第31章 浮かび上がる真名(The Name Behind the Shadow)― “黒幕の正体” ―
アークシステムズのセキュリティルームには、
朝とは違う鋭い緊張が満ちていた。
柊、凪、蒼真。
3人の視線は一点に注がれている。
“SHADOW”――黒幕。
そのコードの“癖”を追って数時間。
凪の指が止まった。
「……あった。」
蒼真が振り向く。
「見つけたのか……?」
柊は無言だが、瞳だけが鋭く光る。
凪は画面を指でなぞりながら、静かに言った。
「この“癖”、見たことがあります。
芹澤の “mirror”と似ている。
でも……もっと深い。
“芹澤が模倣しようとした元の癖”です。」
蒼真が息を呑む。
「……元、だと?」
凪は真っ直ぐ2人を見た。
「はい。
たぶん……本物を見つけました。」
「名前は。」
「……米田圭介。」
―― その名が空気を震わせる。
蒼真の目が鋭く細くなる。
「……あいつか。」
凪は悔しそうに唇を噛んだ。
「新人のころ、僕の教育係でした。
優秀でしたけど……僕が何をしても“足りない”と言って
間違った方に誘導されかけました。」
「あのとき、お前は潰されかけていた。」
蒼真も思い出したように言う。
「凪、おまえ……あのとき言ってたな。
“正しい方向がわからなくなる”って。」
凪は苦く笑った。
「はい……。
でも柊先輩と蒼真さんが止めてくれた。
だから僕は……今ここにいる。」
柊は凪の肩に手を置いた。
「それで十分だ。
あいつは……人を育てる才能はない。」
「技術は本物だが……“心”がない。」
凪の指が再び画面を走る。
「米田さん……
芹澤を模倣犯として利用した……
もしくは、芹澤自身が米田さんを模倣した……
そのどちらかです。」
「どちらでも結果は同じ。
“本物の影”は今、俺たちの前にいる。」
柊が画面に表示された名前を見下ろし、静かに言った。
「米田圭介。
――Shadow の正体は、こいつだ。」
◇◇◇
■なぜ“環の旧姓”を使ったのか
「メールで“旧姓の三浦環”と書いていました。
つまり向こうの情報は“環さんの過去”で止まってる。」
「環さんを狙う理由は……」
柊が短く答える。
「クロノス時代の情報漏洩事件だ。」
「犯人は……米田さんだった?」
「その可能性が最も高い。」
「あの事件……環さんを生贄にしたあの事故……」
「全部……米田さんの仕掛け……?」
柊は静かに端末を閉じた。
「決まりだ。
米田圭介――
環を、俺たちを、そして凪を弄んだ黒幕。」
「許せません。
僕の人生を狂わせようとした男……
そして環さんを傷つけた男……
絶対に終わらせます。」
蒼真も立ち上がる。
「行こう。
Shadow を……この手で引きずり出す。」
◇◇◇
■そのころ、ぽかぽか邸では…
環がふと、胸に冷たい影を感じて空を見上げた。
「環……心がざわついてる?」
「……はい。
柊が……呼んでる気がして……」
結月もそっと呟く。
「……戦ってるんですね。
大切な人たちが……」
灯は2人の背中を包むように言った。
「大丈夫。
あの子たちは強いわ。
“信頼し合う天才”はね……
どんな天才にも負けない。」
環の目に小さな光がともる。
「……柊……凪くん……蒼真さん……」
◇◇◇
■そして物語は次のステージへ
アークシステムズ――
揺らぎ始める正義の天才たち。
Shadow――
信頼を捨てた孤高の自称“本物の天才”。
ふたつの天才が、ついに正面からぶつかる。
ここからが “本番”。




