48.後始末。読む必要があるのは最後の2行だけ。
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デビルサイドの兵舎のとある一室。他の部屋とは揃えられた豪華な部屋で、対面で二人と一体が顔を合わせていた。
「え~と…なんでアタシがここに? 」
マーコが真剣な表情で隣の僕に聞いてきた。
なぜって、この場に魔族しかいなかったら話の流れが良くない方向に流れそうだったからとしか言いようがない。
蜘蛛糸で引きずられていく道中で、次いでに引っ張って来て貰ったのだ。
「貴女は彼女の推薦でココにいて貰っています。大変聡明な御方のようで」
アラーニ閣下はそう言って、触肢の一本を彼女に差し出された。握手を求められておられるのだろう。マーコにそれを教えると、彼女は不思議な顔をしながらその蝕肢を握った。
「ツルツル…」
感触をボソリと呟くマーコに、アラーニは嬉しそうに笑った。
「初めて人間と握手をして貰いました。うれしいですなぁ」
大体の人間はアラーニ閣下を見ると、正気を失うか意識を失うかのどちらかを選ばされる。そうでない人間からは敵意を向けられてきたのだろう。
脳を弄って恐怖をコントロールしているとはいえ、マーコはちゃんと人間だ。
もしかすると、魔王軍の中で初めて人間と交渉するのがこの方になるのかも知れない。
そう思うと、歴史の一ページを見ているような気がしてなんだか少し緊張する。
「こんな豪華なお部屋でお話と言いますと、アタシの心当たりから言って降伏宣告ぐらいしか思いつかないんですが、それであってます? 」
「ええ。お話が早くて助かります。コチラが提示する条件になります」
アラーニ閣下は部下の兵士に持ってこさせた書面は、事前に宿屋で僕が書いたものをベースに書かれたものだ。
その内容をマーコは上から読んでいき、いくつかの確認として質問をし始めた。
「あのぉ……」
「なんでしょう」
「この、町の外に駐屯上を作るというのはどういった規模のものを想定されていらっしゃるのでしょうか」
マーコが始めに質問をしたのはこの町の防衛についての質問だった。
現在デビルサイトには防衛力となる衛兵が消えさり自衛力がない。そのため魔族がその自衛をすることになったのだが、その施設をデビルサイドの近くに建設するという話だった。
マーコはその規模によっては、町の人間に余計な不安を煽るのではないかという話をアラーニ閣下にした。
「この町を外側から守るにはこれが一番です。どうかご協力をお願いしたい」
「具体的にはどのような? 」
「食料の補給と、治外法権が主になります」
「その、治外法権というのは? 」
「あなた方の町の近くで魔族が罪を犯しても、我々に引き渡していただくというものです。もちろん、我々がそのようなものは法に則り裁くのでご心配なさらず。これはあくまでも不公平感をなくすための処置とお考え下さい」
アラーニ閣下はそう言うが、マーコはとても嫌そうな顔をしていた。宿屋での会話ではこのような話はしなかったが、当然と言えば当然の処置だ。
「……分かりました。次にこの警察隊の導入というのは? 」
「町の治安維持のため、一定の力を有する人間に監視をお願いしたいと考えています。選考基準は追って連絡しますが、衛兵の代わりと考えて貰って結構です」
「最後にこの……町の税金の全額免除というのは……」
「文字の通りです。税金というシステムは人間が増える上で不要なシステムだ」
「富の分配をするのに税金は最も効率的なんじゃ…」
「富の分配はしなくて結構ですよ。ぜひ、富の格差を広げていただきたい」
マーコは閣下の言葉を受けてしばらく放心したかのように集中すると、目頭を押さえた。
富の格差が広がれば、極端に治安のいい場所と悪い場所が生まれるということだ。もしそれで犯罪者が多くなれば、一体誰が得をするのか、マーコが分からないワケがなかった。
それとこの税金制度の案はクロックドムッシュがしたらしい。おじさんは僕の話を聞いた時に、パッとそれを思いついたようだ。
僕は今年入隊したから税金とかはまだ払っていないが、きっとこの税金というのは凄いんだろうな。どのくらい凄いのかよく分からないが。
「また、旅人や移民を今以上に積極的に受け入れるようにしてください。よろしいですね」
「元々そうやって出来た町ですから、それは問題ないと思います」
マーコはそう言いつつ、「なんで私がこんなこと……」と小さくぼやいた。
本当にそれはそうなんだけれど、今この町の命運を握っているのは君であることは間違いないから、頑張って交渉してもらいたい。丁度不安感とかも取り除いている君にしか出来ない仕事だ。これが僕だったら閣下の圧に負けてイエスマンで終わっていただろうし、他の者ではそもそも交渉の席にすら立つことすら許されない。
「結構。それと他にして貰う政策についてですが……」
アラーニ閣下はドサッと書類の束を部下に持ってこさせて、その全てに了承の印を押していく仕事をマーコに委ねた。ここの反論は許さないという閣下の強い意志を感じ、マーコは渋々それを了承せざるを得なかった。
そうして会議も終盤に差し掛かってきた頃、部屋に一体の魔族が鎧を着たまま入ってきた。
「緊急の案件で、閣下にお話しがあります! 」
「落ち着け。…ゆっくりでいい。誰かこの者に水を持ってきてやってくれ」
差し出された水を飲み干して、呼吸を整えた兵士が述べたのは閣下どころかこの部屋にいる全ての者を驚かせた。
「森に向かった討伐部隊が全滅……しました」
オーマイガー、パオンさん貴女強すぎです。




