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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第16章 結月の救済 ― 「あなたのせいじゃない」と伝えるために ―

リンクル社内の小会議室。


芦野結月あしのゆづきは椅子に座ったまま、両手をぎゅっと握りしめていた。

目は赤く、呼吸は浅く、肩は細かく震えている。


彼女の周囲には、

しゅうなぎたまき、そして蒼真そうまが静かに立っていた。


だが、誰も急かさない。

誰も責めない。

ただ、結月ゆづきの心が“話せる準備を整えるまで”待っているだけだった。


その空気に、結月は余計に胸が苦しくなった。


(……どうして……

 どうして責めないで、そんな顔で……

 わたし……自分でも……何を信じていいのか……わからないのに……)


涙がこぼれそうで、彼女はうつむいた。



◇◇◇



柊が、低く落ちついた声で口を開いた。


「芦野結月さん。

 まず……ひとつだけ言います。」


結月の肩が小さく動いた。


「あなたは、何も悪くありません。」


その言葉に、結月の呼吸が止まった。


(……悪くない……?

 わたしが……?)


柊は続ける。


「あなたが経験したことは“事件に巻き込まれた”というだけです。

 関わったのは事実でも、罪を背負う必要はない。」


凪がやわらかい声を添える。


「むしろ……あなたは“被害者”なんです。

 勝手に名前を使われて、勝手に犯人にされたんです。」


結月の唇が震える。


「……でも……

 わたし……サイン……しちゃって……

 ちゃんと読まずに……

 宮野さんの言うこと、信じて……

 だから……」


環がそっと結月の前に膝をついた。


その動作はとても静かで、ゆっくりで、優しかった。


「結月さん……

 信じたことは、悪いことじゃありません。」


結月の目が揺れる。


「……でも……」


環は、両手を胸の前でそっと合わせながら続けた。


「誰かを信じるって……

 勇気がいることです。

 それは“美しいこと”であって……

 決して責められるべきことではありません。」


その声は、結月の心の深いところに静かに届いた。


(……信じたことが……悪くない……?

 わたし……ずっと……

 “信じた自分がバカなんだ”って思って……

 胸が苦しくて……

 消えたいって……思うくらい……)


結月の肩が震え、涙が落ちた。



◇◇◇



蒼真が、穏やかな声で言った。


「あなたがサインした書類は、

 “詐欺的手口”によるものです。

 責任を問われることはありません。」


柊もうなずく。


「むしろ、あなたの証言があれば……

 本当の犯行が明確になる。」


凪が優しい笑顔で言った。


「だから……助けてほしいんです。

 あなたにしか分からない“あの時”のことを。」


結月の呼吸が乱れ、胸に手を押し当てた。


「……わたし……

 わたしなんかが……

 助けられること……あるんですか……?」


環は首を振った。


「“わたしなんか”ではありません。

 あなたは……大切なひとりです。

 芦野結月さんがいなかったら、

 この事件の真実には、たどり着けなかった。」


結月は涙を拭い、

震える声で言った。


「……わたし……

 助けになれますか……?」


環はそっと微笑んだ。


「はい。

 一緒に……真実を、取り戻しましょう。」


結月の胸の奥に、小さくあたたかい火がともった。


(……あたたかい……

 ぽかぽかって……こういう……)


柊が最後に静かに告げる。


「あなたのせいじゃない。

 その事実だけは……絶対に変わりません。」


その言葉に、結月は深くうなずいた。


涙は止まらなかったが——

その涙は、少しだけ軽くて、温かかった。



◇◇◇



結月の救済は、まだ始まったばかり。


でも、確かに“第一歩”は踏み出された。

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