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ソルスストーリー  作者: シフルキー
序章
5/16

国とは。戦争とは。

神々の対立から数千年、

この大陸の中心にはその戦いによって生まれた大きな穴があり、

大穴の周囲と大陸を2つに分ける山脈が広がっている。

噴き出した土砂がその周囲に降り積もって出来上がったのが

この大陸であり、自分たちの暮らす大地である。


「ここまでは誰でも知ってるな?」

コードは3人に確認するように聞いた。


もちろん知っている。

ここまでは伝承として各地に伝わり、

どんな英雄譚や冒険譚でも、この世界の全ての物語はここから始まる。


穴はもちろん見たことがないが

山脈はかつて3人の暮らした村でも、今いる町でもすぐ側に見ることができるので

見慣れたものであった。


「もちろんその話は知ってるわ。」

ソファが答え、マウロとデイルもお互いに頷きコードに続きを促した。


「物語や伝承にも出てくるだろ

国と国との戦い…戦争ってやつだよ

この国と隣のオロディアって国が戦争になるかもって話だ。

まだ分かんねぇが、今聞いた話じゃ

攻めてきたのがオロディアで、攻められるのがこの国だな。」


ソファがコードにエールのおかわりを渡しながら

「最初からで悪いんだけど、教えてくれない?

私たち、この国って言われても何も分からないの。」

エールを受け取ったコードはソファの言葉に驚く事もなく答えた。


「んなこと分かってら。

そもそもオロディアもそうだが、この国も他からみりゃ十分変わってんだ」

そう言いうとエールを飲みながら話を続けた。


「そもそも国ってのは簡単に言うと

領土っていうこっからここまではウチの縄張りだってのがあるんだ。


お前らの村とこの町の間にも何となくあっただろ?

『この辺から向こうが町で、ここまでは俺たちの村だ』みたいな目には見えねぇ境目がよ。

それの規模がデカいやつが国と国との縄張りの境目なんだよ。

でだな、そこに住むヤツらが生きていけるように

仕組みやなんやらを管理してるってわけだ。」


言われてみて3人も何となくは理解できた。

確かにあの川より向こうは隣村だとか、あの森から向こうは行くなとか

自分たちの生きてきた中にも、何となくの境目はあった。


「この国が変わってるってのはどういう事なんだ?」

デイルが目を丸くして尋ねた。


「誰かが住んでて、縄張りがある。そこにはリーダーがいるだろ?

村じゃ村長とかか?国だとよくあるのは国王だな。

この国にももちろん国王ってのはいる。

国王のまわりにはその一族や

取り巻きの偉そうなやつらがいて、国のルールや住民の管理をするもんだ」

エールを一口、ツマミを口に入れながら


「この国が他と違うのはよ

ルールはある程度あるんだが、他の国みたいに管理ってのはしてねぇんだ

ここで生活してるやつにもとやかく言わねぇ。

他から流れてきても気にしてねぇ。もちろん出てってもな。

税も取らねぇし、好きに暮らしてりゃいいじゃねえかってのは

国じゃねえ。ただ村や町が集まってるだけだろ?」


「コードは俺たちと同じでこの国に住んでるの?」

今度はマウロが何気なく聞いた。


「今じゃ俺もそうだし、このギルドのヤツらだって大半はそうさ

この国に家があって、家族だっているヤツはいる

国民って意識はあるのか知らねぇが、

他の国から来たヤツらなんかは特に今はこの国の国民のつもりだろぉぜ」


「でもそんな曖昧な国なら今までも今回みたいに戦争ってなかったの?」

真剣な表情でソファが尋ねた。


「国が出来た当時はあったさ。

この国はな、今の国王が作った国で、まだ出来て20年も経ってねぇんだ。」


この言葉に3人は言葉を失った。

自分たちの住む国は、自分たちより少し年上という程度だったのだ。


「この国に元々住んでたヤツらや、俺たちみてぇな流れて来たヤツ。

そんなのもひっくるめて、周りの国に王様宣言したのがここの国王様さ。

この辺は別に資源も何もねぇ、国と国との空白地域だったからな。

元々住んでるヤツらにしたって

国が出来たからって変に何かを押し付けねぇ

何か問題起きたら呼んでくれれば手ぇ貸すぜって言われりゃ

別に気にしてないみたいだしな。

実際お前らもそうじゃねぇのか?」


確かにそうだ。

今まで暮らしてきて、国がどうとか考えたこともなかった。

たまに近くに魔物が出たりして危なくなると、

誰かが町に走り、助けを呼んできた。

後でそれがギルドのハンターだと知り、マウロとデイルもそれに憧れ今ここにいるのだ。


「ちょっと待って。

確かにそうだし、色々聞きたいことも、納得できたこともあるけど

じゃあ何故今になって隣の国は攻めてくるの?」


「今までのが国ってのは何か。この国は何なのかの答えじゃねぇか。

とりあえずお前ら、やっと話のスタートラインについたんだよ。」


「こっからが本題だ。

オロディアってのは、この国なんかよりずっと前からある国だ。

今まではこの国に対して何も言ってこなかったし、

何もしてこなかった。別に何とも思ってなかったんだろうよ。


ただこの国にはな、あの山脈の向こう側へ行けるかも知れねぇ洞窟があるんだよ。

今までは遠くにある西の帝国の方にしか確認されてない洞窟がよ。

山脈の向こう側には、こっち側じゃほとんど見たこともない鉱石や貴重なもんが

うじゃうじゃあるって言うしな。

だから帝国ってのは広大な領地に装備の整った軍隊があって

こっち側にどんどん領土を伸ばしてるんだ。

その洞窟がこの国にもあるかも知れないなら狙ってくるのは分かるだろ?」


初めて聞く話ばかりでマウロとデイルは話についていくのが精一杯だ。

「どうしてそれが分かったの?」

ソファはそんな洞窟の存在もそうだが、

何故それが隣国に漏れたのかも分からなかった。


「ギルドから漏れたんだろ。別に隠してねぇしな。

この国に来るヤツらは大体その洞窟に潜っては返り討ちになって帰って行く。

色んな情報や噂があって、それがたまたまオロディアのお偉いさんの耳に届いた

こんな所だろうぜ。」


「じゃあその洞窟を寄越せって言ってきてるのか?」

マウロは細かい部分は分からないが、洞窟が問題だと言うのは分かったようだ。


「簡単に言や、そうさ

何もないと思っていた場所が、実は宝物への道筋かも知れねぇ。

入り口には気付いたら国みたいなモンが出来てるが、

別に他の大国とくっついてる訳でもなさそうだ。

なら今のうちに潰して奪っちまえばいいじゃねえかってな。」


「そんな簡単に考えていいものなの?」


「簡単さ。

戦争ってのはキッカケはそんなもんだぜ。

子供同士の喧嘩みてぇな理由から始まるんだ。

あれが欲しいだの、あいつの口ぶりや考え方が気にくわねぇってな」


「じゃあ、俺たちは…この国、国王はどうするんだ?」

デイルが口を開いた。


「戦うだろうよ。

こっちが先に見つけたんだ。

子供みてぇな言い草だが、早いもん勝ちさ。

それに向こうが先に手を出してきたんだ。

そのウラさえ取れりゃ、すぐにでもやるだろうよ」


「お前らがどうするかはお前らが決めりゃいい。

この国はここに住んでるヤツらに危害が及ぶなら守るし

ギルドなら安心だ。

一緒に戦うってんなら、もうすぐギルドから依頼が出るさ。」


「どうしてギルドから依頼が出るの?」


「戦争になるならだがな。

この国はな。ハンターが作った国なんだ。

他と違って軍隊なんか無ぇ。

ハンターは依頼が無いと動かない。

だからギルドから依頼がでるのさ。」


一通り話を聞いて、理解できない部分がありながらも

ギルドから依頼が出ると言うなら、とりあえずその時には説明があるはずだと3人は話し

すっかり冷めてしまったテーブルの上の料理に手を出し始めた。



「コードさん、今日は色々ありがとうございます。」

ソファは改めて礼を言うと

「気にすんな。

俺は話ししてるのが好きだしな。

戦うとは言ったが、俺は戦闘の役には立たねぇ。

一緒にいる時に戦闘になったら、お前ら今の礼で俺を助けるんだぞ。」


真剣な表情でそういうコードがおかしくて

3人はそんなコードをからかいながら、少しづつ緊張が解けていった。


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