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美少女おにぎり  作者: 星島新吾
1章 デビルサイド編
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61.まーた悪いことしてるよ、このおにぎり

 そんなわけで、コボルト村とデビルサイドの間に起きたこの戦いは、多くの恨みつらみを残しつつも、魔族と人間が初めて和平を結んだ戦いとして、歴史に刻まれることとなった。

 要はハンバーグさんによるハンバーグ作戦が呆気なく上手くいったということなのだが、これまた毒の混入などもなく乱入者も意外なことにゼロであったことが驚きである。

 完全に戦意を折ったとは思っていないが、それでも人間達にとってもこの式典が意味のあるものだと捉えられているようで、その少しの間だけ我々は人間と心を通わせられたようだった。

 もちろん、人間達のことは実際のところまだよく分かっていない。分からないが、式典が終わり一区切り全員の中でついたことは確かだろう。

 僕達はそれを喜んだ。どちらが先に仕掛けてきたかなんて話題は口に出さず、今はただ終わったことを喜び、ため息をつく。

 コボルト村からは、デビルサイドで死んだ衛兵の肉で、森が回復するまでの間は賄えそうだ、という朗報が入っていた。

 というのもコボルト村では、あれからも怪我や感染症でその後も死者が増え続けたらしく、全体の数が減ったことが原因で、消費が減ったのが理由とのこと。素直に喜んでいいやら分からないが、とにかく未来があることを今は喜ぶべきだろう。

 思いっきり他人事だが、これから先は彼ら自身でどうにかして貰うしかない。結局終わってみると、僕が彼らにできたことは小さなおにぎりを分け与えることと、取られた森を取り返しただけだ。

 力不足を再認識するというか、身の程を思い知ったというか。こういう時にちらつく父上の背中が嫌になる。

 比べる必要はないと分かっていても、親に出来たことが子供の自分には出来ない。そう思うと、なんだかとても申し訳ない気持ちになって、ため息が出てしまうのだった。

 ♢♢♢

 それからしばらく経ったある日、僕のもとに半分になった初任給がやってきた。

 少ないが、僕はそれでも問題ないほど、ちょっとしたおこずかい稼ぎに従事していた。

 というのも、デビルサイドもコボルト村もまだ復興に資源が足りないため、多くの物資が必要になっており、その間に立つことによって隠れて儲けを出していたのだ。

 戦略資源などの横流しということもあり、えーこれまたバレたら大変なことになる悪行だが、皆そんなことを気にしていられるほど暇ではないようで、届けられた物資を血眼になって取り合っていた。

 お互いに不可侵ということで、両者の間に交流が増えたということはないが、僕がそう言うことをしているとどこかから嗅ぎつけた者達が依頼してきたことによって、僕はお互いの町の橋渡しのような役割に収まっていた。



 マーコの提案で始めた商売ごっこが思った以上の利益を出してしまい、罪悪感を持ったその日の昼時。

 宿屋でマーコに今後の話をすることにした。

「旅費も十分に用意出来たので、そろそろ次の復興地点に向かおうと思います」

「それよりアタシの取り分は~? 」

「覚えていますよ。三・七でしょう。…元手もナシに僕に働かせるだけ働かせて三割持って行くんだから、本当にあなたという人は……まあいいでしょう」

 集まった金銀銅のコインを机の上で分配しながら、今後進む予定のルートについて確認をした。

「次はいよいよ山登りです。大陸の真北にあるデビルサイドから見るとちょうど内陸の方へ進むことになりますね」

 金のコインを地図の上に置いて内側に進める。その先にあるのは、ボヘミア大陸に存在する三つの山脈の内の一つ、トロル山脈だ。

 名前の通り、分厚い苔の皮を持つトロル族が多く住みつく山脈だが、場所によっては人間が済む地帯もあるという。

 またその地域のいざこざに巻き込まれるような気がしないでもないが、それも含めて復興作業ということだ。

 それと、ココからトロル山脈までに何カ所か古の魔族が住む土地があるためソコに立ち寄って欲しいとの連絡も来ている。

 古の魔族とは、隠居している力を持つ魔族のことだ。

 年齢もピンキリだが、聞いた話では千歳とかもいるらしい。

 大体五十倍の生を生きているワケだが、そこまで歳が離れるともはや言葉が通じるかも怪しい話だ。

 耳とか遠くなっていないと良いけれど。

「ちょっと寄り道したいんだけど」

 マーコが始めにそう切り出した。彼女の提案は今のところ、僕にとって厄災にしかなっていない。

「理由によります」

「これからずっと歩くことになるんでしょ? だったら戦亀が必要じゃない? 」

 戦亀…なんだか懐かしい響きだ。この町にはあの戦亀に乗ってやってきたのだ。炭焼き職人の皆は元気だろうか。町で活動してたのにあれから一切姿を見ていない。死体も上がってきていないのを見るに、元の森に帰ったのだろうか? 

 ……ともあれ、戦亀の重要性は確かに分かるつもりだ。長いルートもあれなら楽に移動できるだろう。

「戦亀の牧場が近くにあるんだ。そこに行って戦亀を買ってみない? 」

「魔族の間だと戦亀は結構な値段しますよ? 」

「アタシ達だってそんな簡単に買えるもんじゃないよ。貴族の乗り物ってイメージ。ウチは炭焼き職人に貸してる一頭だけだし。あっ、でもちょうどおにぎり小僧が稼いだお金と同じ額で戦亀が買えるかも」

 娼婦でもこの町の戦亀事情に詳しいんだな…人間の情報網侮り難しである。

「えっ? 割り勘では? 」

「いやいやいや。アタシの顔と体は今となっては維持するのにとてもお金がかかるようになってしまったのです。誰かのせいで……およよよよ」

 片手は頬に置き、もう片方の手で下から掬い上げるように胸を抱えるマーコさん。

「それほど使い道ありました? 」

「あったよ! もう、神父様とかこの魔性のメロンにメロメロだったよ? 」

 かといって、彼女がボディに振り回されているのも何となくわかった。僕のようにすぐに新しい体の感覚を掴むようには出来ていないのだろう。

「戻しますか」

「えっ? いいの? あ、でも顔だけはそのままが良いかも…? 」

 頷いて皮娘を呼んだ。要件を伝えると、皮娘はすぐにマーコを眠らせて手術を終わせるとすぐに帰っていった。激務だったらしく、挨拶もまともに出来なかったのが悔やまれる。

 しかしおかげで、マーコは完璧な状態で前の体に戻ることが出来た。ベッドで眠る彼女は、服の上から分かるほど胸はぺったんこになっていた。お尻も背中の延長線上にあるかの如く小さい。アバラは浮いていて、太ももは悲しいほどに貧相で足の長さがその分目立った。

「お、起きましたか? 」

 牝牛ボディから元の体に戻った彼女は、起き上がって消えた自身の胸を真っ先に撫でた。

「短い間だったけど、私の夢はここにあったんだ。ありがとう。おっぱい」

 スカスカ、と手で胸の辺りの虚空を擦りながら、彼女は小さく笑う。立ち上がった彼女は風にとんでいきそうなぐらい全体的細くなっていて、木の幹につく小枝のようだった。

「私の体、こんなに軽かったっけ」

「皮娘は人間の体に関して言えばプロです。間違えるワケがないので安心してください」

「ちょっとは…あったもん…」

 マーコの手は胸の位置から離れなかった。僕からしてみれば、膨らんでいたというよりむしろ凹んでいたような気がしなくもないが、きっと思い違いだろう。

「次からは有料で皮娘に取り次ぎますよ」

 そう言うと、彼女はしばらく考えて首を振った。

「ううん。やっぱ無くていいや。軽いのが一番」

 仰向けに寝そべりながら、「苦しくなーい」と言って喜ぶマーコ。体で相手を誘惑できなくなった以上、より彼女の頭に仕事をして貰わなければならなくなった。

「より一層の頭脳労働に期待します」

「まー、任せてよ。胸にいってた栄養で頭を回すからサ」

 ベッドの上で肘をついてコチラを見るマーコ。まあ彼女なら大きな胸がなくとも問題なく働いてくれるだろう。それはそれとして、マーコの胸で思い出したが、あの教会下の謎がまだ頭の片隅に残っていた。

 あのスケベな神父様が隠していた地下は、一体どうなっているのか、この町を出る締めくくりに見ていくのも良いと考えた。

「はぁ、そうでしたか…? ……そういえば話は変りますが、教会の下、一体どうなっていたんでしょうね」

 するとマーコも、「あ~町を出る前に見ておく? アタシも気になっちゃってさぁ」と言ったので、もう一度訪問してみることにした。



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