エピローグ 最終章 ぽかぽかの夜(Epilogue) ― 終わった戦い、戻ってきた温度 ―
ぽかぽか邸のドアが勢いよく開いた。
「たっだいま戻りましたぁぁあ!!!
いや〜〜勝った!勝利ですよ!!
あ、灯さん、結月さん!ただいまです!」
「……ただいま。
ふぅ……やっと終わったな。」
凪は靴も脱ぐ前に両手を広げ、
ぽかぽか邸を見渡して叫ぶ。
「柊先輩ーーー!!
無事でよかったーー!!
……というわけでっ!!
本日の議題は——」
ビシッと指を立てる。
「勝利の!!打ち上げです!!!」
「ふふっ……やっぱり言うと思ったわ。」
「凪さん……元気……すぎます……」
「元気がなかったら勝てませんからね!
というわけで僕、食材買ってきます!
蒼真さん行きましょう!」
「え、ちょ、凪……
……まあいい。買い物リストは?」
「待て、落ち着け。
俺も手伝う。」
「じゃあ、わたしはははと結月さんとお手伝いします!」
こうして、
ぽかぽか邸は久しぶりに明るい声で満たされた。
買い出し班と料理班に分かれ、
キッチンは湯気と笑い声の中で活気づく。
「灯さん!この味付け最高です!
あ、環さーん!そのサラダめっちゃいい匂い!」
「柊、包丁の音が速い。
……いや、速すぎるんだが。」
「癖だ。気にするな。」
結月は、その光景を胸の奥で噛みしめるように見ていた。
「……この家……温かいですね……
本当に……わたし……救われた……」
「あなたは、もう“仲間”よ。
ここにいるみんなが、あなたの味方。」
結月は小さく頷き、目元をぬぐった。
やがて料理が並び、
グラスがひとつ、またひとつと手に取られる。
「……みんな。
お疲れさま。」
「はいっ!!お疲れさまでしたーー!!」
「これからも……みんなで進んでいけますように……」
「勝因は、信頼だな。」
「ええ。あなたたちの力は、本物よ。」
全員のグラスが触れ合った。
――カチン。
温かな夜が、ゆっくりとほどけていった。
◇◇◇
■深夜、静かな柊と環、2人の時間
家が静かになった頃。
ぽかぽか邸のリビングには、
柊と環の2人だけが残っていた。
柊はソファに深く座り、
長く息を吐いた。
環はその隣にそっと座り、
静かに口を開いた。
「柊……
わたし、今日……怖かったんです……
でも……手が震えなかったんです。
こんなこと初めてで……
自分のことより……
柊のほうが心配で……
気づいたら……
隣で柊の背中に手をあててました。」
柊は環を静かに見つめた。
そして――
そっと、彼女を抱き寄せた。
「……そうか。
俺も……怖かった。
こんなに震えたのは初めてだった。」
環の瞳が揺れる。
「でもな……
環おまえが隣にいてくれたから……
環の温度を感じられたから……
俺は戦えたんだ。」
環の目が少し潤む。
「柊……
わたし、ずっと柊の隣にいます。
柊は……わたしの大切な人ですから……」
柊の腕に、さらに力がこもる。
「……ああ。
俺も……ずっと隣にいる。
環を離さない……
おまえは……俺の大切な人だ。
これからもずっと一緒だ。」
「……はい……
ありがとう……柊……」
2人の影が寄り添って揺れる。
その夜、
ぽかぽか邸は、
戦いの名残を静かに消すように
あたたかな空気に包まれていった。




