第24話 交剣知愛
24話です。
そろそろ、挿絵かなんか描きたいな。
豪邸へ戻ってきてからは、ネロさんが早く私と戦いたいと言わんばかりに私の周りをウロウロしている。
私の周りといっても別に迷惑じゃないからいいけど、交戦的すぎるんじゃない?!
まあソワソワしているのは私もだからそんなに強くは言えないけど・・・
そんなこんなで私は鍛錬着に着替え、武器を持ってこの前ルフレ団長と戦った場所へと向かった。
「失礼します!」
「待っていたぞぉ!エリシー!」
「ここでお前と模擬戦を行う!さぁ剣を構えろ!」
声だけで、ネロさんの気迫が伝わってくる。
正直言って、剣は初めて持ったから構えとかよく分からないんだけど・・・
「あの、すいません。剣初めて持ったのであんまりよく分からないのですが・・・」
「何ぃ!?しょうがないなぁ。よぉし!基礎をこれからザックリ教えてやるぞ!」
じっくりじゃないんだ・・・
そこから数十分間はネロさんからのザックリとした剣技を教えてもらった。
実はネロの地元の村は剣との関係が深く、幼い頃から剣士として鍛えられていたんだそうで。
「俺は、最初は立派な剣士になりたかった。だけど、腕を極めるに連れて剣の事しか教えてくれなくて、それ以外の武器の使い方やマナー、勉学なども教えてはくれなかった。」
「だから俺は勇気を振り絞って言ってやったのさ。『何故剣の事しか教えてくれない!何故剣以外の事を教えようとしない!俺はもっと他のことを知りたいんだ!』その結果、この前言ったように村から追い出されたってわけさ。」
「そんな過去が・・・」
「まあ積極的なのは昔からだし、その選択をしたことに後悔なんてしてない。おかげで、今自分の好きなことができてるわけだしな!」
「よし、だいたいの事は教えたはずだ!あとはその動きが本番でできるかどうかだ!」
「一回俺とやってみるか!」
そういうとネロさんは、細身の剣を手に取った。
「俺がいつも使っている剣だと、不公平かもしれないからな!模擬戦ではこれを使うぜ!」
「それじゃあ、行くわよ!」
私は、その言葉と同時に私は前へ飛び込んだ。
しかし、ネロさんは微動だにせずただ剣を前に構えているだけだった。
私は模擬戦と分かっていても、ネロさんを倒す思いで剣を突こうとしたが・・・
キィン!
少し弾かれて攻撃が当たらなかった。
私はすかさず二撃、三撃と突き続けた。
「初めて見してはいい威力じゃねぇか!その調子で畳み掛けるんだ!」
“勢いはあるが、力任せに振っているな。緊張しているのか・・・“
その調子で何度も同じことをするが、全く攻撃がヒットしない。
腕が限界を迎え、私は間合いを取るために後ろへ下がる。
しかし後ろへ下がった瞬間、ネロさんが私の目の前に瞬速で近づき薙ぎ払いをしてきた。
「うっ・・・!」
私は咄嗟に剣を構え、ネロさんの攻撃を受け止めた。
しかし・・・
「受け止めたのはすげぇけど、その腕の震え具合じゃ限界みたいだが?」
そう、私の体力はさっきの連撃で消耗し切ってしまったのだ。
確かに、今の私は受け止めるので精一杯だ。
「それじゃあ、こっちも畳み掛けさせてもらうぜ!」
「防戦一方だとしても、全力でやるんだ!」
さっきまでの私の動きよりも滑らかに、そして素早く攻撃してくる。
私の場合は突きだったのに対しネロさんは斬撃。
その斬撃も緩急があり、耳には空気を切る音がはっきりと聞こえる。ネロさんの強者感がこれ以上ないほどに伝わってくる。
私の剣は刃の部分がネロさんの剣並みに細く、受け止めるのには心許ない。
壊さないためにも避け切るのが吉だと判断し、私は全力で後ろにジャンプし距離を作る。
ネロさんの速さだと私のところまで来るまで早く見積もって2秒、遅くても5秒。
私は止水の構えを発動するためにジャンプしている最中に心を無にし、冷静になる。
ネロさんの強く床を踏み込む音が聞こえる。
「水脈・止水の構え!」
私はすかさず、ネロさんの攻撃を避ける。
だがしかし、止水の構えを使ったとしても避け切るので精一杯だ。
止水の構えは集中力を高める。
つまりは神脈の強化のための技であり、物理的能力の強化ではないため、消費していた体力は回復してない。
今の体力を消耗し切っている私は、どのみち避けることに専念せざるを得ないのだ。
「回避することに専念したか・・・戦いにおいて回避は生き延びる上で最重要なことだ!その技の効果が切れるまで避け切ってみろ!」
「ハァハァ・・・」
ドガッ!
「うぐ・・・」
斬撃から避けることに夢中になっていた矢先、突然私のお腹に激しい痛みが飛び込んできた。
痛覚を感じお腹を抱えようとした瞬間、突然顔を掌で突き上げられ、無防備になった瞬間今度は全力でお腹を蹴られ思いっきり吹き飛ばされた。
「うわぁぁぁ!!!!」
私の体は派手に壁と衝突し、剣もネロさんの足元に落としてしまった。
おまけに止水の構えも切れてしまった。
「うっ・・・ううぅ・・・」
必死の思いで立ちあがろうとするも、痛みと苦しみで膝立ちすることすらままならない。
「今日はもう終わりにしよう。」
「このままじゃ、アンタが危ない。」
“にしても、止水の構えっていうのはフエンテ王女の技にどことなく似てるんだな・・・”
私はその言葉を聞き、今一度横になり身体が回復しきるのを待とうと思ったが、ネロさんは私をおぶさって部屋へと運んでくれた。
「付き合わせてもらった礼だ。悪いけれど、部屋への道案内を教えてくれるか?」
「分かった・・・」
“明日、新技の開拓ちゃんとできるかな・・・?”