第32章 Shadow の罠(Trap of the Shadow) ― “米田圭介の領域(テリトリー)”へ誘われる ―
アークシステムズオフィス——
セキュリティルームには、緑の光が脈打っていた。
柊、凪、蒼真。
3人は米田圭介(Shadow)を追うべく、解析を進めていた。
静寂が続いた、その時だった。
―― その画面は、突然“揺れた”。
「……ん?」
「……あれ……?画面が……?」
「違う……これは“揺らぎ”じゃない。
“呼んでいる”……?」
◇◇◇
■ Shadow からの「罠」
次の瞬間、3人の端末は同時に強制切替され、
ひとつの画面を表示した。
真っ黒な背景。
その中央に、たった1行。
《Welcome to my Territory ― SHADOW》
「っ……先輩、これ……!」
蒼真は即座に解析へ入る。
「……強制リダイレクト。 ただし侵入許可は……“こちらが触れなければ”発動しない仕様。」
柊は腕を組み、冷静に画面を見下ろす。
「つまり、これは“招待状”……」
凪は苦笑した。
「Shadow のテリトリーに、ようこそってことですね。
“踏み込めよ”って挑発です。」
蒼真の表情が徐々に険しくなる。
「だが……これは危険だ。
一歩でも誤ると……中枢まで根こそぎ持っていかれる。」
「だが、行くしかない。」
◇◇◇
■ Shadow の声が響く
その瞬間。
イヤホンもスピーカーも繋いでいないのに、
まるで耳元で囁くように、声が響いた。
《やあ、如月。凪。桐生。
久しいな。》
凪の心臓が跳ねた。
「……! これは……生声!?」
「違う……合成……いや……一部は本物だ。」
柊は瞬きひとつしないまま答える。
「米田圭介。
姿を見せるつもりはないのか?」
《姿?
君たちの眼前に“現れる価値”はないと思っている。
私は常に、“上”から見ているだけだ。》
その傲慢な声に、凪の拳が震えた。
「……昔からそうですよね。
常に“自分が正しい”って顔をして……
人を見下して……」
《凪。
君は私の“最高傑作”になれたはずだ。
なのに……如月柊と桐生蒼真が “壊した”。》
その言葉に、柊と蒼真の視線が鋭く光る。
◇◇◇
■ Shadow のテリトリーが“閉じる”
画面に突然、強制スクロールが走った。
《ここからは “私の領域だ。”
逃げたいなら今のうちだ。
だが——》
ゆっくり、ゆっくり文字が続く。
《君たち3人が揃って入ってくるなら……
歓迎しよう。
本物の天才が誰か、教えてやる。》
凪が奥歯を噛みしめた。
「……挑発……」
蒼真の手が震えたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「……これが米田のやり方だ。
“自分の土俵”に引きずり込んでから、叩き潰すつもり。」
柊は静かに画面へ手を伸ばす。
「……先輩、入る気ですか?」
「ああ。
あいつは“こっちが恐れているか”を見ている。
一歩でも下がれば——勝負は終わりだ。」
「僕も行く。
あいつに“Blue_echo”を二度と使わせないために。」
凪は、大きく息を吸った。
「僕も行きます。
逃げたら……僕の人生が“あの頃”に戻る。」
柊は軽く頷き、3つの端末を同時に操作した。
「いいか。
これは“米田圭介のテリトリー”だ。
だが——」
目に強い光が宿る。
「ここにいる3人の天才は、誰ひとり折れない。」
◇◇◇
■ そして3人は “Shadow の領域” へ
端末の光が一斉に強くなり、
無数のコードが 3人の画面へ一気に流れ込んだ。
——影の領域が開く。
「……行きましょう。」
「覚悟はできている。」
「Shadow の首を取る。」
光が一段と強まり、
画面の中へ、3人の意識が深く潜っていく。
暗闇の奥で——
米田圭介の冷たい声が微かに笑った。
《本物の天才は……いつだって“孤独”だ。
さあ見せてみろ。
おまえたちの“絆”がどこまで通用するのかを。》
3人の戦いは、ついに始まった。




