第29話 “救世の六神”
29話目です。
溜めてから連日投稿する気持ちよさに気がついたので今日から金曜まで毎日投稿します。
「っ!!誰だ!」
その声と同時に仮面をした者たちが物陰から出てきた。
シバが生成した木刀を構える。
「おやおや、何もそこまで威嚇することはないじゃないか。と言っても意味はないか・・・」
「僕は“救世の六神”の1人。名はアストーだ。」
そのセリフにシバは問いかける。
「お前がこの人をバケモノに変えたのか・・・?」
「そうじゃなかったら誰が変えるのさ。別にいいじゃないか。」
「この世は弱肉強食。強者が弱者を支配する。」
「僕と戦ってこいつは負けた。だから僕は自分より弱いコイツを支配した。理にかなってるだろ?」
「コイツは倫理観が微塵もなさそうだな・・・」
「さっき君たちもこいつを殺したじゃないか。倫理観がないのはお前たちもだろ?」
「結局は君たちも人殺しさ。向かってくる敵が人間であろうと神であろうと。敵であれば殺す。今の世の中なのさ」
「黙れ!」
そう言ってシバは勢いよく仮面の男へ近づき、距離を詰める。
男は何も所持していない。つまりは攻撃を当てれば勝ちと思い、シバは力任せに剣を振るった。
「シュ・・・」
「チッ・・・!!」
しかし、その斬撃は当たることはおろか、擦りもしなかった。
武器を槍に変えても器用に避けられてしまう。
「いいねぇ・・・“操り甲斐”がありそうだ。」
「それじゃあ僕の舞台を始めようか。」
『糸ノ脈・傀儡の乱れ舞い』
男は両手を大きく広げ始めた。
それが絶好のチャンスだと思い、シバは手に持っていた槍を投げる構えを取った。
しかし、その隙が逆に彼に取ってチャンスだったのだ。
「シバァ!!」
「避けろぉ!!」
その声に反応しシバは動きを止め、声をした方へ目線を向ける。
そして視界に映ったのは・・・
自分へ勢いよく飛び込んでくるランブル副団長の姿だった。
しかし、ランブル副団長の表情は敵意ではなく、焦り。まるで、傀儡の様に操られてしまっている様だった。
シバは避けようとするも、足が動かない。
「っ!?」
「な、なんで・・・動かない!?」
「そりゃ。僕が君たちを操っているからだよ。せっかく僕を殺せるチャンスだったのに、君の攻撃が遅いもんだからもうセッティングはできちゃってたんだよ。」
「雷脈・避雷針・飛翔!」
避雷針で動き回ればシバに当たらずに済むはず。
しかし、ランブル副団長の予想は当たらなかった。
神脈でシバから離れようと手に持っていたナイフを投げた。
しかし、発動できなかった。いや、させてくれなかったのだ。
「抵抗するなって。僕の傀儡のくせに。」
そしてシバはそのまま背中にランブル副団長の持っていたもう一つのナイフがズズズと差し込まれる。
結構深くまで刺さってしまっているため、傷口からはもちろん吐血もしてしまう。
コポコポと身体から血が溢れる度に、シバのタイムリミットが迫ってくる。
「ついでに、あそこで立っていた人たちも操れるよ。ほら!」
そう言い放つと、ネロさんがランブル副団長に目掛けて突進する様に操り、ナンナさんが3人に向かって神脈を放つ準備をする。
「抗えねぇ!!」
「どうなってんだ!これ!」
「うう・・・腕が勝手に書を・・・」
ネロさんがランブル副団長に突進している間に、ランブル副団長は辺りを見渡す。
あいつの手の動き的に糸か何かの神脈のはず・・・だとしたら、俺たちの身体の何処かに糸が付いているはず。
見つけろ。見つけろ。
攻撃されるのにも関わらず、ランブル副団長は取り乱すどころか落ち着いている。
そして・・・
「すまない・・・!!」
ネロさんの突きがランブル副団長の腹を捉えた。
突かれても尚、観察は止めない。
「申し訳ありません・・・皆様・・・」
「光脈・飛光刄」
そうして、ナンナの神脈は3人を捉え光の刄を喰らわせることとなった。
3人は致命傷を負い、脱力した状態になった。
そこからは手下共からの急襲が始まる。
身動きが自由に取れない以上、抗うことも、逃げることもできない。
殴られ、蹴られ、斬られ、罵られ。肉体的にも精神的にも限界を迎えるのはそう遅くはなかった・・・
一方その頃・・・
「フローラさん。もう大丈夫です。」
「そう?お腹の傷とかは完治されてるはずだけど・・・痛むのであれば、ここで少し休んでても・・・」
「いえ、大丈夫です。早くシバ達の所に戻ってバケモノを止めないと!」
「でも、さっきまで響いていた音が止んだわね。」
「もしかして、もう倒していたりとかしないかしら?」
「!?な、誰かがこちらに向かってきています!」
すると、何やら遠くからもの凄いスピードでこちら側に飛んできていることにワープしてくれたルーラさんが気付いた。
フローラさんは武器である杖を構える。
ズサーという地面との摩擦の音が響き渡る。
その人物は・・・
「やぁ君たち。大丈夫かい?」
現アトリビュート天帝のイミテイト様だった。