第39話 代表選抜
第39話です。
帝長会議が終わってから数日後、イミテイト様が直接中継で使用する機械と結界を張る障壁の装置を各国に配った。
その時に毎度ラトリーカイブが7ヶ月後に開催されることを告げた。
国民からは歓喜の声が上がり、騎士団といった毎年代表を出している所はよりやる気に満ちていたそうだ。
当然望まぬ声もあったが、それを聞いてたらキリがないのでそこはスルーという形で終わった。
その頃拠点では自警団団長であるパルヴァティ様が俺たち団員を招集し、例のことを報告してくれた。
「みんな。7ヶ月後にラトリーカイブを開催することになったよ。今回もランブルは参加してもらうけど、あと4人必要なんだよね。」
「パルヴァティ様ご自身は誰を推薦するつもりですか?」
「私からはあまり指名はしたくないから、まずは出たいと思ってる人の中で戦って上位4名の人に出場してもらう形にしようか。」
「今年は普段とは少し違うから有力者のみに絞りたいんだよね。」
「まあ細かいことはランブルに任せるよ。ああもうこんな時間、私は仕事してくるね。」
「承知いたしました。」
というわけで現在は参加したい人達だけこの広い部屋に集まっているというわけだ。
俺の知る人は副団長、フーディニ先輩にナンナだけ。他は顔は知っているが名前がわからない人達だ。
見る限り俺含めて約30人と言った所だろうか。
すると副団長がざわついた空気を沈める。
「お前達、明日の朝に鍛錬場で勝ち上がり式の戦いを行う!」
「対戦表は俺が作る。ここにいるほとんどは四大属性に属していないから相性とか関係なしに組んでおこう。」
「さて、今日は解散しよう。明日寝坊するなよ〜。来なかったやつは失格だからな〜。」
そうしてものの数十秒で部屋には俺とナンナと副団長だけになった。
何故帰らないのかというと副団長に聞きたいことがあるからだ。
「副団長。一つ聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「別に構わんぞ。何だ?」
「この団のほとんどが四大属性に属していないと言いましたよね?何故この団にはその様な人たちが多いんですか?」
「・・・・・・これは過去にイミテイト様から聞いた昔話だが、パルヴァティ様は過去に壮絶ないじめを受けていたらしくてな、何せ『あなたはガイア様の血を引いておきながら、何故水とか火とか出せないの!?』とか『あなたが神なのが恥で仕方がない。出来損ないが』と言ったご自身だけでなく両親まで悪く言われてしまって、両親からも虐待を受けていたそうなんだ・・・」
「落ち込んでいる時に、初めて人間であるイミテイト様と出会ってついていく形で村から出ていったそうだ。」
「それ以来、『私みたいな特殊な属性を持った子達はここで面倒を見るの。テイトが反対しても私はやるからね。』ってわけで、この団にはそう言った特殊な属性を持った者達が集ってるってわけだ。」
「まあ、俺の推測も含まれるがな。」
同じ思いをする人を救う為にこの自警団を設けたってわけか。
また新たな一面を知れたな。
「なるほど。パルヴァティ様にそんな過去があったなんて・・・知りませんでしたわ。」
「他にあるか?なければ早く練習に取り掛かるといい。」
「今頃鍛錬場は窮屈だと思うから、中庭の広場で二人でやるといい。」
「ありがとうございます。ナンナ行くぞ。」
「承知いたしましたわ♪」
(アイツ、あんなに他人に懐く様なやつだったか?)
そうして場所は広場の少し離れた芝生に足を運んだ。
俺は早速戦う準備をする為に剣を出す。
しかし、ナンナがこんな提案をしてきた。
「シバ君。最初は弓矢で行いましょう。」
「弓矢?何でだ?」
「シバ君。少し前から徐々に腕を上げていますが、まだ満足のいく様な精度は取れてないでしょう?」
「私は基本的に遠くからの関節攻撃がメインですので、お互いにやりやすいのではないかと思いまして・・・」
「・・・。まあやってみるか。今はなるべく使える武器と技量を増やしたいからな。早速始めよう。」
そして俺は作った剣を捨て、弓を作り矢を一本だけ出す。
何かを作り出す神脈は基本的に在庫切れを起こさないのがメリットの一つだ。勿論俺も例外じゃない。
あからさまな構えをナンナに見せ、試合開始の矢を放つ。
ナンナは華麗に避け、書を取り出し光の刃を出す。
「行きますわよ!『光脈・飛光刄』!!」
流石に光なだけ弾速は速い。が、俺はそれを飛んで避けまたしても矢を射抜く。
手加減なしとはいえ、先端は丸くしてあるので貫通することはない。
それに、ナンナは回復が遅い。明日が控えているのに傷が塞がらないなんてことになったら申し訳ないからな。
「見切れますわよ!・・・さておかわりはどうです?」
今は空中飛んだり、ステップを踏んだりして避けることはできない。
だから、俺はすぐさま盾を作って防いだ。
「はぁ!!」
「なっ!?盾・・・!?」
「攻撃は弓矢だけだが、防ぐのであれば他のを使ってもいいだろ?」
「さて、攻め立てといくぞ」
弓を横倒して構え、矢を3本セットして射抜いた。
直後また矢を作り今度は縦に3本。斜めに3本ずつ発射し、数本は命中した。当然血は出していない。
「想定外でしたわ・・・シバ君があんなにも早く矢を作り出せるなんて・・・」
「練習したからな。当然だ。」
「ナンナもいいぞ。本気できても構わん。」
「なら、シバ君のその言葉に応じましょう。」
するとナンナの手に持っている書がパラパラとページが捲られる。
それと同時にナンナが右手を伸ばし、半円を描く様に手を大きく動かす。
現れたのは、無数の刄だった。
『光脈・飛光刄・永』
「この技は、私と戦ったあの方に対して放ったものですわ。私が辞めない限り、この技は永遠に続きます。」
「あの方は避け続け、最終的には強引に攻めてきましたが、シバ君ならどうするのか少々気になりますわ・・・」
「さぁ!行きますわよ!」
手を前に出すのと同時に無数の刃が飛んでくる。
なるほど、エリシーが苦戦しただけある。これが永遠に飛んでくると考えたら厳しいな。
「シュ!!シュ!!」
避けつつもナンナに目掛けて数本矢を放つ。精度はまだ良くないが、だんだん狙い通りにはなってきている。
しかし、矢の軌道を身すぎたせいで刃が目の前にきていることに気付かず、被弾してしまう。
「ぐあっ!」
「ぐぅぅ・・・フンッ!」
腕に付けていた盾を使い、体勢を立て直す。
そして俺は1つの事に気付く。
刃自体はナンナの後方から出ている・・・そしておそらく、あの刃はナンナの視覚に写っているか手を向けている敵に向かっている。ならば・・・
俺は矢を数本上空に力一杯打ち上げる。
正直俺の放った矢は何も計算せずに放ったので当たるかは運次第だ。
その後も俺は避け続け、矢を放つ。を繰り返した。
数秒後、ナンナの目の前に打ち上げた矢が落ちる。
「っ!?何ですの?」
目の前に落ちてきた矢に驚き、上空を見上げる。
その後数本の矢が落ちるが、ナンナは矢に集中しているがどれも今いるナンナには一本も当たらなかった。
まあ今回はいい。
俺はナンナが顔をこちらに向ける前に背後を取った。
「ナンナ。俺の勝ちだな。」




