第28話 バケモノ
28話です。
その掛け声と同時に、私の視界には砕かれた手と、1人の人物が入った。
「シュタッ」っという音と共に男は着地する。
「久しぶりだな。エリシー」
「シ、シバ!?」
「な、なんでシバが・・・」
「イミテイト様からの任務で来てたんだ。急にでかい音がするからまさかと思って来てみたが、間一髪だったな」
すると入り口の方から次々と人が入り込んでくる。
フローラさんにネロさん。そしてさっきまで戦っていた謎の女性と知らない男性2名。
「エリシーちゃん!大丈夫!?今回復させてあげるからね。」
「華ノ脈・癒しの開花華!」
フローラさんの回復技にはいつも助けられてる。
安心感がすごいなぁ。さっきまでの恐怖心が一気に和らぐのを感じる。
すると、シバが大声で声をあげる。
「ルーラ!その女子2人を安全な場所にワープさせてくれ!」
「は、はい!」
「転ノ脈・ワープライナー」
「こ、この穴を通ってください!そこまで大きくはありませんが・・・」
「ありがとう。助かるわ。」
私は一時離脱という形で、戦場を去った。
「ナンナ。さっきの女に攻撃したのお前だろ?」
「うっ。どうして分かったんですの?」
「アイツの服の破れ方と傷のつき方だ。」
「普通服に丸い穴が開くなんて、神脈か丸太で服を貫通させない限り起こり得ないだろ。傷も同様だ。明らかに、腹に激しい傷がついているのにも関わらず、アイツは動けていた。あのバケモノにやられてできたものなら、アイツは動けなかったはずだ。」
「ランブル副団長は、まず的かどうかの見分けはつくし、ルーラはまず攻撃しない。となるとナンナしかいないってなるわけだ。」
「よく短時間で、推察できますわね。」
「後で出会ったら謝っておけよ。」
「ギュォォォォン!」
その激しい咆哮と同時に、その場にいる全員が武器を構える。
「行きますわよ!シバ君!」
「おう!」
「光脈・天ノ光」
神脈の効果により、シバの身体能力と神脈の効果が飛躍的に上昇する。
シバの動きはいわば、風速並と言える程素早い。
「シバの奴。中々の速さをしてるな。」
「俺も加勢するとしよう!」
「雷脈・避雷針・飛翔!」
シバともう一人によるデュアルアタックはバケモノに着実にダメージを与えていた。
しかし、倒れる気配はない。
「グゥーグアァァァァァァア!」
崩れ落ちた大きな瓦礫を拾い女性の方へ勢いよく投げ飛ばしたのだ!
意識外からの攻撃に女性は頭が動かなかった。
しかし・・・
「とぉ!」
「ふぅ・・・まぁ、俺もそれ相応の力はあるって事で。」
「あ、ありがとうございます。」
「なあ、一つ提案があるんだが・・・いいか?」
「多分、成功するはずだ。」
「・・・?」
そうしている間も、シバ達による連携攻撃は激しくなる。
シバが壁などを利用して飛び回りながら剣や槍、斧などを巧みに使い、男性は手に持っている電気を帯びたナイフを投げては、投げたナイフに瞬間移動し攻撃をする。
「シバ!こいつの弱点は見つけたか!?」
「傷が修復するのが早くて、致命傷なのかどうか分からないです!」
「ならば、頭や首を集中的に攻撃するしかないな。シバ、合わせて首元を攻撃するぞ!」
そうしてシバ達はバケモノの首を目掛けて集中攻撃をする。
しかし、1秒経てばすぐに傷が塞がって完治してしまう。
当然、攻撃を受けてる間もバケモノの暴走は止まらないので、避けざるを得ない状況が続く。
攻撃しても、回復してしまって倒せない。攻撃を喰らったら一発で瀕死になりかねないこの状況を打破する策は・・・一つだけしかない。
「シバ君!そのバケモノの首元を私達に見える様に誘導してくださいまし!」
「・・・!分かった!」
シバ達は器用に、バケモノを誘導しネロさん達に首元を見せる形にした。
「回復されちまうなら・・・一発で沈むそうな火力を浴びせればいいだけだ!」
「行きますわよ!」
「おう!」
ネロさんの剣には聳え立つ炎、そして体には光輝くオーラを纏わせていた。
次の刹那、ネロさんは光速のスピードでバケモノとの距離を詰め、首元に向かって飛び上がった。
体に纏っていたオーラも剣へと移行し、白く輝く炎を纏った剣が完成する。
「「神脈融合・光炎天斬!!」」
剣を思いっきり縦に振り下ろし、首を真っ二つに切り裂いたのだ!
そして切り裂かれた部分から炎が徐々に身体を包み込み、やがてバケモノは少しずつ動かなくなりはじめる。
「ギュゥ・・・グアァァァァァァア・・・・・・・・・」
ドスンという鈍い音が部屋全体に響き渡り、バケモノの動きが止まる。
徐々にバケモノの姿が小さくなり、元の体に戻り始める。
「こいつは人だな・・・とりあえずこの事は記録として残して戻った時にイミテイト様に報告するぞ。」
「はい!でも、何故ここで人が・・・」
その後、部屋の奥の方から1人のフードを被った人物が拍手をしながら姿を見せる。
「素晴らしい・・・この短時間でよくバケモノを倒せたものだね。」