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Ημίθεος_ヘーミテオス_  作者: 五智噸虞
〜二章 新たな地 〜
20/39

第20話 女王であり私の師 エリシーside~

20話です。

そう。この“止水の構え”は己の心を整え、自身の集中力を通常の数倍向上させるというもの。

これは先日フエンテ女王から伝授していただいた技だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「エリシー。あなたには私と同じ技を習得してもらうわ。」

「そう身構えなくても大丈夫よ。そこまで難しくはないから」


「そう言われましても、フエンテ女王の技がどういうのか分からないので・・・」


「まあ教えるついでに見せてあげるわ。」


一体どんなものなんだろう・・・!


「海脈・明鏡止水の奮起」

次の瞬間、フエンテ様の周りに水が螺旋状になっており、よく見たら魚や貝が見えたりしている。


「これは、私がよく使っているものよ。それであなたにはまずこの“明鏡止水”の基盤となる“止水の構え”を習得してもらう。」

「それを今日中に終わらせる。いいわね。」


「は、はいぃ・・・」

か、過酷な修行になりそう・・・


そこから休憩なしのスパルタ修行が始まった。

スパルタと言いつつもフエンテ様は決してできない私を責めたり怒ったりはしない。ため息はついてたけど・・・


「いい?止水の構えは平常心を意識することがコツなの。分かりやすく言えば、水たまりね。」


「水たまりですか?」


「水たまりは基本的に動いたりはしないわよね?でも何かしら衝撃を加えると波が立ってしまう。」

「これを止水の構えで踏まえると、その衝撃が基本的に“余計なこと”なの。それを排除したままの状態。つまり水溜まりの状態を心の中でイメージするの」


「はい!」


数時間後・・・


「大分様になってきたわね。後は、どれだけその状態に早くなれるかが課題ね。」

「敵が現れた時に、止水の構えが発動できるまでの時間が長いと、何もできないわ。」

「戦闘において、慈悲をかけて待ってくれる敵は少ない。悪者なら尚更少ないわ。」

「目標は速くて3秒遅くて6秒ね。」


「そんなに短いんですか!?」

「3秒ですぐに余計なことを考えずに冷静になれって厳しいですよ!」


「ここに3秒でできた人がいるんだけど・・・」


「うっ・・・」


「まあ夜まで付き合ってあげるから、そう目気ずに頑張りなさい。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


フエンテ様はこの国の女王であり、今は私の師なんだ。そんなお方が私に期待して鍛えてくれたんだ!

期待に応えるためにも・・・


「私は、あなたには絶対に負けない!!」


今の私は集中力が高まっている状態で敵のムチの攻撃が遅く見えている。

そして集中力が高まっているということは神脈の威力もいつもより倍になっているということ。


「水脈・ウォーターガン!」


「チッ・・・小癪な・・・!」

「たまたま避けれたからって・・・調子乗ると痛い目見るよ・・・!」

「筆脈・才筆の葬り!」


また同じ技だ。だけど、私はもう見切ってる。同じ手はもう通用しないわ。

私はまたしても素早く避け続け、仮面の男へ間合いを詰める。


「近寄るなぁ・・・!!」

懐に入られた男は手に持っていたナイフを振り抜いてきたが、当然私はバックステップで躱わす。

次の刹那、私は再び懐に入り、男を打ち上げるようにウォーターガンを撃ち放った。

その後私は両手の指3本に水を纏わせて男へ指を構えた。


「水脈・ウォーターガン・バースト!」

スババスババと追い打ちをかけ続け、最後に特大のウォーターガンを溜めて男に向けた。


「ぐわぁぁぁぁ・・・!!」


私はまだまだ身体的にも精神的にも未熟者。だけど、私の背中を押してくれるみんなの想いを、裏切るような行為はもう絶対にしない!


「私たちの勝負に、恐怖はいらないのよ!!!」

今、何故か私の背中にはシバがいるように感じる。私は、最後の一撃をこの弾に全神脈を注いだ。

そして、私は指先スレスレのタイミングで最大火力のウォーターガンを放った。

男は高く吹き飛んだ後に地面に落下し意識不明になった。


止水の構えの効果も切れて私は地面に倒れた。

止水の構えは使用すると身体能力が向上し集中力を上げる代償に終わった後のスタミナと集中力を大幅に消費する。ざっくり言えば酸欠のようなもの。

まだ私には早かったのかなぁ・・・


すると何やら空に光るものがあるのが分かった。

視界がぼやけて何なのかが理解できない。


「あっ!エリシーちゃん!」

この声は・・・フローラさんだ。

多分神脈を使ってここまで飛んできてくれたんだ。


「大丈夫!?エリシーちゃん!」


「ハァハァ・・・大丈・・・夫です。それよりも・・・あいつを・・・」

私は精一杯の力で男の方へ指を差す。


「フローラさん。こいつ、俺たちへ攻撃をしてきた部外者です!」


するとフローラさんは手を開き、男の下に花を召喚して花を徐々に蕾のようにしていき、拘束した。


「しばらくの間はその中でじっとしていて頂戴。」


フローラさんはその蕾を何処か遠くへ飛ばして私を介抱してくれた。


「とりあえずエリシーちゃんは、大きな怪我がなくてよかったわ。すぐに豪邸に戻りましょう」


「ま、待ってください。フローラさんにお願いしたいことがあって・・・」


徐々に体力も回復し、歩けるようになったのでフローラさんを先程の場所へ案内する。


「これを見てください。」

「これ全部あの仮面の男がやったんです。」


「なんてこと・・・」

「今すぐに助けてあげなきゃ!」


「花ノ脈・癒しの開花華」


フローラさんの“癒しの開花華”は暗闇の中を光で満たし、瀕死の状態だった動物や植物が徐々に動くようになった。私が助けたリスもすっかり元気に動くようになって私は笑みを浮かべる。


「少なくとも、まだ意識があるものだけ助けられてよかったわ・・・」

だが、フローラさんでも死んでしまったものを生き返らせることはできない。

池に浮いている魚や切り落とされた植物はもう動くことはない。


「あの人物にはそれ相応の罰を下してもらうべきね・・・」

「何の罪もなく生きていた生命を殺めるなんて・・・」

「エリシーちゃん。とりあえずあなたは豪邸に戻って休んでちょうだい。この件は団長に伝えておくから」


「いえ、私は大丈夫です。私は騎士団の一員ですから!」


「それじゃあ一緒に行動しましょうか。その方が安全だもの。」


「嬉しいです!よろしくお願いしますね!」


そうして丸2日経ちマルドゥク様が帰還してきた。

あの後、窃盗などの事件が少々あった程度で殺人などの大きなことはなかった。


「ん〜いい目覚めだわ〜。今日も今日とて小鳥の囀りで目を覚ますなんて気分良い!」

窓から日が差し、体を起こす。

私はベットから立ち着替えを済ませる。


「服装・・・良し。洗顔・・・良し。前髪・・・良し。完璧!」

するとコンと窓に何かが当たるような音がした。

何かと思い窓を開けると、絆創膏をお腹に張ったままのリスが立っていた。


「あっリスちゃん!久しぶりね!どうしたの?」

「ってうわぁ!?」

声をかけた瞬間リスは私の腕を伝い肩へ登ってきた。

「ふふふあなたなかなか可愛いね。・・・せっかくだし一緒にご飯食べに行こっか!」


シバ。また今回もあんたに助けられちゃったなぁ。私の中のシバはいつも強くて、私より前にいる。

だけど、いつか心の中のシバに頼らなくなれるような私に絶対になって見せるんだから!

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