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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第28章 ぽかぽか邸の光 ― 灯と環、そして結月の心 ―

ぽかぽか邸のドアが静かに開いた。


たまきが帰ってきた瞬間――

あかり結月ゆづきの表情が、ふっと緩んだ。


「環……おかえり。」


灯の声は、いつもより少し柔らかかった。


環はコートを脱ぎながら、

結月の方へほんの少し歩み寄った。


「ただいま、結月さん。

 ……怖い思い、したでしょう?」


結月は小さく首を振る。

けれど、震えた指先がすべてを物語っていた。


(……怖かった……

 メールが届いたとき……

 身体の奥が凍るように……

 また“あの職場”での悪夢がよみがえる……)


結月の胸がぎゅっと縮むその感覚は――

環と灯には、はっきり聞こえた。


環がそっと目線を合わせる。


「……結月さん。

 こわかったって、言っていいんですよ。」


結月は涙がこぼれそうになりながら、

必死に首を横に振った。


「……わ、わたし……

 弱いところ……見せたら……

 また……迷惑……かける……から……」


灯がそっと隣に座り、

結月の手を包む。


「迷惑なんて思わないわ。

 あなたが“こわい”と感じたら、

 そのまま私たちに言ってくれていいの。」


結月は驚いたように灯を見る。


「……でも……

 泣いたら……叱られます……

 “仕事中に感情を出すな”って……

 ずっと……言われてきて……」


環の胸が強くしめつけられた。


(……そうなんだ……

 昔のわたしと……同じ……)


環は結月の手にそっと触れた。


「結月さん。

 ここはね、“叱る大人”なんていない場所ですよ。」


結月はこぼれる涙を止められなかった。


(……泣いても……いいの……?

 ここで……泣いても……見捨てられない……?)


灯は軽く微笑んだ。


「涙はね、ためこんだ分だけ……出るものよ。

 あなたが安心した証拠。」


結月は手で顔をおおって、

しばらく泣いた。


環はその背中をそっと撫でる。


「いっぱい怖かったね……

 でも、大丈夫。

 しゅうなぎくんも蒼真そうまさんも、ちゃんと動いてる。」


「あの子たちはね、“誰かを守る”ことに迷わない子たち。

 あなたを危険にさらすことは絶対にないわ。」


結月の心が静かに解けていく。


(……あたたかい……

 環さんも……灯さんも……

 どうして……こんなにやさしいの……)


灯は結月の髪を軽く撫でて言った。


「ねぇ結月さん。

 あなた、強くなりたいって……思ってるでしょう?」


結月は驚いて顔を上げた。


「……え……?」


灯は微笑んだ。


「あなたの心の声、さっき聞こえたの。

 “怖いけど、逃げたくない”って。」


結月は唇を震わせる。


(……どうして……

 心の奥まで……わかるの……)


環も優しく続ける。


「“強い人”ってね……

 怖くない人のことじゃなくて、

 “怖さを知ってるのに前に進める人”なんですよ。」


その言葉に――

結月の涙は、またぽろっとこぼれた。


(……わたしも……いつか……

 環さんみたいに……笑える日が来る……?)


灯はそっと結月の肩を抱いた。


「来るわ。

 だってあなた……もう一歩踏み出してるもの。」


結月の胸に、

小さなぽかぽかが灯る。


(……怖いけど……

 ここにいて……いいんだ……)


■ その頃、遠くでは――


黒幕の影が、静かに次のカードを切ろうとしていた。


ぽかぽか邸に流れる光と温かさ。

アークシステムズに迫る闇。


その差が大きくなるほど――

黒幕の企みは、より“鋭く”動き始める。

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