のために行動してくれる、生徒会長。理想的な生徒会長だ。僕は一つ確認したい事があって、セト先輩に問いかけた。
「ありがとうございます。ところでセト先輩はルークに惚れたりしないんですか?」
「いや、我はヴェーセトンに惚れたりはしないが、何故そのような事を聞く?」
「…今まで美少女とか美女がありえないぐらいの比率でルークに惚れていったので、セト先輩もそうなってしまっていたらどうしようと思ってしまいまして。セト先輩美人だし」
「それは、今まで苦労してきたのだな…。何かあったら相談に来い。生徒会室か3-5のクラスに基本的にいるのでな」
……今まで美少女とか美女がルークに次々に惚れていって面倒だったから、知り合いにそういう人達が出来るとうんざりしてたけど、セト先輩は心配ないようだ。
良かった、と安心してしまう。おそらくこれからもハーレム陣は増え続けるだろうが、なるべく増えないでほしいのだ、僕は。
だって、結局厄介事は結構こっちに回ってくるようになってるのだ。毎回、色々巻き込まれるこっちの身にもなってほしいものである。ルークはハーレムが何人増えようと皆で仲良くできてうれしいぐらいしか思ってないからな…。
そして時たまルークの貞操を狙う馬鹿までいるからなぁ…。なんか既成事実作ろうとして薬盛ったり、正直何考えてるのか理解不能。だって十歳をすぎたばかりの餓鬼に薬盛って既成事実作ろうとするに十七歳のお手伝いの女とか怖すぎだろ! 僕がどうにか気付いて止めたからよかったものの…、その後が大変だった。
その女が泣きわめいて嘘の証言しだして、馬鹿ルークはそれを信じてそいつを庇って…、お前は貞操の危機を理解してないのか、とルークに長い説教をかましてどうにかその女は追放したけど。その頃からルークの兄は公爵家を継ぐ気はなくて、ルークも納得して時期当主だったんだが、公爵夫人を狙って既成事実作りたい輩も何人かいたという。というか、餓鬼相手に盛るな、っていう話だよね。
結局一時間目が終わるまで、僕はセト先輩と雑談を交わして過ごした。