◆Interlude 影の会議(The Council of Shadows) ― ただの駒が崩れた夜 ―
暗い部屋。
窓もなく、光もない。
ただ、モニターの青白い光だけが、
そこにいる“何者か”の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。
机の上には、
“波多野樹・補足済”
という文字が表示された。
椅子に座った人物は、
ゆっくりと指先で画面をなぞる。
「……やはり崩れたか。
あの程度では、長くは持たぬ。」
声は男とも女ともつかない。
低く、静かで、
“失望”よりさらに冷たいものが含まれていた。
部屋の奥、別の声が続く。
「次の手駒をどうしますか?」
「必要ない。
波多野は最初から“仕掛け”の一部にすぎない。
あれは……アークシステムズを揺らすための石だ。」
薄闇の中、誰かが笑う。
「揺らしたどころか……
あの3人+1(プラスワン)を本気にさせましたが?」
その言い方に、わずかに空気が冷たくなる。
そして、リーダーと思しき人物が答える。
「いいのだよ。
本気にさせたかったのだから。
あの“天才たち”が動けば、
隠された傷口が開く。」
別の者が尋ねる。
「狙いは……凪陽翔か?如月柊か?
それとも……桐生蒼真か?」
短い沈黙。
「誰でもいい。
どれか1つ崩れればいい。
アークシステムズは“連鎖で落ちる”。
そういう仕組みだ。」
最後の影が言った。
「灯という女も……想定外です。」
モニターの光が強くなり、
黒幕の目が冷たく光った。
「想定外は構わぬ。
ただし——
あの女は“鍵”だ。割るな。揺らせ。」
沈黙。
その瞬間、
映像が切り替わり、
アークシステムズの4人の写真が並ぶ。
如月柊
凪陽翔
三浦環
桐生蒼真
その上に、ひとつの言葉が浮かび上がる。
『ターゲット:アークシステムズ』
黒幕はゆっくりと指を滑らせながら言う。
「さあ……再開しよう。
クロノスの“影”の本当のゲームを。」
モニターが黒く落ちる。
闇だけが残った。




