第23章 朝の光と、新たな兆し ― “再出発する人”と “動き出す者たち” ―
ぽかぽか邸の朝。
カーテン越しの光が、静かに部屋を照らしていた。
結月はソファで目を覚ました。
毛布はふわふわで、あたたかい香りがした。
(……起きたら……寒くない……
ここは……なんて優しい場所なんだろう……)
ゆっくり身体を起こすと、
キッチンから穏やかな声が聞こえてきた。
「結月さん、おはよう。よく眠れた?」
灯がコーヒーを淹れながら微笑む。
「……はい……あの……すみません……
昨日は……泣いてばかりで……」
灯は頭を振り、そっと近づく。
「泣いていいのよ。
涙ってね……心が呼吸するためのものなの。」
結月の胸がまた熱くなった。
そこへ凪が元気よく現れる。
「おはようございます!
朝ごはん、柊先輩が作ってくれてますよ!
今日は“回復メニュー”です!」
環も両手を合わせて微笑む。
「結月さん、昨日より……顔色が柔らかいです。」
結月は恥ずかしそうに目を伏せる。
「……あたたかくて……
久しぶりに……眠れました……」
環はそっと笑った。
「よかった……」
柊がエプロン姿で現れ、小さく言った。
「無理はするな。
今日はここでゆっくりしていけ。」
その言葉に、
結月の目がまたじわっとうるむ。
◇◇◇
朝食のテーブルには、
ほかほかのスープ、温野菜、やさしい味の卵料理。
結月はひと口食べて、
ふわりと肩の力が抜けた。
(……なんてやさしい味……
こんな朝……いつ以来だろう……)
灯が言った。
「結月さん。焦らなくていいわ。
あなたは今日から“やり直す準備”をすればいいの。」
結月は胸に手を当て、小さくうなずいた。
「……はい……」
◇◇◇
その頃、アークシステムズでは。
桐生蒼真がリンクル社から戻る運転中、
スマホが震えた。
画面には、
「アトラス・インテリジェンス」 の名前。
灯が所属する派遣会社——
結月を受け入れる予定の場所。
蒼真は眉を寄せた。
(……このタイミングで……?)
通話に出る。
『桐生さん……大変です。
昨日の件が、別の場所に“波紋”を広げています。』
蒼真の表情が一気に鋭くなる。
「詳細は?」
『波多野の関係者が……
別の企業で“同じ不正の種”をまいていたようです。
こちらでも緊急対応が必要になります。』
蒼真は静かに息を吐き、
車内に冷たい緊張が走る。
「……わかった。すぐ動く。」
ぽかぽか邸のあたたかい朝とは対照的に
アークシステムズの前には
新たな問題が、静かに姿を現し始めていた。
◇◇◇
この日、
結月は小さな再出発の一歩を踏み出し、
アークシステムズはまたひとつ“守るべき人”を救う決意を固める。
あたたかさと緊張が交わる朝。
物語は次の局面へ静かに、確かに進んでいく。




