第36話 遭遇
36話目です。
ルーラは手に持っていた杖を使い、ワープの輪を作り出す。
日常生活においては重宝するだろうな。この神脈は。
輪をくぐり神殿の入り口に出て、俺たちは迷わずに例の部屋に向かう。
しかし部屋には例の死体はなく、あの男の手下共の死体しかなかった。
腐敗臭がすごく鼻が曲がりそうだ。少なくともルーラは強烈な匂いに悶えていた。
「確かここだったな。アイツが消えたのは。」
俺は腰を下ろし、手を合わせる。
「アンタが俺たちに救いを求めていたのか、それとも意識がなかったのか俺たちは分からずにアンタを殺してしまった。・・・すまない。」
「な・・・なんていうかさ。シ・・・シバ君って情に深いんだね。」
「昔から、飼っていた動物が死んだ時にはこうしてるんだ。意外だったか?」
「う・・・うん。な・・・なんていうかさ、シバ君っててっきり過去は過去で切り捨てるような人だと思ってたから。」
「死んでしまった尊い命だけはなかなか切り捨てられない性分だからな。」
「早くここから出よう。外の空気を吸いたい。」
挨拶と謝罪を終え、すぐさまにこの臭い空間を出ようとした。
しかしその時、何処からか足音が聞こえてきた。
複数の足音がコトッコトッと鳴り、俺はルーラを連れて物陰に隠れた。
「ありゃーひどいねぇ。」
「ここにある死体、全員アイツの下についてた奴らでしょ?」
「グルルル・・・・・・アストーが帰ってこないと思ってきて来たが、どうやら連れ去られたようだな。情けない奴だ。」
「あたい腹減ったよ〜何か食べたい〜」
「グルルル・・・少しは空気読め。相変わらずお前は・・・頭の中は食欲しかないのか?」
「南無妙法蓮華経・・・南無妙法蓮華経・・・奴の救いはいずれ訪れる。それまで我らが力をつけるべきでだろう・・・」
「・・・・・・・・・」
物陰から少しだけ顔を出す。
「・・・アイツらの服装、あの男と同じものだな。パルヴァティ様が言っていた『組織』というのは間違いなさそうだ。」
見た限り男2人女3人て感じか。
ひとまずはここを去ってもらうまではここにいよう。
と思っていたが・・・
「グルルル・・・小僧共、ここで何している。」
なんと先程まであっちの方にいたガタイの良い大男が俺たちの目の前に現れたのだ。
ルーラは瞬時にワープの輪を作ろうとする。
「逃さんぞ!小僧共!!」
「・・・・・・無駄なことはするなアエーシュマ。」
「あん!?」
「よし!注意があっちに向いた!ルーラ今のうちだ!」
できた輪にルーラを投げ俺もすかさず潜る。
潜り抜けた後、ルーラはすぐに輪を消滅させた。
それにしてもあの男とは雰囲気が違うように見えた。まるで獣のような・・・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「バロール・・・貴様何故止めた・・・!」
怒りを露わにしながら、バロールという名の元へ近づく。
溢れ出る怒りを目の前にしても、全員平然としていた。
「・・・ここからじゃ誰がいたのかは分からなかったが、所詮は迷い込んだただの一般人。殺しても生かしても変わらない。」
閉眼であるバロールという名の男がアエーシュマに説明する。
先程までの怒りが少し落ち着き、今度は腕を組み呆れの様な仕草をする。
「グルルル・・・大体お前の喋りは気に食わない。その謎の呪文も意味を知らずに言っているだろう?」
「・・・南無妙法蓮華経のことか。ああ、確かに我はこの言葉の真の意味を知らない。神ではない別の対象に対する言葉なのかもしれない。」
「だが、良いのだ。我をずっと、育ててくれた人間が言い続けていた言葉を忘れないように言っているだけだ。」
横で聞いていた少女が話に首を突っ込む。
ニヤニヤとしながらバロールの男に向かって語る。
「出た。バロールの思い出話。もううんざりだよ〜少し聞いただけで長々と話すもん。」
「まあ、ソウイウトコロモスキダケド・・・」
「そんなことよりも食べ物を・・・・・・」
「・・・?ヨグ様・・・?」
「・・・・・・・・・フフ」
「今はまだカギがないけれど、全てのカギを手に入れればあのお方の復活が叶う。」
「あなた達、分かっているわね。あのお方を復活をさせるにはこの大陸に存在すると言われている6つの紋章を手に入れること。」
「その時に、私達の願いも叶えられる。全員で協力しましょう。邪魔をする者は誰を殺しても構わないわ。」
俺たちはまだ気付かなかった。アイツらの企みが今後この世界を滅ぼす“厄災”を起こすことになることを・・・
ようやく、今後の主軸となる敵を作れました。
技とか性格とかはもう決めてあります。少しネタバレすると技名は漢字です。
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