第38章 影を裂く鍵(Key of the Shadow) ― 米田圭介の弱点、そして“逆転の糸口” ―
ぽかぽか邸に戻る少し前——。
アークシステムズ・セキュリティールーム
柊、凪、蒼真の3人は、外界から完全に遮断された空間で向かい合っていた。
蛍光灯の白い光が、3人の表情を鋭く照らす。
◇◇◇
■回想:アークシステムズ極秘会議
柊が静かに口を開いた。
「……米田圭介は、必ず“俺がぽかぽか邸に戻る”と読んでいる。」
凪が頷く。
「手元のAIで僕らの行動ログを模倣してるんでしょうね。
あいつ……僕らのクセまで研究してるタイプですから。」
蒼真は指先で画面を叩きながら言った。
「行動パターンと心理推測。
彼のAIには“完全一致しない部分”がある。」
柊が眉をわずかに動かす。
「……弱点か?」
蒼真は小さく頷いた。
「米田は“天才”だけど弱点がある。
“人間関係から得られる情報”を軽視している。」
凪もすぐに気づいた。
「あ……だから旧姓 “三浦環” のままのデータなんだ。」
「そう。
彼は外部ネットの情報収集に偏っていて、
“人から人へ伝わる情報”を拾えていない。
つまり——
米田のAIは強いが、“信頼”のデータがゼロ。」
柊は短く息を吸い、結論を落とした。
「……米田の弱点は“信頼のない天才”か。」
凪が席を前に寄せる。
「柊先輩。
あいつのAIもコードも完璧だけど……
“人の揺らぎ”だけは読めない。」
蒼真も続ける。
「だからこそ、
環さんを中心にした“人のネットワーク”を使えば勝てる。
米田が持たないピースだ。」
柊の目つきが鋭く変わる。
「……よし。作戦はこうだ。」
3人の視線が交わり、戦略が一瞬で形になる。
◇◇◇
■影を裂く作戦
①凪と蒼真は「本物のアークシステムズ」を守りながら
米田をおびき寄せる“ダミー本社”を構築する
「奴が食いつくのは、いつも“完璧に見える罠”だ。」
「了解。“完璧すぎる”セキュリティ作ります!」
②柊はぽかぽか邸へ戻る
——これは囮ではなく “米田の誤算を誘うための鍵”
狼の前にあえて背中を見せる。
しかしその背には、3人の緻密な計算がある。
「ぽかぽか邸は俺が守る。」
凪はまっすぐに柊を見る。
「……柊先輩、絶対ひとりで背負わないでください。」
蒼真も静かに言う。
「こちらからも援護を送る。
米田を同時に“両側から”追い詰める。」
◇◇◇
■現在——ぽかぽか邸へ戻る直前
柊が帰路に出る直前。
蒼真は静かに言葉を落とした。
「柊。
環さんの言葉だけは、米田には読めない。
だからその温度は……武器になる。」
凪も笑う。
「柊先輩。背中……押されてきてください。」
「……ああ。行ってくる。」
◇◇◇
■ぽかぽか邸・玄関前
柊のスマホが震えた。
画面には——環からのメッセージ。
『柊……気をつけてくださいね。
帰ってきてくれるの、待ってます……』
柊は小さく息を吸った。
その声が、冷静そのものだった柊の胸に
ほんの少しだけ“温度”を灯した。
――だが、その瞬間も。
画面の動きを、遠くの暗闇で見ている者がいた。
米田圭介。
彼は柊の位置情報と動作をモニタリングしながら、
低く笑った。
「……ほう。やはり戻るか。
その“人間らしい揺らぎ”、いただこう。」
柊は気づかず、玄関の鍵を開ける。
ぽかぽか邸での次なる戦闘が
すでに始まろうとしていた。




