表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

夢への回想

 朝目を覚ますと、目の前に見えるのは無機質な洞窟や神秘的に光る魚ではなく、和の温もりを感じさせる板張りの天井。


 前髪が横一直線に切り揃えられている長髪の少女――艝箱冬優(そりはこふゆ)は、カーテンを開き、窓を開けて新鮮な外の空気を自分の部屋に取り込んだ。


 冬優は、んーと背伸びをし、夢の中のことを思い出す。


 不思議な夢を見た。

 自分が人魚になり、光るとても美しい魚が自分に話しかけてくる夢だ。

 そこでの夢は彼女にとってただの夢ではなく、楽しいとても大切な一時であった。


 冬優はその夢を毎日のように見ている。


1番始めに見たときのことは覚えていないが、それは彼女が物心付いた時にはすでに、夢の中で出会ったシーマと一緒にいたからだ。

 彼女が最も古い6才の頃の記憶のには、すでにシーマが夢の中にいた。そして何故かシーマの名前も知っていた。

 もしかしたら彼女が物心つく前にシーマが自分の名前を教え、それを覚えていただけなのかも知れない。あるいはシーマは彼女が夢の中で作り出した架空のキャラクターだからなのかも知れない。


 そもそも夢とは、睡眠中に起こる、知覚現象を通して現実ではない仮想的な体験を体感する現象をさす。

 つまり嘘ということ。

冬優が人魚になったことも、水の中で息をして泳いだことも、そしてシーマと出会ったことも全て架空の世界の中の絵空事なのだ。

 だからシーマは実在していないし、彼女も本当に人魚になれた訳ではなない。彼女も頭ではその事を十分分かってはいるが、心の奥底ではそれを否定していた。


 シーマは本当に実在し、そして自分は人魚になった。

 それが事実であるような気がして、冬優は思わず笑ってしまう。


 冬優は今まで他の人が見てきたような夢を見たことがないのだ。

 自分の夢と他人の夢。

 それは絶対に比べることはできない。

 自分の夢は自分だけのもので、彼女の世界は彼女だけのものであった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ