第39章 侵入者(Intrusion) ― 柊 vs 米田圭介・ぽかぽか邸突破戦 ―
ぽかぽか邸の玄関。
柊が鍵を閉め、ゆっくり靴を脱いだ。
家の中には静けさが流れ、
灯と環、結月が過ごすリビングまでの廊下は
いつもと変わらぬ“穏やかな空気”に満ちている。
……はずだった。
柊は1歩、踏み出したところで足を止める。
“音”が違う。
空気の流れが違う。
家の奥へ向かう気配の中に——
“混じりもの”がひとつ。
(……侵入……?
いや、“遠隔の気配”か。)
柊の瞳が鋭く細められた。
◇◇◇
■ぽかぽか邸へ向けられた“第1撃”
同時刻。
離れた暗室に座る米田圭介は、
柊の位置情報を画面で追いながら指先を動かした。
「侵入口、特定。
ぽかぽか邸・中枢へ侵入開始。」
キー音が高速で並び、
黒いウィンドウが次々と展開されていく。
――シュッ……!
侵入コードが走る。
標的:ぽかぽか邸ネットワーク
侵入経路:スマート家電 → ハブ → メインルータ
米田は薄く笑った。
「如月柊……
君の“家庭”ごと落としてやるよ。」
◇◇◇
■柊、気配の正体を掴む
ぽかぽか邸・廊下。
柊の指がピクリと動いた。
壁に取りつけた“家庭用Wi-Fi端末”から、
微かなノイズが走る。
その瞬間、柊は理解した。
(……環のスマホを狙ったのと同じ“入口”だ。
米田……こちらへ来たな。)
柊はスマホを取り出し、短く指示を送る。
【柊→凪】
状況変化。ぽかぽか邸に侵入。
お前らはアーク側を死守しろ。こちらは俺が抑える。
すぐに返事。
【凪→柊】
了解! こっちも動きあり!
先輩、気をつけて!
【蒼真→柊】
“例のポイント”を狙います。
時間を稼いでください。**
柊は画面を閉じた。
◇◇◇
■突然、背後から
「……柊?」
静かな声。
振り向くと——環が立っていた。
心配そうに、けれど勇気を出して近づいてくる。
「……柊……どうしたんですか?」
柊は言葉を選ぶように息を吐いた。
「……少し、守る仕事だ。」
環は迷わず柊に近づき、
そっと柊の背中に手を添えた。
その“体温”が、柊の心のブレを一瞬で整える。
柊の瞳が変わった。
迷いのない、いつもの“戦闘モード”。
「……ありがとう、環。」
環は小さく頷く。
「柊……気をつけて……
ここにいますから……」
柊の口元に、わずかな優しさが残った。
「必ず守る。」
◇◇◇
■ぽかぽか邸 vs 米田圭介
柊はリビングの中心へ移動し、
ノートPCを開く。
画面には、米田の侵入コードが
触手のようにシステムへ入り込んでくる様子が映し出されていた。
(侵入口3つ……同時攻撃……
だが——読める。)
柊が指を走らせた。
――カタカタカタッ!
米田の攻撃コードを分析し、
突然、柊は“ある一点”に集中的に防御を置いた。
その瞬間——
遠隔の場所で端末を操作する米田の目が細くなる。
「……ッ!?
そこに来るか……如月柊……!」
米田は急いで別ルートに切り替えるが、
柊はそれすらも先読みして攻撃を潰す。
攻防はわずか数秒。
しかし、その数秒が“天才の戦場”だった。
◇◇◇
■凪からの“遠隔援護”
そのとき。
柊の端末に、凪からの緊急連絡。
【凪→柊】
『先輩!そのまま右ライン守ってください!
米田の焦り、こっちで全部拾えてます!
僕が“隙”を作ります!』
柊は短く返す。
【柊→凪】
『任せた。』
凪の声が入る。
「柊先輩!
“揺らぎ3カ所”同時に来ますよ!
合わせてください!」
環は横で心配しつつもただ見守るしかない。
◇◇◇
■3方向からの同時攻撃
米田が牙をむく。
「如月柊……
まだ耐えるか。なら——本気を見せろ。」
キーを叩く速度が一気に上がる。
侵入ルートが3方向から同時に襲いかかった。
だが——
柊の指は迷わない。
凪が作った“揺らぎポイント”へ一気に防御を集中させ、
蒼真の深層解析が裏支えする。
「……甘いな、米田。」
「……何……!?
ここを読まれた……!?」
◇◇◇
■ぽかぽか邸の“守護者”が立つ
柊のタイピングが加速する。
――ダダダダダッ!
コードが次々と書き換えられ、
ぽかぽか邸のセキュリティラインが一気に強化された。
米田の侵入コードは弾き返される。
チッ……!
遠くで米田が舌打ちする音が聞こえたかのようだった。
そして柊は静かに言った。
「……米田。
この家は……俺の“テリトリー”だ。」
その背中には、環の手の温度がある。
そして凪の声が、もう一度届いた。
【凪→柊】
『先輩、準備できました!
次、行きましょう!!』




