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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第6章 仕組まれた罠 ― InsertとEscの真実 ―

リンクルのシステム管理室には、

機械のファンの音だけが静かに響いていた。


なぎはログファイルを解析しながら、

眉間に深いしわを寄せていた。


しゅう先輩……これ、やっぱり“事故”じゃないです。」


しゅうはその隣に立ち、画面を覗き込む。


「……ここだな。」


画面には、

InsertキーとEscキーが押された記録が、

妙に離れたタイミングで2度ずつ残っていた。


たまきはメモを取りながら尋ねた。


「……これは、どういう意味なんでしょうか。」


凪は指先で画面をなぞりながら説明する。


「本来、1度の作業でこの2つのキーを“別々の日”に押すことって、普通はないんです。

しかも、“押した瞬間だけ”限定で仕掛けが動くように設定されている。」


「押した瞬間だけ……?」


「そう。

 2回目のInsertか、2回目のEsc。

 どっちでもいい。

 それを押した瞬間だけ——

 漏洩用のスクリプトが発動するように仕込まれてます。」


環は手を止めた。


「……ということは、

 芦野あしのさんは……“押してしまった”。」


「ええ。完全に“たまたま”です。

 どう考えても本人のミスじゃない。」


その瞬間、

環の胸が再び、きゅっと痛んだ。


(“たまたま押したキーで起きた漏洩”……

 あのときと……似てる……)


柊は環の小さな変化に気づき、

そっと声をかける。


「環……無理はしなくていい。」


環は小さく首を振る。


「柊……ありがとうございます。大丈夫です。

 ……調査を続けましょう。」


凪は続けた。


「この仕掛け……仕組んだのは“相当な実力者”です。

 ただの趣味レベルじゃない。

 仕組まれたスクリプトが、あまりにも綺麗すぎる。」


柊が腕を組む。


宮野由維みやのゆい……か?」


凪は首を横に振った。


「……まだ断定はできません。

 でも、“トリガーの癖”はあの人のものに近い。」


環は、さきほどすれ違った宮野の無表情を思い出し

小さくつぶやいた。


「……何かを仕掛けて、

 それが発動するのを“待っている”?……」


そこで、凪が画面のログを指差す。


「柊先輩。このログ……ひとつだけ“別の手口”があります。」


「別の……?」


凪は真剣な声で言った。


「はい。

 “宮野さんの癖じゃない部分”があるんです。

 手口が2種類混ざっている。」


環が息を呑む。


「じゃあ……犯人は2人……?」


凪は目を細めた。


「……“誰かが宮野さんを利用した”可能性があります。」


柊は静かに言った。


波多野はたのさんか。」


凪は何も言わない。

だが、その沈黙が全てを語っていた。


―――InsertとEsc。

一見なんの意味もない2つのキーが、

“罠の扉”として機能するように仕組まれていた。


そしてその扉は、

まだ誰も知らない“真犯人”へとつながっていた。

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