第42章 ③最終攻防(The Last Break)
■ぽかぽか邸突破戦 —— “限界”のその先へ
ぽかぽか邸のリビングには、
まだ戦いの余韻が残っていた。
柊は机に両手をつき、
高速で走るログを追い続けている。
米田のコードはすでに崩壊寸前。
だが、最後の“暴れ”が強烈で、
一瞬でも判断を誤れば逆侵入を許すほど危険だった。
その横顔を見て、
環の胸がきゅっと縮まった。
(……柊……息が荒い……
さっきからずっと……)
環はそっと椅子を引き寄せ、
柊のすぐ隣に座る。
背中に、
そっと両手を添える。
「……柊……無理、していませんか……?」
柊の肩が一度だけ震えた。
一瞬、冷たい殺気が薄まり、
いつもの柊の“温度”が戻る。
「……環……
大丈夫だ。
ただ……少し……重かっただけだ。」
環は静かに首を振った。
「柊……
さっき……柊の背中が、震えてました。」
柊の手が止まる。
「柊……怖かったんですね。」
柊は目を閉じ、
ほんの少しだけ息を吐いた。
「……ああ。
怖かった。
“環を失う”と思ったら……
初めて……手が震えた。」
環の目が揺れた。
「でも……環が隣にいてくれたから……
俺は戻れた。
強くいられた。
本当に……ありがとう。」
環はほんの一瞬だけ目を潤ませ、
そして、そっと微笑んだ。
「……柊……
わたし、ずっと隣にいます。
これからも。」
――その時だった。
ぽん、と軽い音が鳴り、
柊の端末に通知が届く。
【凪 → 柊】
『先輩!
米田の“芯”、全部こっちで押さえました!
ラスト……お願いします!!』
続いて蒼真の声。
【蒼真 → 柊】
『柊、おまえが決めるべき勝負だ。
環さんがそばにいる今が、最強だ。』
環は柊の背中に手を添えたまま、
小さく囁いた。
「……柊。
みんな……柊を信じています。」
柊はゆっくりと目を開け、
戦闘態勢の表情に戻る。
しかしその目には――
環の温度が宿っていた。
柊
「……よし。
凪、蒼真。
合わせろ。
ここから――“終わらせる”。」
襲いかかる最後の攻撃ログ。
ぽかぽか邸の空気が張り詰める。
柊の指が、最後の速度域に入った。
環はその背中にそっと手を当て、
心の中で強く願った。
(柊……戻ってきて……
わたしの隣に……必ず。)
――そして戦いは、最終局面へ。




