第37話 考案
37話です。
数日後、ナンナが無事退院できていつも通りの日常が戻り始めた。
一つ前とは違うことがあるとすれば・・・
「ごきげんようですわ!シバ君」
前よりも距離感が近くなったことだ。
俺が退院してからもエリシーの世話をしてた時の心配性の癖が治ってなかったのが原因なのか、俺は数時間程度にナンナに顔を出しては差し入れを出していた。それが影響しているのかもしれん。
というわけで進行形で俺の腕に抱きついてくる。
まあ別に嫌じゃないから俺は構わないが・・・
「シバ君!本日はどちらに行かれますの?」
「私は、本日は用事がありませんのでシバ君に合わせますわ!」
「今日は午前中は鍛錬で午後からは鍛錬場で技の練習だ。」
「・・・・・・いいですわね!私もご一緒してもよろしくて!?」
目を輝かせながら俺を見つめる。
・・・少しだけ調子が狂うな。1ヶ月前とはまるで別人だな。
そんなこんなで、俺たちは予定通りのスケジュールで動いた。
・・・一方王室では
机にはアストーから手に入れた情報をまとめた数枚のメモ用紙が置いてあった。
イミテイト様はそのメモ用紙を手に取って文章をじっくりと読む。
「う〜ん。救世の六神かぁ・・・情報を手に入れたというもの、そこまで有益な情報はなかったな。だけど、彼の着ている服装と彼の脳内の記憶を見た限りその組織の一員であることは間違いはない。」
「組織の目的や活動場所、あわよくば次に襲撃する場所などが分かればよかったのだけれど・・・」
すると背後の扉から寝起きのパルヴァティ様が入室。
寝起きだとしてもパルヴァティ様が寝たのは少なくとも4日前。それ以降は姿を目にしてない。
つまりパルヴァティ様は4日間寝続けていたことになるが、まあそれほど疲労が溜まっていたのだろう。
「おっ!パルおはよう。あと1日寝ててもよかったのに。」
「そういう訳には行かないでしょ。十分な睡眠は取れたから問題ないよ。」
「・・・?なにそれ。この前の資料?」
「ああ。近々各国の長達が来るだろう?その時に大陸全体でどういった対策を提案するべきか悩んでるんだ。」
「まあ直接分かっていることが少ない分、最善策を考えるのは難しいよ。特にテイトだけじゃね。」
「なんで最後ディスったんだい?・・・・・・はぁ。そうすればいいのかな。」
「各国で対策しろっていうのも抽象的すぎて困らせちゃうし、かといって具体的すぎると、国を守っている者達から不満の声が出そうだし。」
顎に手を添え考え込むイミテイト様。
その時、パルヴァティ様が一つ案を思いつく。
「・・・・・・ラトリーガイブを開催するのはどう?」
「ラトリーガイブ・・・・・・なんでだい?」
「多分だけど、これから先は自国だけじゃ済まない程の大規模な戦争が起きる予感がするの、ラトリーカイブを開催すれば、少なくとも力を持つ戦士達同士で協力したりコミュニケーション能力を培える。それを体験できるのは出場者だけにはなっちゃうけど、それでも私はやった方がいいと思うの。」
パルヴァティ様は丁寧な口調でハキハキと説明をする。
イミテイト様はその話を聞いていると思ったのだが・・・
「・・・・・・へぇ〜。」
話を聞いていないといっているのも同然の返事だった。
パルヴァティ様はイミテイトに頬を膨らませながら近づく。
「イタタタタッ!!」
イミテイト様の頬をビヨーンと伸ばす。
ギャグ漫画の世界線のようにイミテイト様の頬が伸びる伸びる。
「テイトが悪い・・・なんで話を聞いてくれないの。」
「いや、聞いてたって!ちゃんと聞いてたから!」
聞いてたことを説明すると伸び切った頬を手放す。
ペチンというビンタされた時のような痛みが頬を襲う。
「うわぁぁぁぁ!痛い痛い痛い!!」
「棒読みがすぎるよ。演技が下手くそ・・・・・・」
「まあ痛くはないんだけど、代わりに僕の繊細で透き通った心が傷ついちゃってるよ。」
「あひゅ〜ん・・・・・・」
露骨な落ち込みにパルヴァティ様は呆れた様なため息を吐き、机に置いてある紙をまとめ始めた。
一方で絶対に傷ついてないであろうイミテイト様は体を丸めて床に転がっている。
その光景にもはや天帝としての威厳は微塵もない。
「テイト。私服だからってそんなに床に転がり続けたら汚れちゃう。」
「・・・ほっぺ引っ張ったのはごめん。」
「まぁまぁこれくらいの事で謝んないでよ。いつものことじゃないか。パルはすぐ謝っちゃうんだからこんな事で謝んなくていいんだよ。」
「・・・それよりも、さっきのパルの言っていることは十分理解できたよ。まあ他の意見も聞きたいから、一つの案として記憶しておくよ。」
「・・・・・・ところでパル。埃取りってどこにあるか覚えてる?」
「・・・・・・セヴァスに頼んで。」
「あひゅ〜ん・・・・・・」
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後日、俺たちは王室に呼ばれ身だしなみを整えて部屋に入る。
「やぁ君たち。いつもお疲れ様。」
玉座に座り込み、机に両肘を置いて待っていたイミテイト様がいた。
ついでにパルヴァティ様も。
「その、本日はどういったご用事でございますか?」
「今日の昼頃から重要な会議があってね、君たちには護衛として仕事をして欲しいんだが。」
「護衛ですか。ですが、どなたを護衛すれば・・・」
「ああ・・・それはね。」
すると勢いよくドアを開ける音が響く。
俺たちは出入り口のドアの方に目を向ける。
「お〜いイミテイト。話し合いする為に遊びに来たぞ〜」
「今回はどんなことについて話すんだ?」
「相変わらずお前はうるさいなぁ。少し声量を小さくしてくれよ・・・」
「まぁまぁ、そんなこと言わずにさ!楽しもうよ〜」
「ほら、話し合いが終わったら昔みたいに遊びのでも行こうよ〜」
「あなたはいつになっても変わらないのね。なんだか羨ましいわ。」
「・・・こうして6人で集まるのも数年ぶりね。」
「ま・・・・・・マジかよ・・・」
重要な会議とは言っていたが、各国の長が来るのは完全に予想外だった。