『石灯籠とプレスマン』
ある峠に、性悪な古狸が住んでいました。この峠を日暮れ以降に通ろうとする者は、もれなく古狸に悪さをされるのです。
あるとき、行商人が、夜になってから峠を越えようとしたので、ふもとの村の者が全力で止めましたが、どうしても今夜中に峠を越えたいと言うので、半分くらいの力に落としたところ、行商人は峠に向かって歩いていきました。
行商人がずんずんと歩いていきますと、遠くに狸がひょこひょこ歩いているのが見えました。行商人は、狸に気がつかれないように後をつけて、裏をかいてやろうと思い、そうっとついていきました。
狸は、途中で立ち止まって、何やらごそごそしていましたが、何ともかわいらしい娘に化けました。娘は、峠を越えて向こうの村に下りますと、一軒の家に入りました。節穴から中をのぞきますと、おばあさんと何やら話をしています。行商人は、娘がおばあさんをだまして悪さをするのだろうと思いましたので、背負っていた行商の荷物の中からプレスマンをとりだし、おばあさんが気がつくように家の中に投げ入れましたが、おばあさんは全く気がつきません。二本、三本と投げ込みましたが、耳が遠いのか、全く気がついてくれません。十本投げたところで、後ろから肩をたたかれたので振り向くと、どうして石灯籠に頭を突っ込んでいるのか尋ねられ、行商人があたりを見渡そうとしますと、指摘されたとおり、石灯籠に頭を突っ込んでいて、頭はほぼ回らなかったのであたりはほとんど見えず、かろうじて見えるあたりには、プレスマンが散らばっていました。
教訓:一番よくないのは、プレスマンを投げたこと。




