表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女おにぎり  作者: 星島新吾
1章 デビルサイド編
16/64

16.コボルトの森へ

 コボルトの少年から逃げるようにダンジョンの外へ出ると、辺りは既に暗くなり、魔物の時間に様変わりしていた。

 そして母方の血が影響しているのか、僕もまた朧月(おぼろづき)の力に当てられていた。

「夜に冒険者はいないかも知れないけれど…ネオプロンを狩るには丁度いい時間帯だな」

 森へネオプロン狩りに向かおうと考え、魔王様にデポットリングで連絡を入れる。

 すると、椅子を()って立ったような物音が聞こえた後に、

「予も同行しよう」と、(おっしゃ)られた。

「流石にそれは難しいのでは…」

 万が一にでも()り傷などされては大変だ。それに徹夜(てつや)なのでは…?

(けい)は実技試験の成績もソコソコよかったと聞いているが? 」

「まぁ…それなりには」

 魔王様、そんなことを言ったって試験は試験ですよ?

 実践経験の浅い新兵に護衛を任せるなんて……いや、そうか。

 なるほど…なんて思慮(しりょ)深い方だろう。

 ……魔王様は今、自身を使って僕に護衛の経験を積ませてくれようとしているのだ!

 …でも、だからと言って…うーん。

 どうすれば思いとどまってくださるだろう。

「というよりなぜ僕の成績を? 」

「これでも有望株には目を通しているつもりだ。それと(けい)()の士官学校での成績を知っているか」

 なぜそのようなことをお聞きになるのだろう…勿論知っているが。

「実技や勉学で比肩(ひけん)する者がいなかったと聞いております」

 そして在学中の伝説的エピソードは数知れず。

 まだ名もなき魔族の一人であったこの方は、戴冠前(たいかんまえ)からその異才(いさい)を発揮しておられたと聞く。

 僕とは入れ替わりで卒業されたため、その御姿を拝見(はいけん)することは叶わなかったが…。

「ならば怯える必要もあるまい。それに此度(こたび)の狩りは王と臣下で行うのではない。先輩と後輩の関係なのだ。よいな」

 かなり無茶のある言い訳だが、魔王様がそのように望まれるならば、自分はいつでも後輩になろう。

「かしこまりました、先輩」

「堅苦しいのも無しだ。昔遊んでやった時はもっと軽いノリだっただろう」

 恐らくは僕が五歳かそこらの時のことを仰っているのだと思われる。

「いえ、その時の僕のことはどうかお忘れ下さい。子供でしたから」

 十年以上前の話だ。五歳と十七歳では蓄積した偏見の数も、視野の広さも違う。

「フフッ、今は違うと申すか」

「あまりからかわないでください」

 そんなやり取りがありながらも、押しの強い魔王様は強引にゲートを僕の前に開いて、やってくると、森の中へと歩いて行くのだった。

 ♢♢♢

 コボルト村から東に行くと針葉樹林が果てしなく続くコボルトの森がある。

 地面に生える草は低く、木の枝も高い位置にあるため視界の確保がしやすい。

 夜目も利く魔族にとって、とても安全な狩場と言えた。

 空を見上げれば、満点の星空がどこまでも広がり、明滅(めいめつ)を繰り返している。

 ダンジョンの中にいたからか、森の中はより一層空気が澄んでいるように感じられた。

 ただ、一つあるとすればとても寒いということだ。

 防寒対策も出来る軍服でも無ければ、足から伝わってくる冷気に耐えかねてダンジョンから出られないところだった。

 しかし、そんな場所でも魔王様は元気ハツラツだ。

「能力で狩りをするのも良いが、少し趣向(しゅこう)を凝らしてみようか」

 今日寝なかったらニ徹(にてつ)の魔王様になってしまわれるというのに…、我が王はとてもエネルギッシュであらせられる。

「例えば…どのような物でしょうか」

 そう聞くと、魔王様は星空の下、何もない空間に腕が通るほどの小さな穴を開けられると、その中から弓を取り出した。

「ヘーゼルの木で作った弓だ。あまり遠くを狙うことは出来ないが、ネオプロンを狩る程度ならばちょうどいいだろう。ほれっ」

 素朴な弓と矢の入った矢筒を投げられた。

 確かにコレだとあまり飛距離は期待できそうにない。ゲームとしては面白そうだ。

「狩った獲物はポータルで村へ送るから、重量は気にするな。好きなだけ狩るといい」

「はい、魔王様」

 そう返事をすると、魔王様は長い髪を掻き上げ、その手で海苔(僕の頭頂部)を撫でてくださった。

 ♢♢♢

 筋力も俊敏性(しゅんびんせい)も魔王様は全てにおいて完璧なため、まず出会った生物全てが魔王様から逃げることは出来ない。

 だからと言ってこの寒い中歩かせるのもどうかと思い、足になることで魔王様の足をお守りすることにした。

「食後変化の術―――ケンタウロス小僧」

 上半身は人間の姿で、下半身は馬の胴体と四肢をもつ魔族に姿を変える。

「さぁ。魔王様。どうぞ私の背に」

 ワクワクしながら、今か今かと待ち望む。

 けれど魔王様はいつまで立ってもお乗りにはならなかった。

 …なぜだろう。

「脱ぎ捨てられたおにぎりの体はココに置いていくつもりか? 」

 頭がパッカーンして、中からケンタウロスが出てくるため、当然僕の元の体であるおにぎりボディは白目を剥いて横たわっている。

 元の体に戻るには当然そのボディも必要だが、時間も経って劣化していたし、替え頃だろう。

「そろそろ交換を検討しておりましたので」

「…卿がそれでいいなら何も言うまい」

 なぜだろう。少し魔王様に引かれたような気がする。新しい体を作るのは、おにぎり族なら当たり前のことなんだけどな…。

 それにやっぱり背中にも乗って下さらない。

「いや…やはり、元に戻れ。()(けい)と話がしたいのだ」

 魔王様の言葉で、急ぎおにぎり小僧に戻った。ケンタウロス小僧なんていなかったのだ。そもそも、この静かな森の雰囲気にケンタウロスなんて無粋なのである。魔王様がそれを教えてくださった。

 それにしても、魔王様からそのようなお言葉を直接いただけるとは…。

 今なら陰る月の力もあってか、一度くらいなら死んでも(よみがえ)れそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ