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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第8章 ふたつの影 ― 宮野と波多野、交差する軌跡 ―

リンクルの給湯室。

昼休みのざわめきが遠くに響く中、

静かに湯気の立つコーヒーが2つ。


その前に立っているのは——

宮野由維みやのゆいと、波多野樹はたのいつき


2人とも無口なタイプだが、

“沈黙の質”がまったく違っていた。


宮野は、

誰も寄せ付けない孤高の静けさ。


波多野はたのは、

誰も気づかない薄い笑みをまとった静けさ。


対照的な空気だが、

奇妙に調和していた。


波多野が、カップを片手に小さく言う。


「……発動したようだね。」


宮野は視線を落としたまま、短く答えた。


「ええ。」


「感想は? “JOKER”を引いた気分は。」


「……別に。

 目的は“技術評価”ですから。」


波多野は苦笑する。


「君も変わらないねぇ。

 昔から“誰が見破るか”が一番楽しいって顔をしてた。」


宮野の指先が一瞬だけ止まる。


「……あなたが言いましたよね。

 “仕掛けてみればいい。

 本当に自分の技術が通用するのか、確かめればいい”って。」


波多野はわざとらしく肩をすくめる。


「そんな昔の話、覚えてた?」


「忘れませんよ。

 あの展示会で、あなたは唯一……

 わたしのコードを“見抜いた人”でしたから。」


波多野の笑みが深まる。


「だからこそ、教えてあげたんだ。

 “君はもっとできる”ってね。」


宮野は視線をカップの中に落とし、

静かに続けた。


「今回も……

 わたしの仕掛け、見破れますかね。」


波多野はあざけるように笑う。


「どうだろうね。

 ただ——

 “彼ら(アークシステムズの3人)”は、甘くないよ。」


宮野の目がわずかに揺れる。


「……わかっています。」


「特に凪陽翔なぎはると

 あいつは……僕と同じくらい“厄介”だ。」


宮野は息を飲んだ。


「……あなたと?」


「そう。

 君の癖も知ってる。

 スクリプトの匂いもわかる。

 そしてね——」


波多野はゆっくりと宮野を見た。


「今回の“本当の目的”に、

 君は気づいていない。」


宮野の表情が初めて強張る。


「……え?」


波多野は微笑んだ。

その瞳は氷のように冷たい。


「君の“JOKER”は、

 僕が描いた舞台にすぎないんだよ。」


宮野の手が震えた。


(……わたしは……ただ、試したかっただけ……

 なのに……波多野さん……?)


そのとき——

給湯室の外から誰かの靴音が響き、

波多野はすぐに表情を切り替え、カップを置く。


「じゃ、行こうか。

 仕事がある。」


宮野は声を失ったまま、

波多野の背中を目で追った。


(……“利用された”?

 わたしが……?)


フロアに戻ると、

アークシステムズの3人が作業室に入っていく姿が見えた。


波多野の言葉が頭の中で響く。


——“本当の目的”。


胸の奥で、宮野の静寂が崩れはじめた。

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