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Ημίθεος_ヘーミテオス_  作者: 五智噸虞
〜三章 魔の神殿〜
25/39

第25話 物は試し

第25話です。

黎明の光が部屋を照らし、私はその光で目を覚ます。

身体を除けば、ただただいつも通りの朝。そう・・・身体を除けば。


「イタタタ・・・うぅ〜お腹と背中が痛い・・・」

「ネロさんってば、ただ攻撃するならまだしも、吹き飛ばす程の威力で蹴らなくてもよかったじゃない」

「まあ、倒すつもりで攻撃しようとした私が強くいえたことじゃないんだけど・・・」


腕の筋肉痛と腹部と背中全体の痛み。

幸い寝る事はできたものの、起きた時のしんどさといったらもう・・・いや、これ以上考えても何もならない。


「よし、着替えて顔洗おっと」


素早く身支度を済ませ、リオちゃんを連れて食堂へ向かう。


今日の朝ごはんは、お米にサラダ、お味噌汁にお肉が少々。デザートにフルーツヨーグルトだった。

朝ごはんを食べている最中私はこんなことを思った。


今になって思うと、ここに来てからの私って前までの私と比べて自立してるわよね・・・?


シバとは違っていつも決まった時間には起きれなかったし、食事も好き嫌いする事は減ったし、部屋もまだ綺麗な方。

あれ?私って、もうシバよりも自立してるくない!?


一方その頃アトリビュートでは〜〜〜〜


「ん?」


ナンナが急に立ち止まった俺へ声をかける。

「シバ君?どうかしましたか?」


「いや、なんでもない。ただの空耳だったようだ。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


まあそんなことより、今日は昨日蔵書屋であった本の技を実践する!

早く食べ終わって外に行って、目指せ技習得よ!


食べ終わった食器をカウンターへと持っていき私は調理師のおじさんに「ご馳走様でした。」と伝える。

すると・・・


「団員さん。今なら特別に1個余っているこの”もくふわクレープ“をプレゼントするけど、欲しいかい?」

「もちろん、お腹いっぱいなr・・・」


「食べます!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


私はクレープを持ちながら豪邸裏の少し開けた場所に移動した。

日もあたりも朝だから良く、風もよそ風並みに落ち着いているので気持ちがいい。

手に持っているクレープが美味しいそうでたまらなかった私はベンチに腰を掛けてパクりと一口食した。


「ん〜〜!!このクレープ美味しいわぁ!」


クレープなんてじいじがよく作ってくれてたけど、こんなに美味しいクレープ食べたの初めて!


「キュ・・・キュ・・・」

リオちゃんが私の右肩から顔を出し”私も欲しい!“と言わんばかりの仕草をしている。


「リオちゃんは食べられないから、後で別の食べさせてあげるからねぇ〜」


数十秒後、手に持っていたクレープをぺろりと食べ終えてしまった。

さてと、開拓でも始めるとしようっかな!

ベンチに置いておいたレイピアを手に取り私はベンチから数メートル離れた場所へ移動しメモを見ながらまずは技を放つ練習を行なった。

不発、途中で失敗、形にはなっているが簡単に崩れる。

最初は誰しもがそんなもん。それでも疲れるものは疲れるし、失敗の連続だと多かれ少なかれ心にくるものがある。

心身ともに疲れ始めていた時、ネロさんが上の窓から顔を出して私へ声をかけてきた。


「お〜い!何やってんだ〜俺も混ぜてくれ〜」


そう言いながら彼は、3階の窓から剣を持って飛び降り「ドガァン!」と地面が崩れる音と共に着地した。

私は彼へ今やっている事を簡潔に説明した。


「ほ〜ん。なるほどな。」

「スゥ・・・ちなみに何だがあんた神脈の出し方とかは器用な方か?」


顎に手を添えながらこんな質問をしてきた。

入国した時に一応お褒めの言葉を頂いたくらいだから、自信満々に「あります!」と答えた。

すると・・・


「相手を拘束するとか自分が有利になるフィールドを作る系は一旦置いておいて。」

「攻撃系の技を習得するのであれば、せっかくなら剣から神脈を出したらいいんじゃねぇか?」


「剣から・・・?」


「まあ見てろって!」


するとネロさんは、剣を逆手に持ち変え地面と剣の先端を擦り合わせる。

一回転、二回転、三回転と回した後には剣には炎が纏わりついていた。


『炎脈・炎纏!』

「こういった感じで武器に自分の神脈を纏わせたりとか、こんな感じで・・・!」


『炎纏・火斬!」

「こんな感じで、纏わせた神脈を飛ばしたりする事もできるのさ。」

「もちろん、槍や斧、弓にナイフもできる。アトリビュートにも武器に神脈を纏わせて戦う強者もいるらしいし、実用性はある方だと思うぜ。」


ほえー。確かに、その発想は無かったわ。

今までは全部指でしかやってきた経験はないし、あまり上手くいくか分からないわね・・・


一応学校でも応用という形で木の棒に神脈を纏わせるような実習はあった。

シバは自分のことを知られたく無かったからやってなかったけど、私含め全員できなかった記憶がある。

文章で理解する事はできても、実践となるとできなくなる。今も昔もそれは変わらない。

だけれど、できなかったからといって今後もできないままでいるなんて絶対嫌!

何時間かかろうとも、任務が与えられるまで私はこのレイピアに神脈を纏わせるまで私は休まない!


ネロさんが見守る中、私は何度も同じことを繰り返した。

ネロさんのアドバイスでコツは掴んだが、安定するにはまだまだだった。

日も暮れて太陽光が見えなくなっても、私は何度も何度も何度もやった。


「エリシー。もう終わりにするぞ!最低限形にはなっている。また後日やるぞ。」


「はぁ・・・はぁ・・・分かった。」


拘束技とサポート技の取得に4時間。神脈を剣に纏わせる練習に5時間の計9時間。

私は一刻も早くお風呂に入って汗を流したい一心で豪邸の玄関へ足を運ぶ。

背中から大量の熱が放出され額に脇、胸からは大量の汗。女子としてこの様な姿をあまり異性には見られたくはない。まあ同性からもあんまり見られたくないけど。


玄関のドアを開けエントランスを駆け抜けようとしたが、最悪なことにそこには廊下から歩いてきたルフレ団長がいた。そして更に、ルフレ団長と目が合ってしまった。


「エリシー。お前に重要な話がある。」


「は、はぁ・・・」


「この際、ここで話した方がいいだろう。」

「明日から、お前はここ数日大陸を通して問題視されているある神殿に向かって調査してもらうことになった。」

「これは、フエンテ女王じゃなくイミテイト様からの依頼だ。」


嬉しいけど、今はお風呂に・・・


「同じく依頼されているネロとフローラにも出向いてもらうことになっている。お前は初めての国外任務だ。困ったらアイツらに頼れ。」


「あの!!後で詳細を聞くので!今はお風呂に入らせてください!」


「そうか。なら、風呂に入って飯を食べたら俺の部屋に・・・・・・」

「なんだ?あいつ・・・」


私はルフレ団長の言葉を最後まで聞かずに猛ダッシュで風呂場へ向かった。

汗でシミだらけになった服は洗濯籠に入れ、体を清めて私は大浴場の温かいお湯に浸かる。


「はぁ〜気持ちいいわ〜。この瞬間が一番幸せ〜」

水圧で体がほぐされ、胸もお湯のおかげで浮くので今この時は体の負荷は0なのである。

マナー的に良くないと分かっていても、ついやってしまうのだ。“体を伸ばしてプカプカと体を浮かせる”行為を。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


お風呂と食事を済ませ、私は団長室へと向かった。

コンコンとドアをノックし、私は部屋へ入る。


「そこに座れ」


ふかふかなソファに腰を掛け、ルフレ団長と例の話の続きを行う。


「・・・さっきも言ったが、明日からはお前とネロ、そしてフローラの3人で神殿に向かってもらう。」

「これはイミテイト様からの依頼。つまりは大陸を統べているお方からの依頼だ。」

「小さな失敗はしてもいいが、騎士団として失敗した分は取り返すくらいはしろよ。」


「はい。分かりました。」

「ちなみに、その神殿には私たち以外に他の国から誰か来るんですか?」


「それは知らん。他の国の神か人間が来るなんて知らされていない。」

「・・・別に、今回は他国との競争が目的じゃない。『最近その神殿に訪れた者が行方不明になるという報告が多いから、何が起きているか確かめて来て欲しい』と言われていることからも、あくまで調査の依頼だ。」

「明日になってみたいと、何も分からん」


「そうですか。」

「・・・私はあの事件後、必死に自分を鍛えたんです。もう生半可なものでは失敗はしません!」

「なので、今回に関しては何も怪我なく、失敗なく帰ってきてみせます!」


「そうか。話は終わりだ。自分の部屋に戻れ」


「失礼しました」


やったわ!明日からイミテイト様からの重要任務!そしてメンバーは私と縁がある人たち!

最高のメンバーで調査!これ以上嬉しい事はないわ。

明日のために、今日はもう寝なきゃね。


私としては初めて国外の任務となる。

未知なる場所での調査ってだけで胸が高鳴る。

不安はあるがそれを凌駕するほどに好奇心が湧き出ている。遠足の前日にワクワクする子供の様に。

シンとした廊下をスタスタと歩き、自室のドアを開け明日の支度を行なった。


「ええと・・・洋服に、剣に、あとメモ帳に・・・。医療セットは・・・フローラさんがいるから大丈夫かな」

「荷物が多すぎても困っちゃうから、これくらいにしとこうかな!」


支度を終え、ベットに横たわる。

横になった瞬間に来る疲労がベットへと分散していくのを感じる。

もうこのまま横になっていたいと思ってもおかしくない。


けれども、明日は絶対に万全な状態にしなきゃと思った私は、静かに瞼を閉じた。


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