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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第14章 JOKERの崩壊 ― 追い詰められた2人の行方 ―

午後4時15分。

リンクル社内の空気は、誰も知らないところで“限界点”へと達していた。


ネットワーク遮断の開始まで——あと15分。


表向きは「メンテナンス」。

だがその裏には、波多野樹はたのいつきの“必死の隠蔽”が潜んでいた。


しかしその手は——既に封じられている。



◇◇◇



[波多野のデスク] ――「逃げる道」が閉じていく


波多野は、操作不能になった端末の前で、ただ呆然と立ち尽くしていた。


(……終わった……?

 いや……まだ……まだだ……!)


震える指で再起動を試みる。

しかし画面には冷たく突き放す文字。


【管理者権限が必要です】


「……誰が……誰がこんなこと……!」


その直後、画面の右下に“青い波形”が再び走った。


波多野は凍りついた。


「……Blue_echo……

 ……桐生きりゅう……蒼真そうま……?」


青い波形は、まるで静かに笑うような軌跡だった。


“追いついたよ”、と。


波多野の視界がにじむ。


(……なんで……なんで、俺が……

 こんなやつらに……)


誰も聞かない独り言が、震えて床に落ちた。



◇◇◇



[給湯室前] ―― もうひとりのJOKER


宮野由維みやのゆいは、ガラス越しに波多野を見つめていた。


(……バカみたい……

 わたし……本気で自分だけが優れていると思ってた……)


プライド。

自信。

傲慢。


そのどれもが粉々に崩れていく音がした。


(……利用されて……

 でも……“気づかなかったのは自分”……)


胸の奥の温度が、冷たく沈んでいく。


そして宮野の中で、ひとつの感情が生まれた。


——悔しさでも、怒りでもない。


(……わたし……どうすればよかったんだろう……)


初めて知る、“迷い”。


ペットボトルの水が手の中でゆっくり温んでいく。



◇◇◇



[アークシステムズ仮設作業室]


―― 4人の視線がひとつに揃う


なぎが報告する。


しゅう先輩……波多野はたのさん、操作不能になりました。

 蒼真そうまさんのブロック、完全に成功です。」


蒼真は冷静に言う。


「遮断開始を止めるなら……今です。」


柊が素早く指示を出す。


「凪。リンクルのネットワーク遮断コマンドのバックアップを取れ。

 蒼真、遮断命令を上書きして停止。

 たまき、リンクル側へ“誤作動の可能性あり”で通達を。」


「了解です!」


凪の指が走り、蒼真の端末が静かに光り、環の声が柔らかく電話越しに響く。


そのなかで、柊だけが無言で立っていた。

静かな目で、誰かを思うように。


(……環の胸を締めつけた“あの事件”だけは……

 繰り返さない)


今回の依頼は「調査」。

しかし柊にとっては、それ以上の意味を持っていた。



◇◇◇



[リンクル社内]


――すれ違う2つの影


波多野はたのがふらつきながら廊下に出ようとしたとき。


給湯室から出てきた宮野と、真正面でぶつかりそうになった。


一瞬、2人の呼吸が止まる。


波多野は顔をゆがめる。


「宮野……お前……

 お前が……!」


宮野はただ、静かに言った。


「……わたし……

 あなたに……利用されただけだったんですね。」


波多野の顔色が変わる。


「違う……!違う!

 俺は……そんなつもりじゃ……!」


「でも……あなたは……わたしを“使った”。

 “自信があるなら、試してみれば?”

 そう言って煽ったのは……あなたです。」


宮野の声は震えていた。

でも、初めて“人としての温度”があった。


波多野は後ずさり、壁に手をついた。


(……全部……バレてる……)


そのとき——。


廊下の向こうから、ゆっくりと3人が歩いてきた。


柊。

凪。

環。


波多野の肩が大きく揺れた。


「お、お前ら……

 な、なんでここに……!」


環は、まっすぐ波多野を見た。


責めるでもなく。

怒るでもなく。

ただ、痛みに寄り添うような瞳で。


「……波多野さん。

 もう……無理に隠さなくていいと思います。」


凪が冷静に言う。


「証拠は全部そろっています。

 あなたはもう、逃げられません。」


柊は静かに告げた。


「波多野。

 終わりだ。」


波多野の膝が折れた。


「……ぁ……ああぁ……」


隣で宮野が、小さく、かすれるように言った。


「……波多野さん……どうして……こんな……」


その問いに応える声は、もう波多野の中にはなかった。



◇◇◇



最後に残ったのは——


環はそっと胸に手を当てた。


(……結月ゆづきさん……

 あなたを責める人は、もういません……)


波多野の崩落と、宮野の気づき。

そのどちらも、環には痛いほど分かってしまう。


凪が環の横に立つ。


「環さん……大丈夫です。」


蒼真が静かに言葉を添える。


「結末は……もうすぐ見えます。」


柊は前を向いたまま、

環にだけ届くような声で言った。


「環。

 お前が気に病むことはひとつもない。

 これは——“あの事件”とは違う。」


環の目に、静かな光が宿る。


(……守りたい……)


3人と1人の天才は、

ついに“真相の扉”の前に立った。


次に向かうのは——

すべての点がつながる 最終ブロック。

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