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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第5章 JOKERの気配 ― 宮野由維のもう一つの顔 ―

翌日。

リンクルのオフィスは、事件の影を引きずったまま、

静かすぎる朝を迎えていた。


たまきは受付で名前を告げ、

案内を待つ間、フロアをそっと観察する。


(……芦野結月あしのゆづきさん、今日はお休みなんですかね。)


本来そこにいるはずの姿がないと、

空気の流れさえ違って見える。


案内役が来るまでのわずかな時間、

環は1人の女性がフロア隅で作業する姿に目を留めた。


宮野由維みやのゆい


背筋を伸ばし、

モニターと指先の動きだけが存在しているような、

完璧に整えられた静寂の人。


「……あの方……宮野さんでしたっけ?

 誰とも話さないんですね。」


環がそうつぶやくと、

横にいたなぎが小声で答える。


「環さん。あの人、すごく“自分だけの世界”を持ってるタイプですね。

 こういう人、たまに……います。」


しゅうが凪に目を向ける。


「凪。“技術目線”で見ても変わってるか。」


凪は眼鏡を押し上げながら小さく頷く。


「ええ。あの……手の動きが、事務の人じゃないです。

 ショートカットキーの使い方が、完全に“プログラマのくせ”です。」


環は驚いて宮野を見つめる。


「プログラマ……?

 でも、宮野さんって事務職じゃなかったでしたっけ?」


「ええ。だからこそ、余計に目立つんです。」


(……何か、隠している……?)



◇◇◇



たまきなぎしゅうの3人がシステム管理室に入ろうとした時——

すれ違うように宮野が扉から姿を現した。


環が反射的に声をかける。


「あ……おはようございます。」


宮野は足を止め、

ほんの一瞬だけ環の方へ顔を向ける。


しかし、返ってきたのは——

感情のない、まっすぐな無表情。


「……おはようございます。」


声は丁寧なのに、

言葉の温度は“氷”に似ていた。


環は思わず背筋を伸ばす。

その空気に、凪もわずかに眉を寄せた。


宮野は環たちを通り過ぎたあと、

廊下のカメラに一瞬だけ視線を向ける。


その瞳は——

静かで、深くて、どこか“試すような光”を宿していた。


(……さて。

 あなたたちの“技術力”……見せてもらおうか。)


言葉にはせずとも、

宮野の背中はそう語っているようだった。



◇◇◇



システム管理室。


凪が端末のログを読み進めていたとき、

柊が環にさりげなく問いかけた。


「環。宮野さんの印象はどう感じた?」


環は少し考えてから、静かに答えた。


「……とても、静かな人でした。

 でも……何か、“隠しているもの”があるように感じました。」


凪がモニターを指しながら言う。


「環さん。正しいと思いますよ。

 これ……“仕掛けた人間の癖”が残ってます。」


「癖……ですか?」


「はい。

 自分に自信があって、誰より頭が良いと思ってる人の癖です。」


柊が腕を組み、モニターを見つめる。


「……つまり、

 犯人は“自分が仕掛けた証拠を、隠しきれていない”……か。」


凪はゆっくり、大きく頷いた。


「ええ。

 見破られるか試すみたいに、

 “わざと痕跡が残っている”んです。」


——JOKERは、

もうすぐカードを切るつもりだ。


その予兆が、

確実に形となり始めていた。

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