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Ημίθεος_ヘーミテオス_  作者: 五智噸虞
〜四章 催しの準備〜
44/46

第44話 選抜トーナメント⑤

44話です。

次回から話が進んでいきます。

数十分身体を動かし、俺の準備は万全だ。

武器を粉砕してそこら辺の土に埋め、控え室に入る。

このグループの初戦は俺であるため、俺は服装を整えながら門の前に立った。


「それでは最終グループのトーナメントを開始する!1試合目の選手は入場してくれ!」


その合図と同時に門がガガガと音を立てながらゆっくりと開門する。

対戦相手の神脈以前に名前を知らないため、ほぼ実戦と思って差し支えないだろう。

お互いに遠くから見合う形となり副団長が開始の合図を出す。


「それでは、シバvsユトゥルナ。それでは・・・始め!!」


始めの合図と完全同時に相手が技を出した。


『リスプリージョン 水脈・水天髣髴(すいてんほうふつ)


次の刹那、足場が一瞬にして水面で満たされ、周りの景色は青空で晴れ渡っている。

観客だけでなく副団長の姿もない。一体ここはどこなのだろうか?


「リスプリージョンを喰らったのは初めて?」


「は、はい。」


「う〜んまあいっか!一旦休戦にして解説してあげるよ。」

「リスプリージョンっていうのは・・・めっちゃざっくり言うと神脈で領域を作ることだね。この空間内は使用者によって色んなことができるよ。例えば、ほら!」


ユトゥルナさんが手を挙げただけで足元の水面や空中から水でできた無数の針が生成された。

すげぇ、これがリスプリージョン・・・!!


「ふふふ。そんな表情を見たのは久しぶりだよ!ええっと他にも・・・君の分身を作ることだってできるんだよ!」


「べ、便利ですね・・・でもやっぱりこういう規模が大きめの技ってデメリットがあるんですよね?」

「使ったら数分動かなくなるとか、神脈が使えなくなるとか。」


「まぁ基本的に使い終わったら、急に精神的疲労が襲ってくるね。規模がデカければデカいほど代償も大きくなる。でも人間が筋トレして体力を作る様に、神だって日々瞑想すればデメリットは必然となくなるの!」

「・・・まあ話はこんくらいにしようか。長引かせるとみんなに迷惑かけちゃうし。それじゃあ5秒後に攻撃するから、間合いを取ろうか。」


そして5秒後、俺は左腕に大きめの盾を右手には剣を生成し、地面を思いっきり蹴って距離を詰めた。

案の定足元が鋭い針に変形する。踏んでしまったら足が血だらけになってしまうので、俺は瞬時の判断で天高く飛んだ。しかし、この領域にいる時点で俺は彼女の手の中で踊ってるようなものだ。

背後から水の矢が降り、横からも下からも全方向から矢が飛んでくる。


俺は我武者羅に体を回転させながら矢を弾く。

だが現実は漫画の様に綺麗に全て弾き飛ばせるはずもなく、4秒に一回のペースで体に刺さる。

更に辛いのは刺さった矢が液体化し無くなる事。つまり傷口にもう一度深く刺さる可能性があるということだ。


「ぐっ・・・・・・。これしきのこと・・・!!」


やがて体の動きは遅くなり当然落下もする。

地面は鋭く尖った針の形のままなので俺はすかさず大きく刃の部分が厚めの斧を創り出して足場にした。


「どう突破する?私に直接攻撃してもいいけど、その選択をした瞬間に君の負けは確定だよ。」


「ぐふっ・・・・・・」


「私はセルギアス君の様に敵が来るのを待つタイプだし、そもそもで近接戦闘は苦手だからそっちから来ないと勝負はつかないよ〜」

「動いても死。動かなくても死。そんな状況は戦いではあり得る状況だよ。セルギアス君が負けを認めるほどの男なら、この状況を脱する手段を考えてみてよ。」


セルギアス・・・あぁ1回戦で戦った人のことか。

・・・属性相性は俺が有利。だが、実力の差が違いすぎる。

考えなしの動きは確実にやられる、かといって慎重に動くと不意を突かれてしまう。

一手でも間違えてしまえば俺の負けは確定、つまり“一歩間違えば百里の誤り”ってやつだ。


木が水に有利と言われている理由・・・それは紛れもなく木は水を吸収できるからだろう。

だが、吸収したとて相手の神脈を吸収できるのではなく、あくまでただの液体を吸収できるだけだ。

それにこの空間じゃナンナの時みたく矢を上に飛ばして不意打ちを狙うこともできないだろう。

更に最悪なことに、空間は闘技場のステージ全体を覆っているので外に出た瞬間リングアウトとなり失格になってしまう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

観客席にて


「シバ君・・・大丈夫でしょうか・・・?」


「・・・・・・・・・おそらく今の彼じゃ勝てないだろうね。」

「ナンナちゃんも分かるでしょ?先程のシバ君のやられっぷりを。」


「・・・・・・」


「ユトゥルナちゃんは私と同期で今もなお一緒に任務をする事が多いんだけど、あの人は元々リップル出身で先代リップル国王の娘のうちの一人だったのよ。」

「水のコントロールや威力、技の規模は群を向いていて。更にリスプの量も尋常じゃないほど多いから、この団の団員の中で最強と言われているの。」

「そんな人vsまだ入りたての新人ってなったら誰しもが結果を予想できるよ。」


「・・・・・・私は、シバ君を信じます!」

「現に今、シバ君はどうやって勝つか考えて・・・」


「戦場において、思考スピードの遅さは命取りになるのよ。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ねぇ〜まだ〜?」

「時間が押してるからもう仕掛けちゃうね。」

『水脈・沓ノ天穹』


すると上空に人型の何かが無数に現れ、俺に襲いかかってくる。

ただでさえ足場が少ない状況で、捌き切るには厳しい。

その人型は俺に一撃を与えた瞬間に液体化し、すぐさま別の人型が攻撃してくる。


そして俺は勢いに負け、倒れてしまった。

連続して襲ってくる攻撃を喰らい続け、俺は水に溺れる形になった。

そして俺は巨大な水滴の中に閉じ込められてしまい。その水滴は宙に浮き、彼女の目の前に移動した。


「期待してたんだけど、やっぱりまだまだだったね。」

「君の負けだよ・・・」


そして徐々に水圧が高くなり、肺が潰れ頭が痛くなる。

その後急に天高く水滴が上り、急落下して俺を地面に叩き落とした。


俺はそこで気を失った・・・・・・



そして数時間後、俺は控え室で目を覚ました。

頭部分にはナンナが座っており、その先には壁に貼ってあるチラシを見ているフーディニ先輩がいた。


「うう・・・うぁぁ・・・・・・」


「っ!!シバ君!目を覚ましたんですね!」


「大丈夫か〜?お前派手にやられたなぁ。」

「トーナメントだったから良かったな!戦場であの人と戦って無事どころか生還できた敵はいねぇからな。」


「そんなに強いんすね・・・」


「元々あの試合はお前じゃなく、セルギアスさんとユトゥルナさんの試合だったはずだったのにな・・・」

「まあでも、セルギアスさんのおかげで団員No.1と戦えたんだ。それだけでもありがたい事だぞ?」


「は、はぁ・・・・・・」


「・・・ちなみに、今後行われるラトリーカイブの出場者は俺とナンナとカドさんとユトゥルナさんの4人ですわ。」

「シバ君は副団長様の意向で補欠枠として入らせると仰っておりましたわ。」


「そうか・・・ありがとな。教えてくれて」


そして俺たちは控え室を後にし、外で待っていたルーラの力で城に戻ったのだった。



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