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ソルスストーリー  作者: シフルキー
序章
1/16

冒険者登録、出会い

静かな村の朝、太陽が昇るとともに、ソファは目を覚ました。

今日は特別な日だ。

先日16歳になったことで成人の儀式を終え、

友人たちと一緒に冒険者ギルドに登録する日であり、

恐らく初めての依頼を受けることになる。

彼女は自分の髪を整え、軽やかな気持ちで家を出た。


「ソファ、早く行こうぜ!」

「今日からハンターなんだから

髪の毛なんかイジってるんじゃねーよ」


村の広場で待っているマウロとデイルの声が聞こえた。

彼らはいつも明るく、村では悪ガキだが彼女の心を和ませてくれる存在だ。

ソファは微笑みながら、彼らの元に駆け寄り

「お待たせ~!」

一言だけを告げてソファは2人の仲間と共に町の冒険者ギルドへ向かう。


近くの町ギルドは、年季の入った大きな酒場のような建物だ。

壁には多くの依頼書が掲示され、

集会場なのか食堂なのか、いたるところで食事や酒を楽しむ冒険者たちの喧騒を横目にしながら、

緊張と期待が両交じりの中、冒険者の登録手続きを始めた。



= 冒険者登録(ハンター登録) =

試験の内容はシンプルだ。

簡単な体力テストと、モンスターについての知識を問われる問題が出題され、

最後に訓練所でギルドが捕獲したゴブリン3体とのパーティー戦を終え、

無事合格となり、あっさりとハンターの証を受け取った。



「これで私たちも正式なハンターね!」

ソファたち3人は喜びを爆発させた。

ギルド内の他のハンターたちもその声に気付き、

新たなハンターたちの誕生を祝い、杯を掲げる。


早速ソファたちは低ランクの依頼を受けることにした。

『森の中で野生モンスターの調査、可能であれば討伐』


近くの森は危険度も低く駆け出しのパーティーにうってつけの依頼だ。


「行こうぜ!初仕事だ!」

初めての依頼に心躍ったマウロの言葉に、全員が頷きギルドを後にした。


森に足を踏み入れると、大きな木々や小さな花々、

危害のない様々な動物やモンスターに目を奪われながらも、ソファは仲間たちの後をついていった。


ハンターや一部の者を除き、立ち入り禁止の森で見る自然の美しさにソファは感動し、

こうした冒険がずっと続くことを願った。


しばらく進むと、視界の隅に動く影を捉えたマウロが先頭に立ち、

鋭い目つきで周囲を警戒する。


「何かいるかもしれない、注意しろ!」


彼は小声で言った。デイルは短剣を構え、ソファは杖を握りしめた。

すると、道の先から小さなゴブリン2体が現れた。

3人の目はその姿に集中する。


「野生モンスターだな!

試験と同じゴブリンだ。問題ない!俺が行く!」


デイルは短剣を持ってゴブリンに向かって突進した。


マウロは、デイルの横でサポートに回り、敵の動きを封じるように試みた。


「こっちだ!」


マウロが叫び、巧みにゴブリンを足止めする。


ソファは距離を保ちながら、杖を掲げた。


「ケガしたら治癒魔法を使うから、頑張って!」


彼女の言葉は仲間に安心感を与え、

デイルとマウロはより勇敢に戦うことができた。

ゴブリンはデイルに向かって襲いかかるが、

彼は素早くそれを躱し、反撃の一撃を与えた。


「いける!当たるぞ」


デイルが喜びの声を上げる。


マウロも機を見ながら攻撃し、ゴブリンは次第に追い詰められていく。


「いけるぞ、こっちは倒した!」


マウロの言葉に、デイルは短剣を構え、一気にゴブリンに連撃を浴びせる。

ゴブリンは悲鳴を上げて地面に倒れた。


「よし!初勝利だ!」


デイルが叫ぶと、ソファは拍手を送った。


「私の治癒魔法出番なかったじゃん」


そう呟きながらソファは2人の様子を見て、

この先もこの程度なら初仕事は上々に終わりそうねと安堵した。



しばらく歩くと、彼らは目的の地点に到達した。

しかし、そこで異変が起こった。

突然、彼らの目の前に中級モンスターのオーガが現れた。


「オーガはまずい!逃げよう!」


デイルが叫ぶ。


彼らはパニックに陥りかけながらも、

他の個体がいないか、逃げ道はどちらか周囲を見渡した。


オーガは1体のみ。

しかし、オーガはすでに彼らに向かって突進してきていた。


「ソファ!早く逃げろ!」


マウロが言うが、ソファは恐怖に押しつぶされそうになっていた。


彼女の心に不安が押し寄せる。

恐怖で足が動かず、攻撃手段を持たない自分はどうする事もできない。


「どうして?私は何もできない…」

心の中で呟きながら何とか逃走の為に振り返った。


その時、森の奥から一筋の影が現れたのにソファだけが気付いた。

見知らぬ男性が、颯爽とこちらに向かって走り込んで来る。


彼は一直線にこちらにむかいながら、ソファと目が合うと


「新人か?おめでとう!」


ソファは予想もしない言葉に逆に冷静さをとりもどした。


(今おめでとうって?すぐそこにオーガがいるのよ?)


彼はそのまま躊躇いもなくオーガに接近すると、なんと素手で見事に撃退した。



ソファたちは呆然とその様子を見つめるしかなかった。


「す、すごい…素手でオーガを…」



一撃でオーガを倒した彼は、彼女たちの方に振り返った。


「大丈夫か?ルーキーがオーガ討伐とか引き受けんなよ。

ギルドから止められなかったのか?」


半ば呆れた声で問いかける。


「いや…依頼はただの森の調査で

オーガはいきなり出てきたんです!

…あなたもですが…あなたは…誰なんです?」


マウロが尋ねる。デイルもソファも同じ疑問を抱いていた。


「仕事帰りのただの通りすがりのセンパイだよ。

オーガの声が聞こえたから来てみたらお前らがいたんだ」


彼は微笑んだ。


その笑顔にソファは安心感を覚えた。

助かった。彼のおかげで自分たちは死なずに済んだのだ。


「じゃあな。楽しめよ」


突然のオーガの襲来、いきなり颯爽と現れ、会話らしい会話もなく去った彼。


「何だったんだ?」


誰もその問に答えることは出来ず、今の出来事を整理しようとしていた。






何とか依頼を終えたソファたちは、無事にギルドへ戻る道すがら、彼のことを話題にした。


「あの人、すげぇな。いつかあんな風になれんのかな」


デイルが言う。


「とりあえずギルドに戻ってあの人の事を聞いてみようよ」


ソファの意見にデイルもマウロも同意した。


ギルドでは突然のオーガの出現、撃退はしたが自分たちではないと

起きた出来事をそのままを伝え依頼の結果を報告した。


報告を受けた受付嬢は


「初めての冒険、初めての勝利、生還ありがとうございます!」


祝福の言葉とともに、依頼報酬の清算手続きの間

とりあえずギルドの酒場に座り、軽い打ち上げをすることになった。


「お~う!初仕事達成だって?生還すりゃ勝ちだな!」


エールを持ったスキンヘッドのハンターが

気兼ねする様子もなく隣の席に座りツマミを横取りしながら話に加わった。


「とりあえず生きて帰ってくることが大事なんだ。

依頼の達成なんてのはルーキーのうちはおまけみてぇなもんだ」


ソファは突然の乱入者に戸惑いながらも今日あった出来事を話してみた。


オーガを倒した人物について聞いてみようとすると


「そりゃあここの名物オヤジだな。もう少ししたら顔出すと思うぜ」


「オヤジ?そんな年齢ではなかったような…」


ソファの想定では30台半ば程度の中堅かベテランハンターというところだった。


「愛称みたいなもんだよ。なんて呼んだってここらのギルドじゃ通じると思うぜ」


そう言いながら周りにいたハンターの誰に言うでもなく声を上げた。


「お~い!このルーキー達オーガに襲われてるところオヤジに助けられたんだってよ」


「へぇ~、そりゃあ運が良かったな」


「オーガなんて森の方にいたか?」


「今日はおっさんまだ来てねぇぞ」


口々にギルド内のハンターから返事が返ってくる。

その中の数人が同じようにソファたちのテーブルを囲んで酒盛りを始めた。


ギルドの酒場のイメージを何となくは知っていたが、

どこもみんなこんなにフレンドリーなものなのか?


戸惑いながらも今日の出来事について、

『おっさん』や『オヤジ』と言われる人物についても聞いてみた。


名前はイツカ、愛称は数えきれないほどあるらしく大体どんな愛称でも伝わるらしい。


ギルド所属のA級ハンターであること。


決まったパーティーには属さず、かと言ってソロ専門というわけでもないらしい。


そんな話をしながらテーブルの上のツマミが切れそうだったので追加注文をしていると

スキンヘッドの男が入り口に向かって声をかけた。


「おいおっさん!ルーキー助けたんならギルドまで送ってやれよ!

名前も知らないってボヤいてんぞ!」


入り口には見間違えようもない、

命の恩人がギルドに入って来たところだった。


「何だよコード。何話してんだ?」


イツカも空いてるイスに腰掛けほぼ食い散らかされたテーブルに目をやると


「セレナ!とりあえず人数分の酒と

てきと~に食い物持ってきてくれ!」


厨房のエルフ属の女性にそう声をかけ話に加わった。


「あの…今日はありがとうございました!」


ソファ、デイル、マウロの3人は立ち上がり深々と礼を述べた。


「いいって、いいって。

たまたま通りがかったとこにお前らとオーガがいただけだ

気にせず座って飲もうぜ」


よく通るが渋い低い声。裏表のなさそうな微笑み。

気付けば周りの冒険者も集まりだしてテーブルは片付けられ

皆車座になりながら宴会が始まった。


何が起きてるかも分からないまま次々と料理が運ばれ、酒が運ばれ、、、、

気付けば大騒ぎになり初日の冒険の記憶はここで途切れる事になった。。


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