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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第20章 灯と結月の出会い ― “大丈夫よ、あなたはもうひとりじゃない” ―

翌日。

午後3時すぎ。


アークシステムズの3人と桐生蒼真きりゅうそうまは、結月ゆづきを連れてぽかぽか邸へ向かっていた。


たまきは結月のとなりを歩きながら、やさしく声をかける。


「大丈夫ですよ……ゆっくりで……」


結月は両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、小さく首を振る。


「……わたし……

 ちゃんと……話せるかわからなくて……

 迷惑じゃ……ないでしょうか……」


環はふわりと微笑む。


「迷惑だなんて思わないです。

 ははは……そんなこと、絶対に言いません。」


結月は、その“はは”という言葉に一瞬だけ驚いたように目を丸くする。


「……あかりさんのこと……そんなふうに呼んでいるんですね……」


環は少し照れたように頷いた。


「はい。

 ははは……わたしにとって、家族みたいな人です。」


それを聞いて、結月の表情がほんの少しだけ柔らかくなった。



◇◇◇



[ぽかぽか邸・玄関前]


環がインターホンを押すと——


「はーい。開いてるわよ、環。」


あたたかい声がすぐ返ってきた。


結月が不安そうに環の袖をつまむ。


「……あの……失礼にならないでしょうか……」


「うん、大丈夫です。

 ここは……“帰ってきていい場所”ですから。」


その言葉に背中を押され、結月は玄関をくぐる。


扉が開いた瞬間——

ほんのり甘い紅茶の香りと、やさしい暖色の灯りが迎えてくれた。


そして——


「ようこそ、芦野結月あしのゆづきさん。」


あかりがそこにいた。


穏やかな笑顔。

包み込むような雰囲気。

“初対面なのに、なぜか懐かしい”温度。


結月は一歩だけ進んで、すぐに足を止めた。


「……あの……すみません……

 初めまして……」


灯は、ゆっくり、ゆっくり距離を詰める。


「いいのよ。

 ゆっくりで。

 あなたの歩幅で来てちょうだい。」


その一言だけで、

結月の肩からふっと力が抜けた。


まるで仙骨の奥の緊張がひらいていくように。


環がそっと耳元でささやく。


「……ね? 言ったでしょう?

 ははは……こんな人なんです。」


結月は震える声で言った。


「……ご迷惑を……かけました……

 わたし……どうしたら……」


灯は結月の手をそっと包み込んだ。


「迷惑なんて思ってないわ。

 あなたはただ……ひとりで頑張りすぎただけ。」


結月の目に、涙がたまりはじめる。


「……わたし……

 また……前に……進めますか……?」


灯はやさしく微笑む。


「進めるわよ。

 だってあなたは——

 “助けたい”って思った人でしょう?

 そんな人が、前に進めないはずがない。」


その言葉は、

結月の胸の奥の深い影を、そっと照らしはじめた。


遅れて入ってきたしゅうが静かに言った。


「灯さん。結月さんに“休める場所”をお願いします。」


なぎも続ける。


「無理させないで、少しずつで……お願いします。」


蒼真もうなずく。


「芦野さんは……ちゃんと救われるべき人です。」


灯は3人に微笑んだあと、結月に向き直った。


「ゆっくりでいいの。

 まずは、お茶を飲みましょう?

 あなたの話は……

 聞きたいときに聞くわ。」


結月は、こぼれ落ちる涙を手の甲でぬぐいながら、


「……ありがとうございます……

 よろしくお願いします……」


そう、小さな声で言った。


灯はその涙を見て——

まるで自分の娘を迎え入れるように微笑む。


「こちらこそ。

 ようこそ、ぽかぽか邸へ。

 結月さん。」


ぽかぽか邸に、

またひとつ、やさしい物語の始まりが生まれた。

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