第40章 Dual Strike ― 2方向同時追撃、天才たちの反撃 ―
ぽかぽか邸の空気が張り詰める中、
柊の前にあるモニターに、米田の侵入ログが波のように流れ続けていた。
しかし、柊の指は揺れない。
守りながら、同時に“逆探知”の準備まで進めている。
そのとき——
――ピコン。
凪と蒼真からの同時通信が柊の端末に入る。
◇◇◇
■アークシステムズ側:反撃準備完了
【凪 → 柊】
『先輩! 蒼真さん、弱点見つけました!
“米田のクセ”が完全に割れました!』
凪の声はもう“凪の領域”の時。
【蒼真 → 柊】
『米田のコードは、根本に“人間の癖”が残っている。
それが弱点だ。』
柊の眉がわずかに動いた。
「言ってみろ。」
蒼真は迷いなく答えた。
『“3段階目の改変”に必ずミスが出る。
米田は昔からそうだ。
完璧主義に見えて……本質は“焦り屋”だ。』
凪が続ける。
『先輩、覚えてます?
僕が新人のとき……
米田が僕の教育係だった頃のクセ。』
柊は短く答える。
「……ああ。
『追い詰められるとスピードだけ上げる』。」
凪の声が笑う。
『そう、それです。
今の米田、完全にその状態。
“速いだけで雑”になってる。』
蒼真が冷静に告げる。
『つまり——追撃するなら“今”だ。』
柊の指が止まらない。
「……わかった。
こちらも動く。
同時に叩くぞ。」
◇◇◇
■ぽかぽか邸:柊のカウンターモード
米田の侵入が、再び強くなる。
柊のモニターに表示された侵入ログは、
まるで乱暴に叩きつけられる波のようだった。
——ガッ
——ガガッ
——ガガガガガッ!
柊は静かに呟いた。
「……焦っているな、米田。」
画面の裏にいる“敵の呼吸”がわかる。
そして次の瞬間——
柊は指を止め、画面上の一点を示した。
(……ここだ。)
米田の“3段階目の改変”のエリア。
一見完璧に見えるコード…… しかし、たった1箇所だけ“不自然な改行”がある。
それが“昔からのクセ”。
「……もらった。」
柊はそこへ防御コードを叩き込み、
同時に逆探知プログラムを起動。
――ギィン!
画面の奥で、何かが弾けたような反応があった。
「……ッ!?
防がれた……!?
如月柊……どこまで読んで——」
「読めるに決まっているだろう。」
◇◇◇
■凪&蒼真:天才タッグの“斬り込み”
アークシステムズのセキュリティルーム。
凪はキーを叩きながら笑った。
「先輩が合わせましたね!
じゃあ行きますよ、蒼真さん!」
蒼真は冷静なまま。
「“同時3点刺し”。
凪とだからできる。」
凪はうれしそうに声を上げる。
「久しぶりの——コンビ復活っ!」
次の瞬間。
――パァン!
アークシステムズの端末上で、
米田の割り込みコードがすべて“固定化”された状態で止まる。
柊が押さえた米田の急所に対し、
凪と蒼真が一気に“逆流攻撃”を流し込んだのだ。
「……ッッ!!
これは……3方向同時……!?
誰がこんな——」
「天才SE凪陽翔と」
「天才リブーター桐生蒼真。」
凪&蒼真(同時): 「“2正面突破”だよ。米田さん。」
◇◇◇
■米田の仮面が崩れる瞬間
ぽかぽか邸で戦う柊の前に、
米田の侵入コードが揺らいだ。
……ブツ……ッ。
改変ログが止まり、
米田の“癖”がはっきりと浮かび上がっていく。
柊の目が細められた。
(弱点が……露わになった。)
その隙を突いて、
唐突に凪の声が柊のヘッドセットから響いた。
【凪 → 柊】
『先輩! 今です!
米田の“中心ライン”全部、蒼真さんが開けました!
叩いてください!!』
瀬戸際に立つ男の冷静な声が、ぽかぽか邸に響く。
「——了解。」
◇◇◇
■環、気づく
戦闘の合間。
環は柊の手の動きが、一瞬鈍ったのを見逃さなかった。
(……柊……緊張してる……?)
彼の背中に、そっと手を添える。
その温度が、柊の心を完全に戻す。
「……環。
大丈夫だ。ありがとう。」
環は小さく頷く。
「……柊……
わたし……ここにいるから……」
柊の指が再び迷いなく走る。
“戦闘態勢復旧”
それは、環が与えた“支え”の力だった。
◇◇◇
■締め
ぽかぽか邸。
アークシステムズ。
2つの拠点で——
3人の天才が同時に、米田の急所を叩き込んだ。
米田圭介の“完璧な仮面”が、
音を立てて崩れ始めていた。




