第7話 お互いに ~シバside~
第7話です。
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エリシーとハイタッチを交わした後、俺はイミテイト様と自警団へ、エリシーは丁度到着した馬車に乗って別れた。
「ふふふ。きょうだい仲が良いのだね。」
「他がどうなのか分かりませんが、仲は良い方なのだと思います。」
するとイミテイト様が俺にこう尋ねてきた。
「君たちは双子なんだよね?シバ君は・・・上なのかい?それとも下なのかい?」
俺が兄か弟かということだろうか?
俺は冷静に考えた。今まで同い年みたいな感覚で共に過ごしてきたからこそ、どちらが偉いとかどちらが上だとかそういう揉め事はなかった。
俺は悩みまくった末答えに詰まってしまった。
「難しい質問をしてしまったかな?」
「すいません・・・」
俺は下を向きながら深々と謝罪した。
「謝らなくて大丈夫だよ。僕だって、パルとどちらの方が偉いかなんて聞かれたら答えを悩ませるよ。」
イミテイト様は苦笑いをしていた。
俺はその表情を左側から見て、一つ思ったことがある。それはイミテイト様の左目だ。
教科書に載っていた写真にも眼帯をつけていた。学校の先生に何故眼帯をしているのか聞いても教えてくれなかった。今なら聞いていいだろうか・・・
俺はイミテイト様に「その眼帯は・・・何故、付けているのですか?」と質問した。
「ん?これかい?・・・これはね僕がまだ駆け出しの頃、戦いで負った傷なんだ。
その時の傷は深傷で左目は完全に失明したけれど、パルが僕を助けてくれて彼女は僕に右目をくれたんだ。
だから本当は両目とも見えるし眼帯も付けなくていいんだけど、間違って使ってしまうとパルに迷惑がかかるから眼帯をしているんだ。」
右目をくれた・・・?どういう意味だ?
確かさっき見た時のパルヴァティ様の目はちゃんと両目ともあったはず。でもイミテイト様の表情からするに嘘をついているわけではなさそうだ。
俺はますます頭がこんがらがってしまった。
そして暫く歩くと、とある庭園に辿り着いた。そこには何やら武器を持って戦っている人々が大勢いた。
すると一人の男性が俺たちに目線を向けて歩いてきた。
「イミテイト様。ご無沙汰しております。」
「久しぶりだねランブル。ここ数日パルと共に顔を出せなくてすまなかったよ。」
「いえいえ、問題ありませんよ。パルヴァティ様がいずとも、皆鍛錬を怠らず励んでおります。所でそちらの少年は?」
男の名は“ランブル”というらしい。
そのランブルという者は俺に目線を向けてイミテイト様に問いかけた。
その後イミテイト様は俺の肩に手を置き「この子は今日からこの自警団に入団する者だよ。」と告げた。
見知らぬものが急に入団しますと言われたら困惑又は嫌な顔をされる・・・と思っていたが俺の予想は違った。
突然、ランブルが俺に抱きついてきたのだ。
抱きしめる力が強すぎて息がしづらいし、踠いても一向に逃げれそうにない。いくらなんでも怪力すぎる・・・
「いや〜よかった!よかった!ここ数年全然入団者が来なくて寂しかったんですよ!今年は数が多くて嬉しいですよ!イミテイト様!」
「あはは。今年は、面白い神脈の子が多かっただけだよ。これで3人目だったかな?」
「そうですよ!1年で3人だなんて・・・これで少しは自警団が盛り上がりますよ。」
3人目・・・?つまり俺以外に2人いるということか?
俺は首を動かして、辺りを見渡した。当然と言っては当然だが、名前も顔もも知らない人間を探し出すなんて不可能だ。俺は探すことが無謀なことだと思い全力で身を捩られる。
「それよりも・・・シバ君が苦しそうにしてるみたいだけど・・・」
「え?あ〜ごめんごめん」
ようやく解放された・・・。初めてだ、空気をたくさん吸える喜びを味わったのは。
そして突然、イミテイト様がこんな提案をした。
「そういえば君たちは自己紹介もまだだったよね?お互いに挨拶をしたらどうかな?」
自己紹介だ。お互い今初めて出会ったばかりで挨拶すらしていない・・・。
ハグは・・・カウントされるのかは分からないが。
「承知しました。ええと、アトリビュート自警団の副団長を務めているランブルだ。ここ最近はパルヴァティ様の代わりにこの団を仕切っている。」
この人が副団長・・・なんというか、この自警団は思ったよりも堅苦しい感じではないのだろうか。
とりあえず、俺も名乗ろう。
「シバです。出せる神脈は木です。」
次の刹那・・・
「木だと!?珍しいじゃないか!是非その力を見せて頂きたい!」
デジャブだ・・・数時間前似たような光景がまさかここで再来するとは。
「それじゃあ僕は部屋に戻るよ。シバ君。何かあったら僕の部屋においで。」
「は、はい。」
「どうかお気を付けて。」
その後、イミテイト様は来た道を戻り始めた。
「さて、早速だけど俺についてきて欲しいんだ。いいか?」
「はい。」
なんか誘われた。特に断る理由もないしついていくとするか。
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ランブルについて行った結果辿り着いた場所は広い部屋だった。
「さて・・・早速で申し訳ないけれど、君の力を見せてもらおうか・・・」
するとランブルの雰囲気が急激に変わった。
彼はショルダーバッグに入っていたナイフを取り出し構えを取り始める。
「大丈夫だ、殺しはしない。ただ、全力で来ないと痛い思いをするぞ。」
どうして俺は入団初日に戦わなければならないんだ。
と思うのであった。