第21章 ぽかぽか邸の夜 ― やすらぎの食卓、はじまりの乾杯 ―
夕方。
落ち着いたあと、環が小さく手を叩いた。
「……今日は、このままここで
みんなでごはん食べるのどうですか?」
凪がすぐ乗ってくる。
「いいですね!賛成です!
こういうときこそ“栄養補給”が必要です!」
柊は笑いながら環の頭をぽんと撫でる。
「……そうだな。環の提案なら、間違いない。」
蒼真も控えめに手を挙げる。
「僕も……ご一緒していいですか?」
「もちろんです!」
「大歓迎ですよ!」
結月が不安げに視線を上げる。
「……わ、わたしも……?」
環はすぐに笑顔で手を取った。
「もちろんです。今日は、ははもいますし、
結月さんの歓迎会ですから。」
「ふふ。大人数で楽しそうね。」
その“はは”という呼び方に、蒼真だけでなく凪くんもいつものように笑う。
「環さん、灯さんのことになると甘えん坊ですからねぇ〜。」
「凪くん……そんなこと言わないでください……!」
柊が優しい目で環を見おろす。
「いいじゃないか。環が甘える相手がいるのは、いいことだ。」
環は顔を赤くしながら、柊の腕をつついてみせた。
「柊まで……そんなふうに言わないでください……」
凪くんはそれを聞き逃さない。
「ほ〜ら!また始まった!
はいはい、今日も恒例のイチャイチャタイムね!」
蒼真ですら、ふっと笑う。
「……案外、賑やかなんですね。
ぽかぽか邸って。」
環は照れながら言う。
「はい……“家族みたいな場所”なので……」
結月はその言葉に、胸の奥が少し温かくなった。
(……家族みたいな場所……
わたしも……そこに混ざっていいのかな……)
環は結月の手をとり、そっと囁く。
「大丈夫ですよ。
結月さんも……今日から仲間です。」
結月の目に、小さな涙がにじんだ。
「……はい……よろしくお願いします……」
◇◇◇
テーブルには灯と柊の手料理が並ぶ。
温かいスープ、ハーブチキン、野菜のグリル、そして環の好きな柑橘サラダ。
凪が喜びの声を上げる。
「わ〜〜!灯さんの料理だ!
この香りだけで救われますね!」
柊はコップを手に取り、全員を見渡す。
「じゃあ……今日は、がんばったみんなに。」
環も笑顔で言う。
「……そして、結月さんの新しい一歩に……」
蒼真もそっと。
「ここにいる全員へ。
お疲れさま。」
灯が小さく手を上げる。
「さあ、乾杯しましょ。」
全員がグラスを合わせた。
――カチン。
やさしい音が、ぽかぽか邸の夜に響いた。
そして結月は気づいた。
(……ここは……
本当に……あたたかい……)
環が灯の肩に寄りかかり、
「はは……ありがとう……」
灯は環の頭をなでながら微笑む。
「おかえり、環。
そして……いらっしゃい、結月さん。」
結月は胸がいっぱいになりながら小さく呟く。
「……ただいま、と……
言ってもいいでしょうか……?」
灯は迷わず答える。
「もちろんよ。」
ぽかぽか邸に、
もうひとつ“帰ってきた人”が増えた晩だった。




