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美少女おにぎり  作者: 星島新吾
1章 デビルサイド編
58/64

58.ハンバーグさん

 牢屋の前に立つと、ハンバーグさんは諦めきったような声で、「今日が処刑の日か」とだけ言った。どうやら地下牢にまで情報は届いていないようだった。

「ハンバーグさん、貴方は死にませんよ」

「………? 」

 地下牢に浮かぶ困惑顔。ハンバーグさんは何が起きているのか、まだ分かっていないようだった。

「ある提案者によって、貴方の助命嘆願(じょめいたんがん)が大規模に行われたんですよ。町の八割以上の名前が書かれた署名が集まりましてね。死刑執行は取りやめることとなりました」

 そう言うと、鎖に繋がれたまま男は静かに涙を(こぼ)した。

 凄く嬉しそうだ。

 まあそうだろう。

「そう…か、あの子がやったんだな……」

 しみじみとしながら、ハンバーグさんはそう言った。鎖を外しながら「よかったですね」と声をかける。

 男の脇に手を回して立ち上がらせると、ふとハンバーグさんの言ったことが気になった。

 あの子がやったんだな……あの子? あの子とは一体誰だ?

 まるでその言い方じゃあ、事前に誰かがこの事態になるように仕向けたみたいに聞こえるが。

 …発狂しているようにも見えないし、実際地下牢にやってきた人物から死刑執行を阻止する話をされてたと考えるのが妥当に思える。カマをかけてみるか。

「……その子が会いたいそうなんですが。立てますか。今はちょっと暗いのでどこにいるかは知らないのですが。僕も改めてお礼がしたい」

「あの子にお礼を? 」

「えぇ。それはそうでしょう。おかげで助かったわけですから。よかったですね、ハンバーグさん」

「いえ私の名は……いや………ハンバーグが気に入られたのですかな」

「そうなんですよ。魔族である僕もハンバーグはとても美味しいと感じました。アレは間違いなく発明ですよ。素晴らしい」

 そんな談笑の裏でも、ずっとあの子とは一体誰なのかが気になった。

 なんだ? 僕は何かを見落としている…? いやいやいや、署名活動を提案したのは僕だ。誰かに指示されたわけではない。僕自身彼が有能だから助けても良いと判断したからだ。

 だから……いや……そういえば判断したのは、マーコがそう説明したからだ。というか、そもそもマーコがいきなり領主の死刑執行を止めたいと言い始めたタイミングもおかしかったように思える。

 その考えが初めからあったなら、あれよりもっと前に言うタイミングはあったはずだろう。

 …そうしなかったという理由から導き出せる答えは一つ。

 マーコは誰かに指示を受けていた。コレだろう。

 ハンバーグさんに連れて行って貰えれば、それが誰だかわかる。もしマーコの助言者なら今後もいい策を思いつく人間に違いない。

 そういう人間は食用ではなく、魔族に格上げして僕の部下にしたいところだ。

「さぁ行きましょう。恩人探しに」

 よろよろと立ち上がるハンバーグさんに手を貸しながら、牢の外に出る。服も綺麗なものに着替えたら町へ出発だ。一体誰がこんなに面白いことを思いついたのか、とても興味がある。早く見つけ出さなければ。





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