第41話 選抜トーナメント②
第41話です。
「ふぅ・・・緊張しますわね・・・」
「あっ君。ナンナちゃんだよね?」
「ん?あら、ニーナスさん。お久しぶりでございます。」
「まあ初めてだからね。緊張するのも無理はないよね〜」
「でもさ、昨日シバ君と庭で勝負してたの見てたよ〜?あの感じでやっていけば大丈夫だって!」
「そ、そうでしょうか・・・?なかなかそうは思えず・・・不安しか・・・」
二人が控え室で駄弁っているのを割り切るようにドアが開く。
その控え室に入って来たのは・・・俺だ。
「ナンナ。あんた朝から水分取ってないだろ。これ買って来たから飲め。」
「あ、ありがとうございます♪シバ君!」
「ナンナは怪我したらすぐに治らないんだろ?全力で戦ってほしいが、無茶はするなよ。」
「ご心配ありがとうございます。ですが、私とて団員の一員なんです。怪我を恐れていては成長できません。」
「これは命の奪い合いではない。そう考えれば、少しだけ楽しみといった感情も出てきますわ。」
「・・・あのフーディニ先輩の姿見て言えるか?」
すると、ナンナは暫しの間硬直し冷や汗をかき始めた。
「や、やっぱり怖いですわ・・・」
「うん。だろうな。」
するとそこにニーナス先輩が口を挟む。
「大丈夫だって。私だって経験は浅いけど、日々の鍛錬の成果を出せばいいって思ってれば大丈夫大丈夫。」
「まずは初戦を突破しようか!」
「は・・・はい。」
そして、開始のアナウンスが鳴った。
『Bグループ第一試合、ニーナスvsツヒメ。選手は入場してくれ。』
「それじゃぁね〜私の戦い見ててよね!」
そう振り返りながら小走りして部屋を退室する姿を見ながら俺たちは手を振った。
ちなみにだが、これから行われる試合は2試合目だ。ナンナは3試合のため、もしニーナス先輩とナンナが勝ち上がったら決勝で戦うことになる。
・・・先程までは観客席で見ていたが、ここからだと全然違って見える。
戦場だとこういった視点で立ち回らなければならないわけだから、俺は出入り口のドア付近に立って観戦することにした。
『それでは、始め!』
その合図と同時にお互いに手慣れた手つきで武器と神脈を出す。
「ニーナスたん。朝ご飯食べてないの知っとるど〜私の神脈でご飯作ってあげるから食べるのだ〜」
「食ノ脈・グロリアスバンケット!」
彼女の周りには、肉料理や果物などといった巨大な料理が並んでいた。
一方でニーナスさんは涎を垂らし一瞬だけ誘惑に負けそうな感じだったが、首を横に振り欲を振り解いた。
「ツヒメさんったら、なんでそんなに美味しそうなものを・・・私の前に・・・だすの・・・・・・」
「くっ・・・・・・うぅ・・・・・・ダメ!!あの人の神脈で作られた料理は何が起こるか分からないわ。」
「これは戦い・・・・・・これは戦い・・・・・・」
「毒なんて入ってないよ〜〜ほれほれ〜〜。」
「あ〜〜ん♡んん〜〜〜〜美味しいのだ〜〜♡♡♡」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!!ヤメロォォォォォ!!!!」
な、何をやっているんだあの人達は・・・
まあ空腹に飢えている敵に甘い毒の入った蜜をあげようとしているのは分かるんだが・・・
なんというか。見てて滑稽だと思わざるを得ない。先程までのあのたくましい姿はどこへやら。
「殺すぅ!!!絶対に殺すぅ!!!!」
「この『真っ向勝負の剛槍』であなたのその舐め腐った態度を叩き潰してやるわ!」
叩き直すではないんだ・・・と内心思っている間にニーナス先輩は一気に間合いを詰める。
ニーナス先輩は人間なので神よりも身体能力は高い。それもあってか彼女の戦闘スタイルは前線で戦うタイプだろう。
彼女は申し訳なさそうに手に持っている槍を使って神脈で作られた食べ物を消し尽くしている。
「ほい!次はソーダジュースなのだ〜!」
今度は巨大なグラスに注がれた透き通った青色のソーダが出てきた。
欲を消そうとニーナス先輩はソーダの方へと向かった。しかし次の瞬間・・・
グラスが傾き、ソーダが地面に溢れ始めた。
直後、ソーダの水溜りから液体が逆流しニーナス先輩を襲う。
「きゃぁぁぁぁ!!!」
これは予想していなかった。観客席からも歓声が湧き、先程までの静かだった空気が温められる。
上に吹き飛ばされたニーナス先輩は全身がベトベトになってしまい、動きが鈍くなってしまっている。
「私がいつもキッチンで調理しているから戦闘力は低いと思ったでしょ〜」
「私の神脈を喰らった者は追加で良くない効果が付与されてしまう恐ろしいものなのだ!」
「今のニーナスたんはベトベト状態だから動きが鈍くなってるねぇ。これで実力的には同等になったかなぁ?」
「くっ・・・・・・こんなこと。いつもの鍛錬で味わってるっての。」
「さっきの攻撃食らって目が覚めたわ。もう欲に負けない!あなたに勝つ!」
そして先程同様正面突破を図った突進をかます。
ツヒメ先輩はパンを盾代わりにし巨大なフライパンを出す。
ツヒメ先輩の狙いはパンで衝撃を和らげて、衝撃が0になった瞬間にフライパンで反撃するつもりだろう。
しかし、ニーナス先輩は先程の突進とは違い、身体を丸めて縦回転し始めた。
ニーナス先輩はこの事を予想しており、パンの生地を切って突破しようとした。
その結果、その行動がツヒメ先輩の狙いを外したのだ。
「だ〜〜〜!!??」
「やっぱり強行突破あるのみね!!」
「食らいなさい!」
するとニーナス先輩は持ち手の部分でツヒメ先輩の首部分を思いっきり殴った。
日頃の恨みかってくらい鈍い音が聞こえた気がするが、まあ回復士がいるから大丈夫だろう。
「・・・さて、これの次の次がナンナの番だな。」
「気を引き締めて頑張れよ。」
「はい!ここから応援してくださいまし。絶対に勝ってみせますわ!」
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