第19章 灯(あかり)への橋渡し ― “ぽかぽかの手”が差し伸べられるとき ―
リンクル社の対応を終え、アークシステムズの3人と桐生蒼真は会社を後にした。
外はすっかり夕暮れの色に染まり、風はどこか柔らかい。
環は胸に手を当てながら言った。
「……結月さん、少し落ち着いたみたいで……よかったです……」
柊は穏やかに頷く。
「ああ。けど……ここからが本当のスタートだ。」
凪が肩を回しながら笑う。
「気疲れしましたねぇ……でも、なんか……救えましたね。」
蒼真も珍しく柔らかく微笑んだ。
「ああ。あの勇気に応えることができて、よかった。」
環はそっと口元をゆるめた。
「……ははなら、きっと……
“わたしはいつでも歓迎よ”って言ってくれますよね。」
柊がふっと笑う。
「言うだろうな。あの人なら。」
環もつられて笑った。
「きっと……
結月さんの『心の温度』を見て……
そっと包み込むように……迎えてくれると思います。」
凪が頷く。
「灯さん、ああ見えて“人を選ばない人”ですからね。
困ってる人ほど、すぐ拾っちゃいそうです。」
全員が笑った。
その瞬間——
冬の風の中に、小さな“春のような温度”が滲んだ。
◇◇◇
その夜。
ぽかぽか邸の灯は、環からのビデオ通話を静かに聞いていた。
「……そう。
そんな優しい子が……生贄にされるように利用されたのね。」
灯の声は低く、しかし深い慈しみを帯びていた。
環は画面越しに、思わず息が軽くなる。
「はは……
結月さん……困っていて……
“やり直したいけど、どうしたらいいかわからない”って……」
灯はすぐに答えた。
「だったら——
うちにいらっしゃいって、伝えてちょうだい。」
環はほっと笑った。
「ははなら、そう言うと思ってました。」
灯はやわらかく笑った。
「わたしはいつでも歓迎よ。
泣いてきたって、黙ってきたっていいの。
人は、転んだあと“どこへ戻ればいいか”が一番大事なんだから。」
蒼真がその言葉を聞いて、静かに目を伏せる。
(……灯さん……
やっぱり、この人は……“ぽかぽかの源”だ。)
柊も凪も、環の隣で黙って頷いていた。
◇◇◇
環はスマホを握りしめ、胸の奥にあたたかさが広がるのを感じた。
(……結月さん……大丈夫……
ははがいれば、きっと……
心がほどけていくはず……)
明日、結月さんに伝えよう。
「行く場所はあるよ」と。
「はは、灯さんが待ってるよ」と。
そして、アークシステムズの4人は静かに帰路についた。
冬の街に灯る光は、
結月の新しい未来をそっと照らしているようだった。




